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03  友人になるアレックスたち。


 手紙を燃やし、晴れやかな顔になったアレクシアに、アレックスは笑いながら言った。


「はは。あなたにとっては不幸の手紙でしたか」


「ええ。まったく、何故今更こんな手紙を」


 アレクシアは、浮気した元婚約者・ロミオット王子の企みによってここへ追放されたのだと説明した。


「それは大変でしたね」


「ええ、でも。その代わり、自由になれました。そういう理由わけで、こんなポエムを送ってくる意味がわかりませんのよ? まったく、もう」


 アレクシアは嬉しそうに笑顔を浮かべ、アレックスはその笑顔に心惹かれた。


「あの、アレクシア公爵令嬢」


「あ。いけませんわ。私はこんな暮らしはしておりますが、書類上は平民となっておりますので、アレクシアと呼び捨ててくださいまし。ふふ、変な感じですわ」

 

「ははは。では僕のほうは、アレックスと気軽にお呼びください。ではアレクシア。もう貴族の暮らしに戻る気はないのですか?」


「もちろんです! 煩わしい人間関係もなく、1日のスケジュールを頭に叩き込む必要もないまったりライフですのよ? なにがあっても戻りませんわ!」


「――なるほど」


 アレックスは、今年20歳になるが、まだ結婚相手が決まっていなかった。

 彼の家門は結婚に関して厳しくなく、気に入った相手がいれば平民から選ぶ場合もある。

 王都からかなり離れた辺境なので、嫁に来たがる令嬢も少なく、国から結婚を迫られることもなかった。


 だが、アレックスも、そろそろ身を固める時期は来ていた。

 ただ、ピンとくる相手がおらず、平民とお見合いでもするか、と思っていたところ――アレックスの心にアレクシアの存在が響いた。

 彼女が美しいからだろうか。それとも名前による親近感だろうか。


 その理由は定かではない。

 だが、アレックスはアレクシアと、これをきっかけに、懇意になりたいという気持ちが生まれた。


 ――けれど。


「(この生活を楽しんでいる彼女には迷惑、だな)」


 彼女の事情を聞いて、踏み込んで良いものではないと、自分の気持ちを諌めた。



 ――今回のことはちょっとしたハプニングだが、ささやかに楽しかった。それで、じゅうぶんだ、……とアレックスは自分に言い聞かせた。



「では、手紙をちゃんと配達できましたので、僕はそろそろお暇しますね、アレクシア」


「あ、はい。こんな手紙を届けてくださってありがとうございました。道中をお気をつけて、アレックス様」


 アレックスは、挨拶しながら苦笑するアレクシアに魅力を感じるが、心を引き締める。


「……では、失礼する。『アレックス』」


 そして冗談のように『アレックス』と呼んだ。


「ふふふ。ええ、良ければ、またお茶しにきてください。『アレックス』様」


 アレクシアもその冗談に笑い、どこか含みある韻を踏んで返した。


「いいのですか?」


 アレックスは思いがけないアレクシアの誘いに目を丸くした。


「わたくし、越してきてから日が浅いせいか、まだお友達がいませんの。良ければお茶のみ友達になってくれませんか?」


 アレクシアは、そう言って微笑んだ。


 その笑顔は温かみがあり、先程聞いた彼女の二つ名【アイスローズ】とはかけ離れていた。


 アレックスは、『(どこがアイスローズなんだ。とても可愛らしい女性じゃないか)』と内心思いながら微笑みを返した。


「――よろこんで」


 アレックスは、彼女の誘いを素直に受け入れた。


「(友達か。それも悪くない。それに屋敷からもここはさほど遠くないし、オレも貴族で友人と言える相手は少ない)」


 また、アレクシアもアレックスが自分の提案を受け入れてくれたことに、嬉しさを感じていた。


「(……やだ、私としたことが、自分から殿方を誘ってしまったわ。でも、この方と再度お会いしたと思ってしまったのよね。快諾して頂けてよかったわ)」


 こうして、なんとなく馬が合った二人は、アレクシアの屋敷でお茶会をする仲になった。





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