表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/10

最終話 ロミオメールが届かなくなりましたが、それはさておき、リア充します!

「すばらしい歌劇だったわ」

「僕も久しぶりに、こんなに完成度の高い舞台を見たよ」


 アレクシアとアレックスは予約したレストランで向かい合わせに座り、料理が届くまでの間、観劇の余韻に浸りながら談笑していた。


 故郷の劇場で、役者達の美しい歌声と熱演に魅せられたアレクシアは、心から感動していた。

 

「(……アレックスが隣にいたから、余計に楽しかったのかもしれないわ)」


 グラスの水を一口したあと、チラ、と上目遣いでアレックスを見ると、彼もまた優しい瞳でこちらを見つめていた。

 その視線に心がじんわりと温まった。


「(彼とのこんな優しい時間がずっと続くといいのに)」


 アレクシアはふと目を伏せ、店内に響くピアノの旋律に耳を傾けた。


「アレクシア、お願いがあるんだけど」


 彼女がグラスに触れていた手を、アレックスの手がそっと包んだ。

 その温もりに思わず視線を上げると、彼の表情はどこか真剣だった。


「え……な、なにかしら」


 ――テーブルにはいつの間にか、開かれた指輪ケースが置かれていた。


「この指に、この指輪をはめても……いいだろうか」


 指輪は、バラを模した繊細な装飾に、サファイアがきらめく美しい一品だった。


「と、とても綺麗な指輪だわ……」


 アレクシアは、心臓が高鳴る音が相手に聞こえそうで、思わず息を飲む。


「君は、田舎での暮らしを大切にしているから、告白するか悩んだ。けれど、もし良ければ僕と共に暮らす未来を考えてはくれないだろうか? 僕は君に会ううちに、友達以上の感情を抱いてしまった。好きだ――アリス。良ければ婚約を前提に今後は会って欲しい」


 アレクシアは、レストラン内の音すべてが聞こえなくなった気がした。

 

「(告白されるって……こんなに緊張するものなのね)」


 アレックスは、アレクシアが自由に暮らしたいという気持ちを尊重してくれているのだろう、遠慮がちだ。


「(この人は、私を尊重してくれる……)」

 

 たしかに、領主の息子に嫁いだら今のような気ままな暮らしは無理だろう。

 けれどそれは公爵令嬢や、王太子の婚約者であった時との不自由さとはきっと違う。


 なにより、アレクシアも、アレックスのことが大好きだ。

 彼とずっといたい。


 ――今、そうはっきりと自覚した。


「嬉しいわ、アレックス。こんなにも私のことを考えてくれて。私もあなたが大好きです。……指輪をはめて頂けますか?」


 気がつけば、お互い、すこし手が震えていた。

 それに同時に気がついて、顔を見合わせて吹き出した。


 翌日、二人はアレクシアの実家へそのまま婚約の報告を行った。


 アレックスは身分的に問題はなく、何より婚約破棄にあった経歴に傷あるアレクシアが隣国辺境伯の跡取りに嫁ぐことは、公爵家としても歓迎できる事柄だった。


 アレックスの両親へもベルクホルトへ帰ったあとに報告したが、大歓迎され、二人はその後、1年も経たずに結婚した。




 ◆



「……あれ?」

「どうしたの? アリス」


 結婚して数ヶ月たった頃。

 執務室で、手紙を仕分けしていたアレクシアは、ふと気づいたように顔を上げた。


「そういえば、ロミオットからの手紙が来なくなったと思って」


「ああ、あれね」

「そう、あれ。あ、そういえばジュリエティからも届かないわ」


 そう言いながら、デスクで書類仕事をしているアレックスへ仕分けた手紙を手渡す。

 手紙を受け取りながらアレックスは、ウインクした。

 

