第三章 悪役っぽいことをするも、天然が炸裂
次の作戦。
「今度は王太子に求婚を申し込む! でも、冷たく高慢に! それで、ヒロインを傷つけるふりをする!」
王太子フレデリクは、毎週木曜日に図書館で読書をしている。
私は黒のローブを翻し、足音を忍ばせて近づいた。
「フレデリク殿下。貴方と婚約の話があるのだけど」
声は低く、冷たく。
完璧な悪役令嬢モード。
王太子は驚いて顔を上げる。
「マルガリータか。どうした?」
「ふふ……貴方の未来は私と共に在るのよ。ルルカさんなど平民のくせに王妃になる資格があると思ってるの? 可哀想ね」
完璧! 完璧だ!
と思ったのも束の間。
「……でもフレデリク殿下、無理に結婚させられたら幸せになれないよね? もし、ルルカさんのほうが好きなら、そっちと結婚していいよ? 私、別にいいし」
「……え?」
「だって結婚って、相手が好きじゃないと毎日つらそうだし。私も、好きでもない人と結婚したくないなって思って……」
王太子は困惑しながらも、ふっと笑った。
「……マルガリータ、お前本当に変わったな」
「え? 変わった? どこが?」
「昔はもっと……怖かった。高圧的で、誰にも譲らない感じが」
「……あ、そ、そうなの? それは……成長したってことね!」
やばい、悪役のふりが逆に人格改造されてる……!
私は内心で焦った。