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プロローグ - ザークの贖罪 エピソード1 - アルバスとの出会い

アルバスは刎頸(ふんけい)の友だった。


私にとって、彼は単なる親友以上の存在、心の半身とも言うべきかけがえのない相棒だった。


それなのに、私はアルバスを死なせてしまった。

自分の愚かな行動が、彼の命を奪ったのだ。

彼だけではない。

最愛の娘、そして、村の多くの命を奪ってしまった。

私は、この罪を一生背負って生きていかなければならない。


今、初老の私が振り返ると、アルバスとの出会いは運命であると同時に、災厄の始まりだったのかもしれない。


アルバスを初めて見たあの日、メシカ村には雨が容赦なく降りしきっていた。


初等学院の玄関で、母親に連れられアルバスはやってきた。

牛の皮に蝋を塗ったカッパを羽織っていた。

母親は傘を差していたが、自分だけを雨からかばうようで、我が子が雨に濡れるのを気にする様子もなかったのに違和感を覚えた。


アルバスはずぶ濡れのまま、先生に連れられて教室に現れた。

「アルバスです…」

名前だけがかろうじて聞こえるくらいの小さな声で挨拶をした彼は、誰も受け入れまいとする強固な孤独を纏っているように見えた。


アルバスはいつも一人だった。

自ら他の子供たちに近づこうともしなかった。

私はそんな彼を気にかけていたが、なかなか声をかける勇気が持てずにいた。

私自身、他の子供たちとは表面上は良好な関係を築いていたが、心の奥底では言いしれぬ孤独感を抱えていて、彼と同じ空気を感じていたのかもしれない。


孤独や空虚さを感じたとき、私はよく森の中にある古代遺跡に足を運んでいた。

獣道もない森の奥に佇むその場所は、誰にも知られずに一人になれる、私の秘密の場所だった。


ある日、いつものように遺跡に足を運ぶと、そこにアルバスの姿があった。


「おう」

と、無意識に声が出る。


「うん」

と全て悟っているかのようにアルバスは答えた。


私たちは、そのまま言葉を交わすこともなく、ただ無言のまま遺跡を見上げた。

だが、その沈黙の中で、孤独を分かち合うような、不思議な一体感を覚えたのだった。


あれから、私はアルバスに少しずつ近づいていった。

一緒に遺跡に佇み、言葉少なに会話を交わすようになった。

私たちは、他の誰にも理解されない孤独を、互いに理解し合える存在だった。


次第に、私たちは遺跡だけでなく、村の中でも他の子も交えて一緒に過ごすようになっていた。

川辺に行き、石を水面に跳ねさせて遊んだ。

森の中で木の実を採ったり、村の広場で棒を持ち戦ったり、子供らしい遊びに興じた。

自然に笑みがこぼれるようになったアルバスを見て、安心感を覚えた。


ある晴れた日、私たちは村はずれの丘に登った。

二人で草原に寝転がり、青空を見上げる。

穏やかな風が頬を撫でる。


「ザーク」

アルバスが話しかけてきたが、何を話すともなく数秒の無言が続いた。

私は次の言葉を待った。


「気持ちがいいな」

ただ、その場の感想を吐露したその言葉に、私の胸は熱くなった。


「ああ」

と小さく返した私は、自分の感情を悟られまいと雲の動きに意識を集中させた。

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