旗取り③
『神候補』
神様選手権が行われる際に、全世界で地区ごとに選考会が行われる。その選考会には『主神部門』『戦闘の神部門』『知恵の神部門』『豊穣の神部門』『生命の神部門』『天候の神部門』『混沌の神部門』の計7つの部門から1人ずつ神候補が選出される。参加者は各部門から1つだけ選び参加する。年、性別、出身地などの差別で参加できないということはないが、選ばれるのは1人であるうえに、大抵若い年層が選ばれる。
選考会では部門ごとに様々な課題があるが、最後の課題の直前の課題には必ず選考者が10人以下にまで減る課題が出され、下手をすればその時点で。残り数人になった最後の課題で出されるものは全ての部門において同じである。『神になる理由』。そのなかで最も最良とされた理由を出した者が選考会通過者として神候補になることができる。
神候補となった者には、神様選手権に出場する権利と義務が与えられる。また、神候補となった際には、各神候補ごとになにかしらの力に目覚めることがある。その事を『アビリティ』と呼ぶ。例えば、戦闘の神の神候補となった者のほとんどは戦闘における状況の把握がしやすくなるアビリティに目覚める。
超高層ビルの目の前に立つ青年がいた。真っ黒な髪で、ネイビー色のナポレオンジャケットのボタンをしっかり閉め、黒いデニムパンツに赤いハイカットスニーカという服装である。
すでにゲーム開始から30秒が過ぎ、先ほどはどこかから爆発音が聞こえてきた。どうやら旗の取り合いが開始しているようだ。
「爆発音は真っ直ぐ向かいからおよそ700メートルほど先、か。聖人達はまだ動かないのか・・・・。」
その青年はしばらく黙り、気づいたように顔を上げた。
「・・・・そうか。爆発した場所がわかるのは戦闘の神の候補になった俺ぐらいなのか。・・・・しょうがねぇ。小さい頃みたいに、この将也様が直々に道を作ってやるか!!」
そういうと自らを将也様と言った青年は両手を前にかざした。
「このビルを壊すのか。・・・・・ヘイ!マイ アーモリー?起きてる?ハルパーを出してくれる?」
将也がそう言うとかざした両手に青い光と共にハルパーが現れ、それを持ちながら目の前にある超高層ビルに向かって歩き出した。
「目の前にあるビルに対して式を展開。引っかける、引き切る。」
言葉を発しながらハルパーを振りかざす。すると将也の目の前にあるビルの縦70cmから1mほどの外周を囲むように青白い円形の光が現れた。それをよく見れば柄のような物が突き出しており、まるで巨大化したハルパーのようであった。
「実行!!」
将也はそう言いながら手に持つハルパーを振り下ろした。それと同時にビルを囲っていた青白い光は将也の方に向かって引かれた。すると、ビルの青白い光が通った部分がまるで叩き切られたように崩れ、ビルは崩壊を始めた。
「消去。よし、これで聖人達もなんとか移動できんだろ。」
そう言いながら腕を組んで頷いた。しかし、ビルが崩壊しその高さを低くするにつれ、将也の周りには瓦礫が降ってきた。かなり大きいものもあったが、小さいものがほとんどで、全て崩壊するまで避けきるのは不可能であった。
「やべぇ!やべぇ!!おいアーモリー!この前特注したグレートソード!グレートソードくれ!!」
瓦礫をなんとか避けながらそう叫ぶと青い光の発生と共に持っていたハルパーが消え、およそ2mほどのグレートソードが現れた。
「崩壊中のビルに対して式を6重展開。刺しこむ、でかい!!」
そう言いながらグレートソードをなにかに刺すように下段に構えると、青白い光でできた6本の巨大なグレートソードが崩壊しているビルを囲むようにして横に並び、先端を向けた。
「実行!!」
先端を向けていた青白い光のグレートソードはビルに横向きで突き刺さった。
「アーモリー!すぐにキャンドルスティック!!」
将也がそう言うと、グレートソードは消え、キャンドルスティックが現れた。
「崩壊しているビルに刺さってるグレートソードの柄に対して式を6重展開。鋭い穂先、鍔で衝撃を受け止める。」
将也はキャンドルスティックを逆さまに構えた。前のグレートソードと同じように青白い光の長さ20mほどの巨大なキャンドルスティックが6本、逆さまに現れた。
「実行!」
将也はそう言い、キャンドルスティックを地面に刺した。それと同時に青白い光のキャンドルスティックが地面に突き刺さった。
その後、上から落下してきたビルに刺さった6本のグレートソードを6本のキャンドルスティック6本がそれぞれ受け止めた。
ビルの崩壊はそれ以上は進まなくなり、安定したところで将也は「消去」と言った。すると青白い光でできたグレートソードもキャンドルスティックも消え去った。
「よし。俺も戦場に行くか。」
そう呟くと将也は真後ろにあるビルに向かって叫んだ。
「聖人!いるんだろ!道は作った。先に行っているぞ!!」
聞こえたかどうかも確認せずに将也は爆発音のしたほうへ走って行った。
僕が武器オタクのため、普通の人には分からない武器が出てくると思いますが、想像力でカバー(ろくに説明もしませんが)するか、頑張って調べてみてください。