表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

練習帳

習作4

作者: 日向 葵

※他サイトより転載

 世間ではクリスマス前日のその日、私はお休みをもらった。偶然だった。

 いただいたものは有効活用しよう。気になっていた展覧会を見に美術館に向かい、オシャレなカフェで和牛がメインディッシュのランチとフルーツたっぷりのケーキに舌鼓をうつ。折角なので買う予定のなかったワインをクリスマス仕様の包装紙に包んでもらい、駅まではイルミネーションで金と銀に彩られた通りをあえて選んだ。

 そうして一人楽しいクリスマス・イブを過ごした帰りの電車は、退勤ラッシュとぶつかっていた。ホームに停車中の電車はもうドアぎりぎりまで乗客で埋まっていた。待ち人が家に灯りを点してくれるわけでもなし、一本見送ることを即決する。

 出発するのとは反対の列に並ぼうとして、ひときわ鮮やかで華やかな色が視界の端を踊った。


 真っ赤な、ばらの花。


 ネイビーのロングダッフルコートに身を包んだサラリーマンが、満員電車の中花束を大事そうに抱えている。会社帰りで寒色の服を着た人が多い中、その色彩はよく目立った。自分の体は押しくらまんじゅうに巻き込まれ不自由そうなのに、真紅の贈り物は潰されないよう余白を作って大事に回された腕でしっかりガードされている。


 今宵あの花束の受け取る人は、心底愛されている。


 見ず知らずの二人につい思いを馳せながら、閉まる扉を見つめた。

クリスマスなので。この二人に幸あれ!の気持ちで書きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