世界渡りの覇王 第三章 二魂剣8
「それじゃあ、ダニエルくんとラインさんを元に戻してくれ」
「それと八葉ちゃんの愛ちゃんに対する友情もね」
「待て! 八葉のもか……と言おうと思ったが、もう共闘は無理だろう。戻していいぞ、友子。いや、戻してやってくれ」
六堂絆がダニエルくんとラインさんの頭に手をかざし、七瀬友子が弓先さんの頭に手をかざす。
少し二人の手が光り、まずは弓先さんが目を開ける。
「八葉、今までごめんね。九重くんも待っているんだよ。これから、また三人で遊べるよね?」
「うん、愛。また一緒に三人で……」
弓先さんは五橋さんの手を握り、答える。
そうしたら光ちゃんが口を挟む。
「でもさ、たまには私達も混ぜてね!」
「「うん、大歓迎だよ。光ちゃん」」
その返事にしばらく聞いていなかった声が混ざる。
「フフフ、なら、私達も混ぜて欲しいな♪」
「私達って、俺もかよ。ライン?」
「当然だよ♪ ダニエルと一緒じゃないなんてありえないもん♪」
「ハハハ、私達も当然だよ。言ったでしょ? 私・た・ちって! おかえり、二人とも」
「フフフ、ありがとう♪ 光ちゃん♪ ただいま♪」
「えっ? じゃあ、俺も? 多すぎない?」
「当然だよ。影治くんと一緒じゃないなんてありえないもん」
「あ~、光ちゃんが私のマネした~♪」
笑い声が満ちる。
その笑い声は世界を分離してまで取り戻したかったモノだった。
「愛情を思い出したんだな? 二乃部は……」
「ああ、うん、そっか、あれから、ずっと意識不明だったんだもんね? 知らないか? あれからいろんなことがあったよ」
ダニエルくん達は、光ちゃんが五橋さんに愛情を忘れさせられてしまって、思い出してもらおうといろいろしている時に意識不明になってしまった。
けれど、そのダニエルくん達を助けようとして、光ちゃんは愛情を思い出したと相棒は言っていた。
これもまた、この世界の救いだったのかもしれない。
ダニエルくん達が意識不明になったことで、光ちゃんが愛情を思い出した。
それが必要なことだったなら救いになるだろう?
起こってしまった悪い事はイイことにすることで悪い想いをイイ想いに変えられる。
それが過去を許す方法の一つなのだろう?
俺はそれしか過去を許す方法を知らない。
(相棒、六堂絆が行ったことも過去だ。もう一度、考えれば許せるかもしれないぞ?)
「なっ!?」
「どうした? 一琉?」
だが、そうだ。
どんな人も始めは悪い事をしようとして何かを始めるんじゃない。
どんなに悪人でも、それによって自分が得をしたいから何かを始めるんだ。
そう、最悪、相手を痛めつけることで自分が嬉しいとかでも、自分が嬉しい想いをしたくて始めるのだ。
俺いわく、ハジマリの気持ちは罪じゃない。
相手に悪い影響を与えることをせずに、目的を達成することを諦める。つまり、相手に自分の中の正しさを裏切るほどの悪影響を与えることを選ぶ。これが罪になるのだ。
だから、六堂絆のハジマリの気持ちを知ろう。
悪役さえも幸せになることを諦めない。
そんなハッピーエンドを目指そう。
「はあ~、そうだね?
ダニエルくんに話してみれば過去を許せるかもしれない。
ダニエルくん、聞いてくれる。君達を意識不明にしたのは……」
俺は、そこでダニエルくんが激怒して六堂絆を許さないという返答を期待していたのだろうか?
だが――
「六堂絆の行動にも理由があるんじゃないか?」
この言葉が消えることはなかった。