引越し先の家の2階は幼稚園
岡山市に引っ越した。妻は物件も見ないで契約したのだ。その建物は2階建てで2階部分は幼稚園になっている。滑り台のような階段が1階から2階につながっている。
となりの家から赤いパジャマを着たおばさんが出てきた。
僕は今度隣に引っ越す者ですと挨拶した。
おばさんは「まあ、こんな格好で恥ずかしい。私は隣の幼稚園の園長です」と頬を赤らめながら喋っている。
僕は彼女を変な奴と思いながら、引越し予定の家に入った。
その家には階段がなかった。階段のかわりにビニール紐がはしご状になって2階につながっている。僕の体重の重荷でビニール紐は切れてしまったが、それでもなんとか2階に上がった。
2階の部屋は2部屋あり、4畳半の和室だ。そしてその和室のひと部屋には古ぼけた家電製品が並べてあった。どれも皆使い物にならない。以前住んでいた奴が残していったのだ。
屋上に行くと、そこにも家電製品が山積みになっていた。
「なんてだらしない奴だ!」
そして、こんないい加減な物件を購入した妻にも腹が立ってきた。
1階に降りて、各部屋を確認してまわる。
各部屋は狭く、部屋と部屋の隙間が30センチくらい空いている。トイレはなぜかその隙間にある。
僕はこの家に住むのかと思うとうんざりする。
2階で子供達が楽しそうに遊ぶ声が響いいている。
その日、僕は自分のマンションに帰り、その使いやすさにホッと安堵した。僕は妻とこのマンションに住み続けることを思い出した。