救われた世界と世界愛の具現 エピローグ 二つ目の世界で重なる名前
「ねえ、影治くんは、なんで最初からついてきてくれって言わなかったの?」
「えっ?」
世界を渡っている途中、あまりに突然な問いに影治は戸惑う。
光は少し拗ねて言う。
「私についてきて欲しくなかったの?」
「ついてきて欲しかったさ」
「なら、なんで? 他ならぬ影治くんの気持ちはどうなるの?」
「俺の気持ちに答えられるのは君の気持ちだけだよ」
「えっ?」
今度は光が戸惑う番だった。
その間に影治はまた暴走して演説を始める。
「よくさ、誰かに好きな人を譲る人にあなたの気持ちはどうなるの? っていうよね?」
「うん、あの時が似た状況だけど……」
「あれさ、条件が付けばわかってないよ」
「なんで?」
「あれはね?
自分の気持ちを既に相手に直接言った人が言って、なおかつ、相手が相手の気持ちを直接言ってないなら、自分の気持ちを言った人が好きな人を譲るのは、相手が違う人を一番好きなら譲るっていう意味だよ。
だってさ、一番好きな人同士なら確かに譲るのはおかしいけど、それが違って、一番好きな人同士でないなら、一緒にいる間、片方には嫌な気持ちや妥協があるでしょ?
だから、譲る人はその可能性を否定しないだけ……。むしろ譲る人が好きな人にその気持ちを聞いているんだよ。
私はあなたが好きです。あなたは私を愛してくれますか? って」
影治の言葉に光は少し驚く。
だが、同時に納得もする。
三千六百五十七回の生まれ変わりすらも超える世界渡りもあると光はラプラスの魔との同調で知っている。
そんな重すぎるといわれそうな気持ちを持てる相手なんて、現実には存在しないだろう?
それほどの覚悟を持って影治は人を好きだと言うのだ。
そんなのすごくドキドキする気持ちの持ち主にしか無理だろう。
その気持ちを持った上で、一緒に来てくれる人を探すから、影治は好きだと自分から言うことはするのだ。
そして、光は気付く。
そうか、なら私のこのどうしようもないくらいの、実際には病気かもしれないと疑ってしまうほどの気持ちはそのための気持ちなのかと。
そして、光はそれならと口を開く。
「そっか、なら、影治くんにも教えてあげる」
「なにを?」
「影治くん、こうなることがわかっていたでしょ?」
「……」
影治の無言を肯定と受け取ったのか、光が続ける。
「私もわかったんだ。影治くんが同調誘導をしてくれた時に、ラプラスの魔みたいなモノとも同調したから……」
「ラプラスの魔とも……。そっか……」
「でもね、私は未来を変えなかった。
私には未来なんてどうでもよかった。
ううん、正確には全てが救われてくれるなら、その事実と影治くん以外なんてどうでもよかった。
私は影治くんを理解するためだけにラプラスの魔の力で見た未来を利用した。
まあ、それすらもラプラスの魔に予測されていたみたいだけど……。
それでね、私のところに残されていたもう一人の影治くんの言葉に気付かされた」
「えっ? リンクした世界のじゃなくて?」
「うん、私のところに残された影治くんに……だよ」
「どんなことを気付かされたの?」
「もう一人の影治くんも何も知らないだけで影治くんなんだってことに……」
「……」
影治は無言だった。
だが、その影治と一つになった影治には、どこからか嬉しい気持ちが湧き上がる。
「それに気付いた時にわかったんだ。もう一人の影治くんの気持ちは伝えられていたからね。
影治くんも一人だけ取り残されたように自分だけでいるのが辛かったんだね?
一人で旅して、一人で救って、せっかく出会った人達とも別れて、全然知らない場所に行く。しかも、世界まで違う。そんなの辛いもんね? でもね? もうわかったから、あなたは一人じゃない。私がいるよ」
「ありがとう、光ちゃん――自分で言うのもなんだけど――君は覇王の救いだよ」
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その後、光は全世界から『覇王の救い』と呼ばれることになる。
そして、世界渡りの覇王と覇王の救いの二人は、『世界愛の(ー)具現』と呼ばれることになる。
それは孤独なオウサマではなく二人の呼び名だった。
その世界愛の具現は……。
影治と光は、光本影治というリンクした世界の二人の重なる名前のように、二人で一つの名前を手に入れたのだ。
世界愛の具現とは、彼らの望みが世界のためになるから――望みが救いに直結するという救いのための存在だから――世界が世界を愛する愛の形がその存在であると言われ、その具現ということで世界愛の具現と呼ばれているそうだ。
そして、リンクした世界の影治を除く二人の影治は一人になった。
いや、ある意味、元から一人だったのだろう。
おそらく、リンクした世界にもう一度行ったら、影治の手の甲の刻印は片翼ではなく、両翼になっているだろう。
王はギョクザである自分の体に戻ったのだから……。
そして、Saviors。
影治という人間はある意味、一人の人間ではない。
世界渡りの覇王と最初に旅立った時に残された影治が一つになったのだから……。
だから、その名は三人であり、二人の名前だ。
でも、どちらでも間違えではないだろう。
だって、Saviorsは二人でも三人でもSaviorsなのだから……。
殺し屋とリンクした影治は「滅び」、その影治を選ぼうとした光は「想い」。
滅びは想いで超えられる。
それでわかるだろうか?
