誤解
個人的に行なっている「しりとりで題名を決めて書く」の2作目です。あれから日にちが結構過ぎてしまいました。
前作が「りんご」で今作が「誤解」です。次は何にするか迷います。
「すまない、誤解してた」
そう貴方が言う。何回目でしょうか。その言葉を聞いたのは。
「いえ、お気になさらず」
私も決まりの言葉を口にする。大抵このやり取りをすると貴方は目線を本に移してしまう。「寂しい」なんて今更言えず、当たり前だと受け流すしかない。
「…いや」
そう思っていたが、会話が続いていたようだ。
「どうしました?」
「僕はそうじゃない、気になる」
珍しく手元の本を閉じてこちらに視線をまた向けた。
「気になるとはどういう…」
「誤解してしまった君の本当の気持ちが気になるんだ」
本を持つ手が少し震えている。
「その…今朝渡した花束のことですよね」
「そうだ、僕は部屋に彩りが出るから渡したと思っていた」
「はい」
「でも誤解だった」
「はい」
「だから本当の理由を知りたいなと…」
少し目線が逸れた。
(ほう…)
久しぶりに会話が続いてるため嬉しい反面、理由をどう話すか迷う。
「言いたくなかったらいいんだ…ただ個人的に少し気になってしまっただけだから…なんとなく」
段々と焦り顔になってる。このまま黙り込み続けてみたいが、可哀想な気持ちが勝つため口を開きましょう。
「お庭で育てた植物を少しだけなら花束にしても良い、と許可をいただきましたので。貴方様にもお見せしたいと思いお渡ししました」
「…それ以外に理由は?」
「特にございません」
「…はなこ、とば…とか」
「もう一度お願いします」
「花言葉…とかは…」
「いえ、詳しくありませんので」
そう答えると少し頬を膨らしてしまった。
「そんなことない…君は植物に詳しいはずだ」
「いえ、花言葉は植物を育てる過程で知る必要はありませんので」
「そうだけどさ…」
「この花は何か素敵な意味があるのですか?」
私は目線を既に飾られている花束に向ける。
「…さ、さあ。どうなんだろうね」
「どこかの地域では記念日に誰かに渡すことがあるらしいです」
「…」
「どうしました?」
「本当に知らないの?」
「はい」
何か悩んでいるのか眉にシワが寄っている。
「…赤いガーベラだよ?」
「はい」
「本当に知らない?結構有名な花言葉だと思うのだけれど…」
「知っているのですか?先程は知らないとおっしゃっていましたが」
そう聞くと更にシワが寄ってしまった。
「…いや、有名な花言葉があることしか分からないんだ」
「そうですか、誤解してしまい申し訳ございません」
「気にしないでくれ…」
どこかホッとしたような顔をするので、つい
「でも気になります。貴方の本当のお気持ちが」
と、つけ足してしまった。
「…えっと…」
「はい」
「…今度でもいいかな。必ず伝えるからさ」
頬がガーベラとお揃いになった貴方に私は微笑んで頷いた。
この作品は2作目です。この「しりとりで題名を決めて書く」シリーズ以外にも他の作品を書いてみようと思います。