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キラーズ  作者: 光坂 影介
世界渡りの覇王 第二章 世界渡りの覇王
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世界渡りの覇王 第二章 世界渡りの覇王3

俺達はお見舞い相手の部屋が変わってないことを確認していた清二、義之、五橋さんと合流して、病室を目指す。

「「影治くん、光ちゃん、月城くん火村くん、愛!(♪)」」

「やあ、ダークくん、ライトさん。お見舞いに来たよ」


!!! ダニエルくんにラインさん!

この世界だと名前は違うけど、無事なんだ!?

というか、そのために世界を分離したんだよな?

よかった。二人は助けようと思えば、助かるんだ!


俺達の世界でも助けよう! 絶対に!

二人が無事な様子を見て、嬉しくて興奮していた俺は、本来の俺達が話しているのを聞いていなかった。だがその間に落ち着いた。

これが、六堂絆が言っていたヒントの『名前』の答えか?

まあ、いい。

情報収集をしよう。

落ち着いた俺は、会話に耳を傾けた。

「病院が変わっていたから、道を調べ直さなくてはいけなくて、少し大変だったよ」

「ん? 変わってないぞ? それに病室が変わったならわかるが、病院が変わることなんて滅多にないだろう?」

 本来の俺の言葉にダニ――じゃなかったダークくんが疑問を感じる。

 それに清二がフォローする。

「いや、影治は違う病院に入院している知り合いと間違えたんだ。そっちにも頻繁に行ってるから道を調べ直さないと思い出せなくて……」

 義之も小声で俺に言ってくる。

「ダークさん達は殺し屋の世界を覚えてないんだろう? 無駄な心配をかけないように気を付けろよな」

「ああ、悪い」

 なるほど。そういえばダニエルくん達が入院している病院はこことは違う病院だ。

 恐らく、殺し屋の力が関係しているせいか、昏睡状態だったせいかで別の病院だったんだろう?

 それで殺し屋の力がなくなった世界では病院が違うと……。

「あとどのくらいで退院できるの?」

 光ちゃんが聞く。

「えっとね、もうすぐだよ♪」

「もうすぐじゃわからないだろう。

と言っても本当にもうすぐとしか言えないんだが……。

なんか急に、どこにも問題がない健康体になったから、検査をして何も無ければ退院だそうだ」

「ほんと? よかったじゃない? なら、またみんなで……みんなで……」

五橋さんが話の途中でつっかえる。

みんなでの後に続く言葉を探して――いや、思い出しているのだろう?

 本当ならみんなで殺し屋の訓練と言おうとしたんだろうが……。

様子を見ていると五橋さんは実際には殺し屋の世界を覚えていないのだろう?

「遊ぼうでいいんじゃない? 愛ちゃん?

 それとも勉強?

 まじめだね~」

「違うよ。試合の練習……がしっくりくるかな?

 でも、なんの試合だっけ?

 思い出せないんだよね……」

 そう言う五橋さんはどこか寂しそうだった。

 その雰囲気につられて、みんなに少し悲しそうな沈黙が訪れる。

 そんな沈黙にしてしまったことに責任を感じたのか、また五橋さんが口を開く。

「もう、私だけ学校が違うから肩身が狭かったんだよね。

 早く退院して、みんなで遊ぼうね!」

「ハハハ、そうだな」

 その言葉に応じて、答えるダークくんや、それを聞いているライトさんもどこか寂しそうだった。

 いや、俺がそう見えるだけか?

 俺が殺し屋の世界に生きているから……。

 俺の世界が否定されている気がして……。

 この世界は幸せなのか?

 自分の意思とは関係なく、殺し屋から離された人がいるこの世界は……。

 正しいのか?

 俺はそんな疑問がずっと頭の中に残っていた。


 お見舞いを終え、みんながばらばらに帰って行く中、俺と光ちゃんは自然と二人きりになった。

 といっても、みんなが普通に帰る中、本来の俺も考え事をしているみたいで足取りが重く、それを心配してくれたらしい光ちゃんもすぐには帰らなかっただけなのだが……。

「どうしたの? 影治くん?

 考え事?」

「えっ、あっ、うん。

 あのさ、俺達がしたことって本当によかったのかな?」

「どうして?

 ライトさん達が助かったじゃない?」

「そうなんだけど……ね。ダークくん達がどこか寂しそうに見えて……」

「寂しそう?

 ……そういえば、ライトさん達って、この後、どうするのかな?」

「この後?」

 俺は疑問を口に出した。

 本来の俺はわからなかったのかもしれない。

 きっと、ダークくん達が助かったことで頭の中がいっぱいだったのだろう?

「そう、退院した後」

「えっ、それは……」

「国に……ドイツに帰っちゃうのかな?

 だとしたら、だから寂しかったんじゃない?」

「そうかな? でもね?

 それだけじゃないんだ。

 俺達がしたことは正しかったのかなって……」

 俺は口に出しながら驚愕した。

 そうか、コイツも同じことを考えていたのか?

「正しい……でしょ?

 二人を救ったんだよ!

 それに殺し屋の力で不幸になるかもしれない危険な世界を救ったんだよ!」

 光ちゃんの返事はどこか必死だった。

 でも、俺は続ける。

「自分の意思とは無関係に殺し屋と離されて幸せだったのかな?

 たとえ、危険でも、そこに大切な何かがあるなら、幸せだったんじゃないかな?」

「影治くんは! 私が! 私が……」

 光ちゃんの叫びは俺の考えを変えるのには至っていないらしい。

 俺は言葉を続ける。

「あの世界で俺達はもう少し頑張るべきだったんじゃないかな?

 殺し屋を――あの世界を――見捨てず、頑張るべきだったんじゃないかな?」

「影治くんは、私にそんな罪悪感を抱きながら、世界を危険にさらした罪を背負いながら生きろって言うの!?」

「でもさ、ダークくんだけじゃなくて、殺し屋の記憶を持ったままでいられる可能性のあった五橋さんまで――」

「また、愛ちゃん!?

 影治くんはまだ愛ちゃんのこと! 忘れてないんじゃないの!

 影治くんのバカ!」

 光ちゃんはそう言って走り去る。

 俺は戸惑いながらも、追いかける。

「光ちゃん! えっ、なんで!?」

 光ちゃんも自転車に乗らず、走って行ったから、すぐ追いつけるだろうが、コイツは多分、わかっていない。

 光ちゃんは多分、あのメールの言葉を待っているんだ。


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