子供の頃
足が早くなりたかった。
人より頭が良くなりたかった。
綺麗な赤い自転車に乗りたかった。
新しいゲームが欲しかった。
大きな家に住みたかった。
待ってる家族が欲しかった。
小さな頃、周り持ってるもの全てが羨ましかった。
カラフルなブロック。
キラキラのカード。
学校に持ってくるお土産。
新品のゲーム。
自慢されるのが1番世の中で嫌い。
テレビの食レポですら自慢に見えて
テレビはあまり見ないで育った。
余りにも欲しかった携帯ゲーム。
大手ブラック企業で働く母親にねだる。
たった一人の家族。
朝から晩まで働いてクタクタになって帰る母。
12時間働いた後に小学校2年生のカン高い俺の声は27歳の女性には耳障りだっただろう。
ヒステリーの気質がある母は
しつこくねだると手をあげた。
きっと普通の家庭を望んで夜の仕事はしなかったんだろう。
でも、それは仇になりストレスや疲れのフラストレーションを晴らす道具に俺はなっていた。
真冬に真水をシャワーでかけられ外に立たされたこともある。
理由は点の悪いテストを隠したから。
母親はその時大嫌いだった。
でも、自分の非力を知っていたので小さな頃から人の顔色を見て育った。
ねだったゲームはその1年後
母の彼氏にねだって買ってもらった。
他の家より小さい平屋におれの遊ぶものは少なく小さな時は勉強をよくした。
どんなに機嫌の悪い日の母でも満点のテストを見せればいい顔をして見返りの500円をくれた。
でも、それができたのも小学校まで。
中学にあがると勉強についていけなくなった。
大人の顔色を見て機嫌を伺い、秀才を演じてた小学校生活も中学1年生の半ばには終わった。
勉強の才能はなかった。
スポーツの才能もなかった。
神様がいるなら恨んだ。
なにもくれなかったことに。
でも違った。
一つだけ他の才。
それも特別な才能をおれにくれた。
鏡を見たとき思った。
俺は大多数の男子より容姿が整っていた。