第二話 人・形・令・嬢
どうも、斎藤一樹&雨月獄の先輩なのに身長で負けている方、イツキさんです。
さて、今回から、サブタイトルに毎回ネタを仕込んでいこうと思います。元ネタは次の話の前書きで発表していこうと思っています。
ドアを開けると、そこには何もなかった。ただただ、白く赤く青く黒く、様々な色の混じりあった空間が広がるのみだ。
しかし、床か、それに準ずる何かは存在するらしく、その空間を歩くことは出来た。
「…何だってんだよ、全く……ッ!」
横っ飛びに転がるようにして、俺を襲撃したナニかを避ける。
そこにいたのは、異形のモノ。人間という存在を、この世のすべての悪意と絶望で出来たスープで何年と、いや何十年と煮込み続けたらこうなるのではないかと思わせるような、人の形をしたおぞましい何か。
俺を目がけて突撃してくるそいつを相手に、俺はあろうことか自分から向かっていった。より正確に言うなら、俺の身体がそう動いたのだ……まるで、身体は戦い方を覚えていると、そう言うかのように。
そして俺は(より正確に言うなら俺の身体は)近付きながら腰のホルスターからナイフを抜き放つと、流れるように相手を斬り刻んだ。狙ったのは、心臓と頸動脈のある辺り。恐ろしい事に、俺のカラダは息は全くといっていいほど乱れず、汗一つさえかくことはなかった。混乱し続けているココロとは対照的に。
「…本当、どうなってやがるんだよ……」
一人、呟く。訳の分からないことが多すぎて、頭がどうにかなってしまいそうだ。
俺は……俺の、このカラダは。いったいどんな道を歩いてきたのだろう。そして俺は、これからどんな道を歩いてゆくのだろう。
†‡†
少女は静かにゆっくりと覚醒した。
夢を見た。
とても怖かったかもしれない。
楽しかったかもしれない。
しかし、その夢が何だったのかは覚えていない。
そんなコトはどうでも良かった。
少女にとって、過去とはとるに足らないものだった。
今が楽しければそれで良かった。
「おはよう?ピーター?」
少女は真っ白な兎の人形に、いつものように笑顔で話しかける。
『オハヨウありす』
「皆もおはよう?」
よく見ると部屋には沢山の人形たちがいる。
人形たちは口々にアリスと呼ばれた少女に挨拶をする。
「オハヨウ」
「オハヨウ」
「オハヨウ」
アリスは満足げに頷くと、人形たちをぐるりと見回して。
「今日は何をしようか?」
無邪気な笑顔で人形たちにたずねた。