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キラーズ  作者: 光坂 影介
世界渡りの覇王 第四章 別れた道
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世界渡りの覇王 第四章 別れた道2


 数日後、俺は六堂絆の行動の理由を知るために、県立の図書館に来ていた。

 殺し屋のことを調べたいと先生に言ったら、ここに殺し屋に関して調べることのできる部屋があるらしいと聞いたのだ。

 そして、受付に先生に言われたように『Kの担当者をお願いします』と言うと、責任者が来て、イベントスペースに通された。

「では、神器形成をして見せてください」

「えっ?」

「すみません、できませんか?

 できる方でないとお通しできませんし、できない方にはここにその話をしに来ればいいことさえ知らされないはずなんですが……」

「ああ、すみません、できます。見せればいいだけですか? その……、性能を確かめたりとかは?」

「いえ、見せていただければ結構です」

 なら、焔火だけで双焔火じゃなくていいか?

 俺は殺し屋を呼び、神器形成の言葉を唱える。

「我、心の光をもって、心の影を殺す!

 我が想いに応え、力よ、形を成せ!

 その形は剣、全てを切り裂く断罪の形!

 その属性は炎、全てを焼き尽くす、情熱の顕現! その名は焔火! 神器形成、焔火!」

 きちんと、焔火が具現化する。

「はい、結構です。

では、写真を撮らせてください。

 利用カードを作ります。カードができましたら、イベントスペースのこのカードリーダーで読み込めば、地下に行けます。

 そこに検索施設とカフェがあります。殺し屋の他人には聞かれたくない話などをする時にもご利用できます。

 政府の支援があるので、地下のカフェのメニューは無料(タダ)です。

 しかし、地上のカフェは有料ですのでお気を付けください。

 今、ちょうど、一人、来ているところなのですが、揉め事はお控えください。では少々お待ちください」

 写真を撮り、しばらくして、カードを受け取り、言われた通りに地下へ行き、無料なら寄ろうかなと思ってカフェを覗くと、そこには七瀬(ななせ)友子(ともこ)――ついこの前、戦った友情の殺し屋がいた。


「一琉影治?」

「七瀬友子……か? ……ちょうどいい。少し……話をしないか?」

 俺は気付いたら、そう提案していた。

 自分で自分の言葉に驚いた。

 こんな奴らと――ダニエルくん達を意識不明にしたような奴らと何を話すんだ?

 ダニエルくん達が、まだ目覚めていなかったら、そう思っていたのかもしれない。

 けれど、俺にはこいつらがそんなに悪いヤツに思えなかった。

「ダニエル達を意識不明にした私と話をすることがあるのかい?」

「意識不明にしたのは六堂絆だろ? それに今の俺には――」

 俺が続きを口にする前に七瀬友子がそれを遮って言う。

「ふん、何もわかっていないね。話をするだけ無駄ではないかい?」

「きちんと、最後まで聞けよ。今の俺には六堂絆さえ完全には憎めない。六堂絆の行動にも理由があったんじゃないかと思っている」

「へえ、少しはわかっているみたいじゃないか……」

「じゃあ、やっぱり理由があるのか?」

 俺はそれをすがるように聞いてしまった。

 自分の気持ちがわからなかった。

 ダニエルくんに六堂絆を許さないで欲しいと思っていたかもしれないのと矛盾する。

 俺は六堂絆の行動に理由があってほしいのか?

 もしかしたら俺は全ての人間が根はイイやつだと思いたいのかもしれない。

 だからハジマリの気持ちは罪じゃないと思い、弱さや悲しみ、諦めが――人の心に潜む影が悪いことをさせてしまうのだと思うのか?

 だって、そうだろう?

 人が嬉しいと思ったりする裏には、代わりに悲しいと思う人もいるのだ。

 嬉しいという光の感情の裏には、悲しいという影の感情がある。

 勝負事や競争ならそういうことがあって当然だ。

 だが、こうも思う。

 だからと言って、自分の中の正しさを裏切るのはしていいことではない。

 それは自分すらも納得できない悪なのだから……。

そうか、それが心の影だな?

 悲しさやそれと似た感情自体は決して心の影ではない。

 それは自分を高める想いにもなりうる。

 悲しければこんな想いを他の人に味わって欲しくないと思い、優しくなれる。

 悔しければ、もうこんな想いを味わいたくないと思い、努力できる。

 だから、俺が殺している心の影は自分の中の正しさを裏切ろうとする意思なんだな。

 そう、感情は感じて、そこで終わりじゃない。

 その感情は次に何かをするエネルギーになる。

 そのエネルギーをいい方向に使えば、悪に染まらずに何かを変えるという『悪になるより難しいこと』ができる。

「なるほど。少し足りないよ。至っていない。あと一歩だ。悪い事をする人の心理には一歩足りない」

「えっ? 今、声に出していたか?」

「まあな。私にはわかるんだよ。なあ、わからないか?

 本当に私は――いや、私が間違えていても絆は――本当に間違えていたのか?」

「えっ、ああ、なるほど。

 そうか、間違えていた人の中には、こんな悲しい思いをしなくてはならない世界が間違えていると思う人がいるのか……。

 そして、間違えた世界に罰を与えようとする……か?

 だけどさ、友情の殺し屋。罰は世界が悪だと認めてから与えるべきなんだ。

 だから、この世界には裁判がある。誰から見ても、その時点で悪だと思う人にもすぐには罰を与えない。

 相手が間違っているなら――相手が悪なら論破できるはずだから……。世界に悪だと認めさせられるはずだから……。だからさ」

「そうだな。それもあるかもしれない。だが、こうするしかなかったらどうだ?」

「そうする以外の方法を世界と一緒に――」

『そうする以外の方法を世界と一緒に考えるんだ。世界に救いを求めるんだ』

 その言葉は俺の口から出せなかった。

 だから、友情の殺し屋はそれを選べなかった。

 それは罪なんだろうか? それを知らずに――その方法を知らずに悪に走ることは罪なのかもしれない。世界はそう判断しているのだろう?

『無知は罪だ』とそう言う人もいるけれど、知る力がないことを――選べる強さがないことを罪だとすることは俺にはできない。

 だから、どうにかする方法を広めるべきだ。そして、それをまずは友情の殺し屋に――だが――

 それを遮る衝撃の言葉が俺を動かす。


「私はね? 殺し屋なんだよ」


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