「ジュリエティなら、施設でで会った男性と結婚したみたいだよ」

「えっ」


「それなりに幸せだと報告を受けているから、おそらくジュリエティからの手紙はもう届かないと思う。それとロミオット殿下……いや、もうただのロミオットだね。彼のほうは推測なんだけど――君の次に婚約していたマーキュリア公爵令嬢が我が国の第一王子と婚約することになったらしくて。なんとなくだけど……手紙の宛先がマーキュリア令嬢になってるんじゃないかな?」


「まあ!? そんなこと知ってたなら教えてほしかったわ!?」


 ぷん、と頬を膨らませるアレクシアを、アレックスは優しく引き寄せた。


「――彼らからの手紙を見るたびに君がイライラしていたからね。忘れているならそれでいいかと思ったんだ」


 抱き寄せられたアレクシアは、赤くなりながら視線をそらす。


「そ、それなら仕方ないですわね」


 確かに、最初に知り合った頃から、あの手紙を見て癇癪する姿をアレックスに見せていた。


 それにしても、あんな癇癪を起こす私を見てよく好きになってくれたわ、とアレクシアは不思議に思ってアレックスに聞いた。


 すると、アレックスは、


「だってそんな姿も、可愛かったから」


 とにっこりわらって、彼女の頬にキスをするのだった。


                【君はオレのDeathティニー】元婚約者からロミオメールが届きますがそれはともかくリア充します! ー終わりー


 

 

 

ご閲覧いただきありがとうございました。

いつも来てくださる方も、初めての方もありがとうございます。

(投稿中、ちょっと思い直して1人称を整理しなおしました。アレックス【私▶僕】に統一したり、ロミオメールの【僕▶オレ】です。読んでる最中に工事になってしまった方、申し訳ありません。)


この作品は、元婚約者から届く「ロミオメール」という難解で迷惑な手紙をテーマに書いてみました。

ちょっとでも、クスッと笑っていただけたなら幸いです。


短編なのでさらっとまとめていますが、もし気に入っていただけたら感想や評価をいただけると励みになります!


それではまた、次の作品で!


 ■他の作品もよければ!■



■★今日の一冊・なろうラジオ213回で紹介されました★(長編)


・【私のおふるで悪いんだけど】 とお母様に取り巻きを押し付けられ、嫁いだ辺境でも嫁扱いされませんが、おかげで自由に生きれます!

https://ncode.syosetu.com/n1003iq/




【NSP賞01佳作】■わたし悪役令嬢、いま無人島にいるの。(完結済長編)@ネオページ様で佳作を頂きました。

https://ncode.syosetu.com/n9417in


■・余命わずかな王子様 (シリアス・連載式短編)※ハッピーエンドではありません(注意)

https://ncode.syosetu.com/n0658iz/


 


■【お前を愛することはない……ことも、ない】と言ったその氷の貴公子(火属性)が描く彼女の肖像画はとても可愛い。

https://ncode.syosetu.com/n8208is/

・ほのぼの。小さな2人が婚約するまでの話。2人は美術部に所属します。



■天使の行きつく場所を幸せになった彼女は知らない。 【連載版】

https://ncode.syosetu.com/n6143je/

孤児院で入れ替わった少女2人の物語。


■半妖精の錬金術師ですが、どうやら義弟が運命のツガイのようです。(完結・長編)

https://ncode.syosetu.com/n9198jh/

売れない錬金術師のマルリースは半妖精。ある日、義弟がツガイだと発覚する。




■長くて読み応えだけはあるかもしれません↓


・一番長い作品。


『そのヒロインが選んだのはモブでした。』(45話)

https://ncode.syosetu.com/n2424ik/



・短編集

https://ncode.syosetu.com/s6622h/



■【 お前を追放す……しない! 】 追放系悪役に転生したオレは気がついたらヒロインとスローライフしてた。(ショートショート連載・ギャグ寄り?)

https://ncode.syosetu.com/n5528ix/


・男性主人公。ショートショートでノリがよいです。



 ■現代恋愛

 ・ギャルゲーの幼馴染ヒロインに転生してしまった。

  https://ncode.syosetu.com/n9775il/




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