閻魔庁にて
次の話のプロローグ的な話です。
地獄に戻ったタマは汚職政治家の霊を極卒に預けた後、閻魔庁へ行った。
「タマか、任務ご苦労」
「恐縮です」
「新しい任務だがな」
「はい」
閻魔大王は閻魔帳を見て言い、タマが頷く。
「次は会社でパワハラを行ってる上司の殺害だ。できるか?」
「わたしは問題ないですが……」
生きた人間となると妹華はあまりいい気分はしないだろうな、タマは思った。
「小野家の媛か」
「はい」
「まあ、忠告を聞けば殺す必要はないが、いつもサポートがメインだし、慣れてもらうしかないな」
この仕事をしてる以上、生者を相手にする場合は勿論ある。基本的にはどんな悪人だろうと死者になってから裁くのが地獄の方陣だが、誰か困っている人がいる場合はまたは彼ら彼女らがその障害から解放されたいと祈願している場合は別である。さらに殺害を確定させるまでには何度か忠告をする。それを聞かなかったということでもある。
「でもなんでわたしが?」
「そのパワハラ上司へ忠告をしに行ったのは文官系の極卒で戦闘にはあまり向かないのだよ。戦闘になったとしても負けることなんてないだろうが、万が一のためだ」
過保護じゃね、タマは思った。文官系だからといって普通の人間が獄卒に勝てるとは思えないが。
「ところで」
閻魔大王の側に控えていた人物が言った。
「我が子孫は息災ですか?」
彼の名は小野篁、妹華のご先祖様で閻魔大王の側近だ。死後も閻魔大王の下で亡者の裁定のサポートをしている。
「はい」
「それは安心しました」
篁はほっとしたように胸を撫でおろした。
「大変なこともあるでしょうけど、何卒我が子孫を気にかけてやってください」
「はい、勿論です」
篁の言葉にタマは強く返事をした。
「それでは頼んだぞ」
再び閻魔大王が言った。
「はい!」
タマは再び力強く頷いたのち閻魔庁を後にした。