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キラーズ  作者: 光坂 影介
世界渡りの覇王 プロローグ 真実の物語
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世界渡りの覇王 序章2


 影治くんは、あれから執筆に夢中なのか、訓練には出てこなかった。

といっても、家に帰ったわけじゃなく、普通の合宿の時と同じように学院の施設に泊まっているので、食事の時などは一緒だ。

今は執筆も大分進んで、訓練にも少し出られそうだと言っていた。

実は、影治くんへの愛情を思い出した私――二乃部光は少し寂しかったので、出られそうだと聞いて嬉しかった。

今は、(つき)(しろ)くんと()(むら)くんと三人で順番に組手(くみて)のようなことをしていた。

影治くんが訓練に出られないからというのもあるが、それぞれ相手をする時に目的があった。


私がどちらと訓練する時も、それぞれの異能の技を使った場合を想定した時の訓練だ。

異能の技の無効化という異能の技を使う月城くん。

月城くんが相手の時は殺し屋の力でブーストした身体能力だけで訓練した。

身体能力の低下という異能の技を使う火村くん。

火村くんが相手の時は異能の技だけを使って訓練した。

というのも、月城くんも火村くんもそれぞれの異能の技を使う時は、それぞれが味方の時も敵の時も技の影響が出るだ。

 月城くんと火村くんが訓練するときは、それこそ身体能力での戦闘がメインになるのでその訓練をしていた。

 訓練の成果は出てきていると思うけれど、私はそんなことよりも影治くんがいつ来るか気になってそわそわしていた。

 (さいわ)い、月城くんと火村くんが訓練しているときだったので訓練に影響はない。

いや、自分でそう思っているだけで、少し影響があったかもしれないが大丈夫だ。……多分。

 月城くんと火村くんの訓練の最中(さいちゅう)に影治くんが訓練に顔を出しに来た。

「「「影治くん」」」

 月城くんと火村くんと共に駆け寄る。

「義之と清二は訓練を続けていろよ。執筆のきりが付いただけで特別なことはないから……」

「二乃部さんと二人きりになりたいだけじゃないのか?」

 火村くんがそう言うが、影治くんが即答する。

「近くで訓練をしているんだから二人きりじゃないだろう?」

「ハハ、そうだな。まあ、せっかく愛情を思い出したんだ。少しくらいイチャついていても許すさ」

 火村くんがらしくないことを言った。

 どうやら火村くんは私に少なからず好意を持ってくれているらしいのだ。

 月城くんが続ける。

「それにしても、すっかり小説家気取りだな?」

「否定はしないけどな。二人を助けるためだ」

 そんな風に言葉を交わした後、火村くんと月城くんは訓練に戻る。


          ###



 二人が訓練を再開し、光ちゃんが話しかけてくる。

「影治くん、ありがとうね」

「? 何が?」

「愛情を思い出させてくれて……」

 そんなことを言われると思っていなかったので驚く。

 正確にはずっと感じていた罪悪感をゆるされたように感じた。

 光ちゃんに愛情を思い出してもらうことは、ある意味、自分が光ちゃんに好かれたいだけで俺のわがままなのではないかと思っていたからだ。

 だから、お礼を言ってもらって嬉しかった。

 自分は間違ってなかったと言ってもらった気がしたからだ。

「でも、なんであのタイミングで思い出したの?」

「愛情を思い出しかけた時に他のことを聞かれなかったからかな?」

「えっ?」

 意外な答えに驚く。

どういうことだ?

 ああ、そういえば、たしか‥‥

「ほら、影治くんの力を思い出す時も、時間がかかるから静かにするように言ったでしょ? 

