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 学園祭の当日は、清々しい秋晴れとなった。


 生徒会は朝から大忙しだ。オープニングアクトの準備に始まり、実行委員と共に来客の整理をしたり。トラブルの対応に追われたり。生徒会主催でスタンプラリーを催している為、その関係であちこち駆け回ったり。目の回るような忙しさというのはこういう状態の事を言うのだと思う。


 来客は榊学園の関係者が多いようだった。初等部や中等部の生徒、大学部の学生や卒業生などだ。後は在校生の家族など。それ以外は入場用のチケットが必要な為にあまり居ないようだったが、それにしても来客の数は多い。榊学園がどれだけ大きな規模の学校なのかという事を、改めて感じさせられる。




 午後一時を回った頃。俺は体育館で朝霞と一緒に音響設備の整理をしていた。


 体育館の後方ではバスケ部が催し物をやっている。フリースローに成功したら景品が出る、というものだ。後で一回ぐらいボール投げてこようかな、なんて思う。一度成功すれば飴玉が貰えるらしい。結構疲れが溜まっているので糖分が欲しい。


 隣の講堂からはギターの音が聞こえてくる。午前中の演劇部の公演、吹奏楽部と軽音楽部の演奏に続き、午後は有志バンドの発表だった筈だ。


「砺波、これ生徒会室に頼むわ」

「これ? って、うおっ」


 そう言うと同時に、朝霞からやたらと大きなダンボールを手渡される。重量はその見た目に反して軽かった。


「俺、放送室行ってから講堂行かなあかんねん。悪いけどよろしゅうな」

「ん、分かった」

「しかし、やっぱ男手があると助かるわー。砺波が居らんかったら、これ全部俺一人でやっとった事になるもんな」

「まあ、確かにな。全部お前一人だとキツいだろうな」


 そもそも生徒会執行部の人数自体が少ないような気がしないでもない。

 今回は各クラスの学園祭実行委員が居るからいいが、そうでないイベントの場合は一体どうなるのだろう。


「あ。それとな、生徒会室にさっちゃんがおったら、マイクの余りが無いか訊いといてくれ。あったら取りに行くから俺の携帯にかけるよう言うといてな」

「了解。んじゃ、さっさと行くか」


 タラタラしている余裕も無いだろうし、一度だらけてしまうとその後動くのが億劫になってしまうからな。

 ダンボールをきっちり抱え直し、さあ行こうと思った所で、後ろから朝霞に再度声をかけられる。


「そや、砺波」

「ん? まだ何かあるのか?」

「アイスティー、生徒会室の冷蔵庫ん中に入れてあるから、良かったら飲んどき。一緒にレモンの輪切りも置いてあるからそれ沈めてアイスレモンティーにしたら、疲れ取れ易いと思うで」

「お前、そういう微妙な気遣いっぷりは主婦みたいだな」

「シュフはシュフでも夫の方の主夫で頼むわ。美人のお嬢さんの専属主夫ならいつでもなったるけどなー」

「分かった分かった。貰っておくよ、サンキュ」


 レモンは疲労回復にも効くらしいしな。折角だし、生徒会室に着いたら一杯ぐらい貰っておくとするか。


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