季節遅れの線香花火
ある日の夕方、、いや、5年前のあの日から、私は1人、花火セットと空のバケツをもって河川敷にいっている。
毎日、毎日、雨が降っても、台風がきても、風邪をひいても、、
行かなった日なんてない。
ライター?そんなものいらない。
私の火は、あなたの花火からもらうことが出来るから。
そう、あなたはいつも私に火を分けてくれる。
あなたの花火は誰よりも眩しかった。美しかった。
それだから、みんなあなたの花火を求めてる。
初めて私に火を分けてくれた日。
この河川敷の、橋の下の隅っこで、、あなたが話しかけてくれた瞬間。
今でも覚えてる。
忘れるわけない、、忘れ、たくない。
そして、私の花火に火をつけた。
それでも消えてしまいそうな私の花火に、あなたはずっと火を分け続けてくれた。
みんなから羨むような声が聞こえた時、、正直少し嬉しかった。
でも、それから1年くらい経った時。
あなたは毎日は来てはくれなくなった。
でも、久しぶりに会った時、あなたは何も気にしていないかのように私と接した。
だから私も、出来るだけ気にしないように、、いや、フリをしていた。
結局、それも長く続かなかった。
私は見てしまった。
あなたがあの美しい火を、、、、
ちょうどそれが、今から4ヶ月ほど前のこと。
私が立っている場所は、その時あなたがいた場所だ。
今日こそ、終わらなせなければ。
空のバケツに川から水を組み入れる。
水が入ったバケツはズッシリしており、あまりの重さに倒れてしまいそうだった。
それでも、、、、!!
私は線香花火を、水バケツに思い切り突っ込んだ。
ギュッと痛みが走る何かを抑えつきながら、ゆっくり顔を上げる。
そこには、美しい夕日が広がっていた。
そういえば、、あの日もこんな空だったっけ、
また胸がズキンと傷む。
でも、、いつまでもこの美しさに縋るわけにはいかない。
私は、少しだけ後ろを振り向いた後、スッと影が伸びている道を向き、歩いた。
そして、一度も振り返ることはなかった。