大魔石ゲットと【お嬢様講習】の朝ですわ!
「あら?あらあら?これは珍しいですわね」
アイアンキングゴーレムを撃破後、ドロップアイテムを探すべく、激戦の跡地へと向かっていたのですが、そこにキラリと光るテニスボール状のアイテムを発見しました。
「大魔石……このレベルのダンジョンにしては、破格すぎるドロップですわ」
:大魔石!!1個数千万もするやつじゃん!
:ドラゴン討伐しても、落とすかどうかは運次第……というかまず落とさないのに……。
:なんでメイカちゃん、そんなに落ち着いてるの!?
「だって、いくらお高いと言っても2年経つまで換金できないんですもの。どうしても冷めちゃいますわ」
:そうか!S級冒険者のメイカちゃんにとっては、そこまで貴重なアイテムじゃないのか!
:もし換金できたら、ドレスとか買えたのにね。
:でもDPとは交換できるんだし、何ひとつ損してないけどなw
「ええ。貯めに貯めて、2年後には一等地にどデカい家を建ててやりますわ!」
:ファイト!
リリー・サレナ:応援してます!
:注文しても豪邸なら完成まで年単位で掛かるのは、ここだけのヒミツだぞ!
「!?!?!?!」
てっきりDP換金後はすぐに豪邸に住めるものだと思い込んでいたので、リスナーからの現実的な指摘に膝から崩れ落ちてしまう。
:すげえ……アイアンキングゴーレムをノーダメでぶち壊したお嬢の心を一言で折るとは……
:人の心とか無いんか?
リリー・サレナ:リスナーさんのオニ!悪魔!ドラゴン!
ゼロの観測者:口撃力はS級超えてるなw
エレナ:それより、今回獲得しましたドロップですが、装備品などの材料に使う場合は、お早めに連絡お願いしますね
地に伏している間も、みんなのコメントはいつもと変わらない。それでも私が受けたショックは大きく、しばらくの間コメントを見ることすら出来ませんでした。
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「き、緊張しますわ……この様なお召し物で失礼にならないかしら……」
悲しい結末で終わった探索から2日後、遂に【お嬢様講座】初日を迎えました。
付き添いのエレナさんが運転する車の中、私は持ち込んだ手鏡を覗き込み、一心不乱に身だしなみを整えています。
「ただの講習だし、そこまでナーバスにならなくても良いと思うんだけどなぁ」
「エレナさん……それなら貴女はなぜ、いつも着ないようなお高い服で身を包んでいるのですの?」
「え?……私は付き添い役だからね。受講者のメイカちゃんとは立場が違うから……」
私の質問にギクリとしたのか、1オクターブ高い声で言い訳を口にするエレナさん。
「でもメイカちゃんもDPで買える範囲で一番良い服を着てきたのよね?それなら大丈夫だと思いますよ」
「そうかしら……」
「ええ!もしダメだとしても未成年なんだし、いくらでも言い訳できますよ」
「そうですわよね。DPでしか買い物出来ない身ですもの。大丈夫ですわよね!」
来訪時の注意事項に平服でも大丈夫とありましたが、相手は【お嬢様講座】を開くほどのお方。
どこまで信じて良いものかと不安に苛まれていましたが、エレナさんの励ましで、少しは気分が良くなりました。
それからは近況報告などの会話を交わしながら、車は走り続けます。
閑静な高級住宅街を抜け、少し郊外の森のような敷地へと入り込んでいきます。やがて、フロントガラスの向こうに目的の建物が見えた瞬間、私とエレナさんは同時に息を呑みました。
「……嘘でしょ? あれが目的地なの?」
エレナさんの声が裏返っています。ですが彼女を笑うことは出来ません。なぜなら視界に飛び込んできたのは、天を突くような鉄柵の門と、その門に守られるのに相応しい大豪邸。広大な庭園や芸術的すぎて理解が追いつかないオブジェまで、私が憧れていた物が目の前に広がっていたのです。
「ねえ、メイカちゃん……入り口で待ってるから、終わったら戻ってきてね」
「エレナさん!?ここまで来てわたくしを見捨てるのですか!?」
「だって、こんな大豪邸が目的地なんて聞いてないもん……。私の服じゃ浮いちゃうよ」
「エレナさんで浮くなら、私はもう天まで届いてしまいますわよ!?」
愚図るエレナさんにツッコミを入れながらも、冷や汗が止まりません。目的地に近づくにつれて、先ほどまで『DPで買える最高の一着』と自負していた私の一張羅が、まるで安物の布切れのように思えてきます。
「メイカちゃん、着いちゃうわよ!引き返すなら今しかないよ!」
「……お腹が痛くなってきましたが、逃げませんわ。だって、ここならお嬢様のイロハを確実に学べる筈ですもの」
「……わかった。それなら私も覚悟を決めるわ」
顔面蒼白になりながらもミラー越しに頷き合う私たち。こうしてノロノロと進む車は、屋敷の門前までたどり着いたのでした。
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