第五章 真実が明かされるとき
王は書簡を手に取り、じっと見る。
「この文面、『ルルカを暗殺』とあるが括弧書きで『でも可哀想だからやめようかな』と書いてある。しかも、計画の最後に『みんなでピクニックに行きませんか?』とある。これは反乱計画というより、友達募集の手紙だ」
私は赤面した。
「……うっそ……そんなところまで見つけるなんて……」
王妃が優しく微笑む。
「マルガリータ、あなたは悪役令嬢のふりをしているのね? でも、あなたの心はとても優しいわ」
「……はい。私はこの物語の悪役として描かれていて、最後には追放される運命なんです。だから、ふりだけでも悪役を演じて、運命をすり抜けようとしたんです」
また場が静かになった。
王太子フレデリクが静かに口を開く。
「……つまり、お前は自分を守るためにわざと悪役のふりをしていた? でもその結果、誰も傷つけず、むしろ心配して回ったり、優しくしたりしていた?」
「……はい」
ルルカがにこっと笑った。
「それって、すごく素敵なことじゃないですか。マルガリータ様は本当は悪くないのに、悪者になるかもしれない運命を背負って、それでも平和を選ぼうとしてる。それは勇気ある行動だと思います」
私は目を丸くする。
「……え? そう、ですか?」
王が立ち上がり、宣言した。
「マルガリータ・デル・ヴァイド 。お前の『悪役のふり』は、見事に失敗した。だがその失敗が、この国にとっての最大の幸運だった。お前は悪役ではなく、善良な令嬢だ」
「……!」
「よって、反乱の罪は問わない。そしてお前の優しさと正直さを称え、王宮の『平和推進官』に任命する」
「……へ? 平和推進官?」
「そうだ。お前の天然な優しさを国中に広めてくれ」
悪行ではなく優しさを認められた気がして、目頭が熱くなる。
涙を浮かべながら、私は深く頭を下げた。
「……はい! 頑張ります!」