あれ、私がそうだったからだよ。

あの時まで自分の思考に入っている時に、質問されて現実に戻されていたから、深く考えられなくて……」

 そういえば、あの時はダークくん達のことが衝撃的すぎて、誰も光ちゃんの言葉の意味を聞かなかったな。

 そうか、そんなことで……。

「じゃあ、ある意味、ダークくん達のおかげだね? 助けなくちゃいけない理由が増えたね?」

「そうだね。あとね、影治くんに頼られることも嬉しいんだ」

「まあ、始めはみんなに言うつもりはなかったけどね……」

「でも、私には言ってくれるつもりだったんでしょ?」

 覚えていたか……。

「殺し屋のことも私のかけがえのない記憶だからね。それに殺し屋のことがなかったら、影治くんと結ばれなかったかもしれないし……。そういえば、フィクションにできたら、卓球部とか、殺し屋のことで変わった関係とかはどうなるんだろうね?」

「どうだろうね? そこまではわからなかったな……」

「わかりたいと強く思えばわかるんじゃない?」

 たしかにわかるかもしれない。

 でも、俺はそうしたくなかった。

「やらないよ。そうしたいと思ってないから無理だと思う」

「なんで?」

「それを知っても、知ることでためらいが生まれるかもしれない。

 それに、それを知っても、やることは変わらないしね」

「そっか、でもね。

 私はそれを聞かなくても、ためらう理由があるんだ」

「へえ、どんな理由?」

「それを聞いて、影治くんにためらいが生まれるかもしれないとは思わないの?」

 少し考えて、答える。

「そうかもしれない。

 でも、光ちゃんのためらいを失くせる可能性があるならそっちを選ぶよ」

「あのコ、五橋愛さんに悪いかなって……」

 そうか、そんなことを……。

 そこで、彼女が記憶を失くす例外になることを喜ばないのは光ちゃんらしいなと思った。

「そう思うのは失礼だよ。俺が選んで、光ちゃんに教えたのにそれによって生じる違いを否定するのは……」

「そうかな? 私、ずるい女になってない?」

「なってないよ。大丈夫」

 そこで義之と清二の訓練が終わったらしい。

「お~い、次は影治達も混ざるか~?」

 混ざると言おうとしたところで事態が動いた。


 殺し屋の声が言う。

「これより重大な発表をする。こころして聞いてくれ」

 そういって少し間があく。聞く準備をするのを待っているのだろう?

「影治くん、これって?」

 光ちゃんの言葉に頷いて返す。

「これより後、殺し屋の力による大規模な戦いを行う。

 戦いといっても今までと同じように何回か試合をする程度だ。

 我々、殺し屋はその戦いで勝利した者の願いを叶えようと思う。

 より大きな力を望むも良し、特殊な能力を望むも良し、莫大(ばくだい)な富を望むも良し、我らの力でどんなことでも叶えよう。

 ただし、この戦いにおいて殺した想いは返すこと、また卑怯なことは禁止だということを条件とする。

 この条件は願いを叶えるために必要なことだ」

「なるほど、うまくやったな、影治」

 清二がそう口を挟む。

 殺し屋の声は続きを言う。

「というのも、願いを叶えるために戦いを行うのは、より純粋で強い願いを見極めるためだ。

 この先ほど提示した条件を無しに自分達の願いがそのような願いだと言えるものはいないだろう? 

 ある意味、その純粋で強い願いは殺し屋と共に歩むものが自分達の願いがそういうものだと証明することで自然に叶うのだ。

 以後、この戦いのことは原則的に『想いぶつかる時』と表現してほしい。詳しいことは後日、伝えよう。では健闘を祈る」

 殺し屋の声の言葉が終わると義之が言う。

「これでフィクションにするのを失敗しても俺達が絆の殺し屋に勝てばいいわけか?」

「それに、これなら、私達が負けた時のリスクも少ないね」

 光ちゃんの言葉に俺が続ける。

「それだけじゃない。これなら少なくとも、願いが叶うまでは卑怯なことや危険なこと、純粋ではないと判断されることはしないだろう?」

「ハハハ、なるほどな? じゃあ、特に願いを持たずに、フィクションにしようとしつつ、絆の殺し屋に勝とうとすればいいわけだ」

「だね? まあ、個人で願いを持つのは止めないけど…」

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