第一章 転生して、悪役令嬢になったはずなのに……
「……え? ここはどこ?」
目を覚ました私は、天蓋付きのベッドの上でふわふわのシルクの布団に包まれていた。
部屋は広く、窓からは朝日が差し込み、金縁の鏡や宝石箱、ドレスがずらりと並ぶ衣装棚が目に入る。
「……どっかのお屋敷?」
頭がぼんやりしている。
記憶は断片的だ。
私は……確か現代日本でOLをしていたはず。
残業続きで倒れて、病院に運ばれた……その次の記憶がない。
「ああ……そうか。まさか、あれが……」
私はふと、ベッドサイドに置かれた本に目をやった。
表紙には『運命の王女と三つの契約』というロマンスファンタジー小説のタイトルが。
「……これ、私が最後に読んでた本……?」
そして、頭の中にある情報が浮かび上がる。
──この世界は、私が読んだ小説の世界。
そして、私は──
「悪役令嬢、マルガリータ・デル・ヴァイド に転生した……?!」
私は飛び起きた。
「うそ!? なんで!? 私はただの読者だったのに! 悪役令嬢なんて最後には追放されて牢獄行きか、死ぬか、最悪は魔物に喰われる運命じゃん!」
慌てて鏡の前に走り、自分の顔を覗き込む。
鏡に映ったのは、美しくもどこか抜けた雰囲気の少女だった。
整った顔立ちに貴族然とした佇まい。
まさに小説に出てくる「高慢で冷酷な貴族令嬢」そのもの。
「……でもなんか、目が優しすぎる気がする……」
映りこんだ自分の顔を見て、なんとなくそう思った。
「と、とにかく! ここは危険! 私はこの物語のヒロイン、ルルカを陥れて王太子を奪い、反乱を起こす悪役令嬢! でも私はそんなことしたくない! 平和に暮らしたい!」
そこで、私は決意する。
「……なら悪役令嬢のふりをすればいい! でも、本物の悪役じゃない。ただの「ふり」。そうすれば運命をすり抜けられるはず!」
そうして、私は「悪役令嬢のふり」を始める決意を固めた。