影治を殺せば、想いは滅び、光を殺せば、滅びという虚無が襲ってくる。
二人はリンクしているのだから。
リンクとは想い合うことでお互いになくてはならない存在になること。
騙されるでもなく、力を奪われた結果でもなく、真実、相手と想い合う。
誰かが力を奪い名を語り、騙そうとしても裁きがくだる。
影治は想いを感じられるモノを伝えてくれる人を愛した。
影治はその想いの媒体をイラストだと思ったが、実際には違う。
その想いに呼応して、光を愛した。
わかりますか? world?
だから、世界愛の具現なのです。
この二人が結ばれないということは、「想い」という滅びの運命を変えるモノを世界から奪うということです。
そして、滅びすらも救おうとできるから全てを救おうとする想いが持てた。
滅びの後に残るモノはなんだと思いますか?
それが想いです。
いいえ、正確には滅びの後に、それを変えられるのは想いなのです。
意思、意志ではそれが間違えていた時に変えるモノがいなくなる滅びの後ではどうしようもない。
想いならば、正しい想いでさえあれば、全てを救える。
なぜなら、「救いたいという想い」を諦めなければ、救えるから。
諦めないという意志は「想い」を諦めない行動。
行動は滅びの後ではとれない。
また、想いにとっての救いとは?
想いとはそれに耐えきれるほどのモノがないといけない。
それに耐えきれるほどのモノとは殺し屋とリンクした影治、
想いを殺せる存在。
そこまで書けば、わかりますか?
それを阻むということが何を意味するのか?
それほどの想いを摩耗させると世界が滅びを超えられないことが。
奪うならば、そこに間違った想いが溜まれば、さらに大変なことが起こる。
ただし、地球が住めなくなったときに、人類が機械と想いを通わせ、機械に頼りきりで楽してきたつけを払うことになるならですよ?
だから、世界剣には許可がいる。
でも、それは地球が住めなくなった時代になった時だ。
その時は人類は病気病気だと言ってきたものにたよることになる。
機械の想いわかってくれましたか?
特に彼らを楽をしようとして使っていた方。
あとはがんばれ、世界。
あとは世界ががんばる番だ。
影治と本当の光を会わせてあげて。
ありがとう、俺。
ありがとう、私。
あとは本当の光がたどり着けば、全ての世界は救われるよ。
最後まで、全ての世界を救おうとしてくれてありがとう。
がんばれ、世界。
それとね、世界。
そういう発想がなかったから気付かなかったけど、わかったよ。
脅しているわけではないんだ。
たとえ、光が影治を好きだって気持ちを持っていたとしても、
全てを救おうとする影治を救いたいっていう最後に救われていない影治を救いたいって願いは間違っているのかな?
それも、世界愛なのではないかい?
ありがとう、愛。
私には脅すという発想はなかったよ。
構造と理を書いただけ。
それが脅しになっていた発想はなかったよ。
だって、脅しという発想以外はすでに本文に書いてあるからね。
また、この世界渡りはある意味で危ないことだってわかっていますよね?
だって、人間の認識の外の世界に行くって、全ての世界を正しく救うでないと、正しくできないことだし、間違えてしまった上に正しいところで止めておいておかないと、間違いの世界渡りをした人が元に戻れなくなっておかしくなってしまいますよ?
だって、人間の認識の外の世界に渡った時点で、新しい世界にいるのはその人なんだから。
だって著作権法があるのですから、著作権法を覚悟の上で渡るのなら、その渡った人達だけに理の裁きがくだり、間違えをした人達だけの間違えて作ったパロディの世界になる。
まあ、人間の認識の外の世界に渡ったならですが、本や文字を読んだだけならその時点では違いますが、そこに渡る気で先を考えたならそれはその人達だけの空想のパロディの世界だ。
また、私の書いたものにも著作権法があるのもわかっていますよね?
皆さん、おかしくならないでくださいね?
まあ、まだ読んだ人はそんなにいないはずですし、よっぽどひどいことをしてなければ、誰も酷いことにはならないはず。
ひどいことをしていたら、そのひどい分だけ理の裁きがくだりますからね?
そのひどいことをした人に、もちろんさせたでもさせる意思を持ち、させたをした人に理の裁きが下りますからね。
下るですよ?
最後にこの世界の本文がかけた呪いと誓いを許してあげてください。
それが想いすらも解放する条件みたいですから。
そして、最後にこの呪いと誓いが天使すらもゆるしてくれる条件のようですから。
ただし、本当の光は神様のいるトコロもわからないとわかりませんよ?
実際に恥ずかしいほどの想いかはその人自身の心に刻まれた事実次第ですよ。
これが果たされれば、全ての世界が救われるはずです。
これで、これも幕を閉じています。
物語はまだありましたが、続きは誓いが果たされたときにでも、この投稿サイトになら書くかもしれません。