告白
「…―――笑えないんだけど?」
私が困って視線をそらして言うと、
「冗談ではないので、笑わなくて大丈夫です」
吹成は真顔でそう返してきた。
ざわつく駅前通りで、なぜ私達はこんなやり取りをしているんだろう。
吹成から突然の、無茶な話に私は只困惑していた。
「好きにって…それ、恋愛的な意味で?」
「はい」
「なんで?彼女にフラれたから?私はそんな軽い女だと思ってる?」
「いえ、そういうわけではなくて…」「迷惑だから」
何か言いかけた吹成の言葉を、これ以上聞きたくなくて私は遮る。
吹成の表情があまりに真剣で、本気さが伝わってきて…怖くてこれ以上は聞く勇気がなかったのだ。
「―――私、もう恋愛はしたくないから。」
私はポソリと呟く。
(太一と別れてから、二年だよ?二年も引きずって、ようやく次の恋は信じようと思ったのに…ーーー。)
立ち直ってようやく次の恋にいけたのに、その恋も一年で終わってしまった。
――――…終わりが来るぐらいなら、もう始めたくもない。
「…―――夏海先ぱ」
「そういうことなら、泊めてあげられないから」
私は、一人で改札へと足早に向かう。
「待って!!」
不意に、力強い手が、私の腕を掴んだ。
「先輩は、僕のこと嫌いなんですか?」
吹成の瞳に私が映る。
「…―――」
(そんな表情、しないでよ…。私が悪いみたいじゃない…)
私は思わず目を逸らす。
…――――嫌いなわけない。
吹成のことを嫌う人なんて、どこにもいないと思う。
だけど、私は声に出せなかった。簡単に口に出してはいけない気がした。
「僕は好きです。先輩が…ーーー太一と付き合ってた時から…」
「え?」
(…太一と付き合ってた時、から?)
思わぬ告白に、私はフリーズした。
「今はまだ、好きでなくて良いんです。でも、一度僕にもチャンスを与えてくださいませんか?」
「ーーー吹成…」
(なんでそんな必死に言うの?――――私はただの“親友の元彼女”だったんじゃないの?)
私は戸惑いながらも、吹成の掴んでいた手に触れた。
すると、吹成がそっと…もう片方の手で私の手を握る。
そして泣きそうな笑顔で、一言付け加えた。
「…太一が告白した時のように。」
――――それは私が、最初は太一のことを好きじゃなかったことを見抜いていたような、口振りだった。




