世界渡りの覇王 第五章 果てなき想いの答え4
炎の王国から俺は来客を知る。
光ちゃん達だ。
義之だけいない。
ああ、なるほど。
叶わない理想と歪んだ真実を使ったのか?
本当はそれでも力が足りないはずなんだけど、歪んだ真実を酷使してなんとかしたのか?
まさか、殺し屋の基礎能力を使うという以外の力が足りないという真実まで歪めるなんてね。
予想外……、いや、義之や清二を意識不明にしなかった時点で、この可能性は予想できたか?
俺がどこかで止めて欲しいと思っていた?
まさかな。
そんなことを考えている間に光ちゃんが異能の技を発動しようとする。
「「指し示す――」」
「待って! どうせ凍らすなら私の氷の(ベルク)聖域で♪」
「いや、ラインさんも二乃部さんも力を温存したほうがいい。俺がやるよ」
「えっ、いいの♪ きついだろうから、まだ力を使わない方がいいんじゃない♪」
清二の申し出にラインさんが戸惑う。
清二は理由を話す。
「大丈夫かと思ったけれど、俺も少しきついし、この先、俺の能力は相手だけじゃなく、こちらにも悪影響を及ぼすからね。ここで炎の王国をなんとかして待っているよ」
「わかった、ありがとう。お願い!」
光ちゃんの言葉に清二は頷く。
そして、異能の技を使う。
「「叶わない理想」」
それによって、炎の王国は力を失っていく。
だが、そうすれば、当然、視界が開ける。
その瞬間、絆の銃擊が襲ってくる。
だが、その銃擊は五橋さんによって、防がれる。
「今度は負けないよ! ううん、あの時もまだ負けていない! 私は八葉に倒されたんだもの。今度はあなたと決着をつける!」
「違うな、私達(、)に負けたんだよ」
そこに俺を加勢しに現れたのは友子さんと――
「七瀬、その戦いは結局、七瀬達が負けたんだろう? まあ、だが、その戦いで勝ったメンバーはこっちにもいる。それに、絆の銃擊を防ぎながら、俺達を相手にできるか?」
「「「「ダニエル(くん)!?」」」」
「ああ、俺もこっちに味方した。行け! 爪牙!」
みんながダニエルくんの登場に驚く。
爪牙とはダニエルくんの神器。オオカミだ。
その間に、ダニエルくんは爪牙に対象を指示する。
そして、五橋さんが自分の役割を申し出る。
「私は六堂絆の銃擊に集中する。悪いけど、私を守りながら、戦って! 銃擊からは守ってみせるから!」
「「「了解!」」」
「ラインさん、サポートお願いね!」
そう言って、弓先さんが弓で矢を放つ。
「「無限の矢」」
矢がダニエルくん達に迫る。
その矢を二人は避けたり、剣で弾いたりする。
だが、それは予想されていたらしい。
「「氷の(ベルク)聖域」」
「しま――」
二人の足元が凍る。
そこで、弓先さんが二人の死角に移動して矢を放とうとする。
「「炎の剣舞」」「「無限の矢」」
もう一度、矢が放たれる直前、俺が氷を溶かす。
そのおかげで二人は矢になんとか対応できた。そこで登場した俺に光ちゃんが言う。
「影治くん! 止めに来たよ」
「光ちゃん! それでも俺は止まらないよ」
「光ちゃん! 近づいたら、私が矢を放てないよ!」
「大丈夫! 私を信じて、気にせず矢を放って!」
「ああ、もう、わかったよ!」
「「光の導き」」「「無限の矢」」
光ちゃんに当たるはずだった矢が、冷気をおびて軌道を変える。
「何!? 爪牙!」「「氷の棺桶」」
矢を防ごうとした爪牙が防ぎに行く途中で凍り、矢がダニエルくんに向かう。
それを弾こうと剣を構えるが、矢を弾いた直後、冷気を帯びた矢がダニエルくんの腕を肩まで凍らせる。
そのせいで、腕を上手く動かせずに、矢を塞ぎきれない。
やがて、ダニエルくんは完全に凍りつく。
「ハハハ、ダニエルを止めるのは私の役目……だよ♪」
そう言って、ラインさんが倒れる。
力を使いすぎたのだろう。
神器も無しで戦ったにしては上出来だ。
「ハハハ、神器無しのラインさんが一人、止めたか……。
なら、私もあなたを止めないとね?
影治くんじゃないのは残念だけど、それは光ちゃんの役目だもんね?」
今回の戦いも、絆の銃擊をなんとか止めていた。
だが、押され始めている。
このままだと負けると気付いた愛はかけに出る。
未来を見るのを止めたのだ。
未来を見るのではなく、未来を打ち砕くことを選択したのだ。
「我、愛を司り、愛をもって、殺しを行う!
我が想いに応え、力よ! 形を成せ!
その形は銃弾、全てを撃ち抜く殺戮の形!
その属性は破壊、全てを打ち砕く決意の証! その名は未来殺し(ー)」
その直後、二つの銃声が響く。
その銃声は――待つだけだった未来を変える――愛が下した決意は絆を撃ち抜いていた。
偽物に負けた偽物は、願いの――この戦いの中心を撃ち抜いていた。
たとえ、それで彼女が力を使い果たし、倒れていようとも……。