【肩慣らしに】ダンジョン配信5/23【ゴーレムをしばきますわ!】
運命の日から2日後、【お嬢様講座】の最初の受講日を取り決めた私は、慣れ親しんだダンジョンに入りドローンカメラを起動する。
「皆さま、こんメイカー!今日は【お嬢様講座】の興奮を鎮める為に、ゴーレムをしばき倒して参りますわ」
:こ、こんメイカ?
:おかしいな、日本語なのに何言ってんのか全然わからん
:というか理解を放棄したくなるかんじ?
:とりあえず今日の配信はお嬢様からはほど遠いのはわかった
:お嬢様講座?何それ?
探索の理由と目的を語った途端、からかう者や頭にハテナマークを浮かべる者まで、色々なリスナーからは様々なコメントが寄せられていく。
「失礼、説明不足でしたわ。まず【お嬢様講座】ですが、先日の行いましたメン限配信の際、わたくしが申し込んだお嬢様になる為の講座なんですの。ちなみに3日後の金曜日に顔合わせと簡単なガイダンスを行う予定ですわ」
:お嬢様講座www 怪しいにも程があるでしょwww
:一応変な講座に申し込んだのはわかったんだけど、そこから何があったらゴーレム殴りに行くことになるん?
:それはメン限リスナーの俺らもわからんw
:あれだよ。ダイエットの前日に食い溜めする。あの心理よ。
:お嬢様になる前にゴリラ欲を解消しようってのかwww
「そんな野蛮な欲望なんて、持ってないですわよ!?」
せっかく、前回の放送を見られなかった方々のために説明したのに、あっという間に弄りモードになるリスナー達。
「大体、わたくしがゴーレムダンジョンに来たのは、内なる美を高めるため……つまり、精神統一のためですの! 決して、溜まった破壊衝動を発散してスッキリしようなんて、そんな短絡的な考えではございませんわ!」
……半分は嘘です。
本当は、お嬢様講座の申し込みをしてからというもの、楽しみと緊張が入り混じって、じっとしていられないのです。このままでは3日後のガイダンスで、講師の方を前にしてフガフガと鼻息を荒くしてしまいそう。
そんな醜態を見せないように、この有り余るエネルギーを『適切に』処理しておく必要があるのです。
:すごく早口で話してるw
:メイカちゃんファン歴2年の俺には分かる!ウソであると!
:いやいや。あの挙動不審さ見たら初見でも察するってw
:しっ!気づかないフリをするのが、紳士のマナーだぞ!
「ふ、ふふふ……。皆さま方の愛ある弄りには困ったものですわね。そこまで言うのなら、私の言動がウソかどうか、ダンジョンでの立ち振る舞いで判断なさいませ!」
だが、本心を隠し切ったと自画自賛していた弁論も、ファンの皆さまにはバレバレだったようです。彼らの言いように頬を引きつらせながらも、なんとか取り繕ってダンジョン探索を開始するのでした。
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ダンジョンの奥へと進むにつれ、ひんやりとした空気が肌を撫で、コツンコツンと私の足音が響く。
「ああ〜。遺跡タイプのダンジョンは少し埃っぽいですが、涼しくてイイですわ……。って、出ましたわね」
鼻歌混じりで歩いていると、メロディーをぶち壊すほどの重厚な足音が通路に響き始めました。
角を曲がった先、広々とした小部屋に存在する岩石を魔法で繋ぎ合わせたような巨体。このデカブツこそ本ダンジョンのメインターゲット。ストーンゴーレムです。
「ゴーレムならどっしり構えればいいのに、無粋な足音ですこと。ですが粗忽者の貴方に朗報ですわ。わたくしの溢れんばかりの『ワクワク』、お裾分けして差し上げますわ!」
:うわぁ〜。まさかゴーレムに同情する日が来るとは……
:目が、お嬢様の目じゃない。完全に捕食者の目だ!
:お裾分け=全力パンチ
:メイカちゃんが隣に引っ越したら、引っ越しそば代わりに殴られんのかなw
:イヤすぎるwww
:それよりメイカちゃん。可哀想だから、せめて挨拶してから殴ろうな?
「言われずとも分かっておりますわ! お嬢様の嗜みとして、ご挨拶は基本ですもの」
私はお気に入りのマジックバッグから鈍色のナックルダスターを取り出すと、両手に嵌め込み一度両手をコツンと合わせて一言。
「ご機嫌よう、石の塊さん。……そして、さようならですわ!」
挨拶が言い終わると同時にストーンゴーレムの数十倍の速さで駆け寄ると、私は魔力を込めていない、ただの拳で腹部に向けて殴り掛かる。
バキッ
拳が奏でた破壊音とは裏腹に、豆腐を箸で突き刺すが如く、あっさりと腕が体を貫通。哀れなストーンゴーレムは、ピキピキと左右にヒビが入り、そしてゆっくりと倒れていくのでした。
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