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キラーズ  作者: 光坂 影介
世界渡りの覇王 第二章 世界渡りの覇王
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世界渡りの覇王 第二章 世界渡りの覇王2

翌日、俺の体は――いや『俺は』でいいだろう――そう、俺は病院に向かっているようだった。

 実際に向かっているのかはわからないが、出掛ける前に光ちゃんと清二(せいじ)義之(よしゆき)(いつつ)(ばし)さんに、病院にお見舞いに行こうと電話していたので間違いないだろう。

「影治くん!」

「えっ?」

 そう言いながら振り返る。

 女性の声だ。けれど、振り返ると俺のことをそう呼ぶ女性ではなかった。

「五橋さん!?」

「うん? そうだよ。私だよ? どうしたの? 驚いて?」

「五橋さんって俺のこと、そう呼んでいたっけ?」

 俺が思ったことを聞いてくれた。

 俺の思考が影響しているのかな?

「えっ? うん? まあ、呼んでいたと思うけど…」

 あれ? ……ああ、これが六堂(りくどう)(きずな)の言っていたヒントの『呼び方』の答えか?

「フィクションにする時に絡んでいたのかな?」

「フィクションにする時?」

「あっ、いや、なんでもないよ」

 慌てて返答する俺。

 やばい、これは俺の思考が影響している可能性が大だ。

 でも、あれ? なんで、五橋さんがフィクションにする能力を知らないんだ?

 知らされていなかったから、関わっていなかったのか?

 いや、そう考えるのは、まだ早い!

 なんとか聞いてくれ!

 そんなことを思っていると、コイツ(本来の一琉影治)の思考が流れ込んできた。

(おっと、いけない、いけない。能力のことを知らない人の方が、フィクションにする条件を満たしやすいから同好会のみんな以外にはあまり言ってないんだった)

 なるほど。って、今、よく考えたら、能力のことを聞いて、五橋さんが知らなかったら、混乱するところだった。危ない、危ない。


 その後、五橋さんと病院に向かった。

 病院の入口には光ちゃん、清二、義之が居た。

「あ~、影治くん、(あい)ちゃんと来てる! 浮気だ!」

 あっ、確かに……。

 五橋さんは中学の時に同じ学校だったので、家が近いのだ。

 それに対して、光ちゃんは高校の部活で知り合ったので、家が五橋さんの家と比べて遠い。

 というか、この病院のすぐ近く……だと思う。

 地名は病院と同じはず……。

 実は光ちゃんの家に行ったことがないからよく知らない。

 部活に入る時の自己紹介で、何処の中学校の出身かを聞いた程度だ。

「違うよ。それに、光ちゃんだって、清二や義之と一緒でしょ?」

「私達はそれぞれでここに来て、待っていただけだよ。それに私達と影治くん達だと関係性が違う。影治くんと愛ちゃんは昔、好きだった人でしょ?」

 やばい、嫉妬してる光ちゃん、かわいい。

「私はまだ、諦めてないけどね」

(やばい、嫉妬してる光ちゃん、かわいい)

 おっ、うんうん、お前もそう思うか、俺?

 何を考えてるんだろう? 俺なら当たり前か。

「ちょっと、愛ちゃん! 影治くん、なんか言ってあげてよ!」

 光ちゃんの声で我に返り、俺は慌てて口を開く。

「えっ、あっ、うん、ごめん、光ちゃん!」

「えっ?」

「おっ、なんだ? 影治、五橋さんの方がよくなったのか?」

「何を言ってんだ! 義之!」

 義之の言葉に清二が言う。

 そんなやり取りをしていると光ちゃんが泣きそうになってきた。

「えっ、なに? どうしたの? 光ちゃん!」

 俺の言葉に清二がやれやれといった感じで言う。

「はあ、影治。

 お前、五橋さんの言葉、聞いてなかっただろう? 何を考えてたんだ?」

「五橋さんの言葉? いや、ただ嫉妬してる光ちゃんがかわいいなと……」

「だってさ、二乃部(にのべ)さん」

「ほんとに?」

「本当だよ。こんなことで嘘つかないよ」

 いや、浮気どうこうに関するなら、俺は嘘をつかなくても普通の人ならつくこともあるだろう。

 そんな、俺の思考を読んだのか義之が言う。

「いや、浮気どうこうに関するなら、お前は嘘をつかなくても普通の人ならつくこともあるだろう?

 まあ、お前が普通じゃないならそうだろうが……」

「義之、二乃部さんが泣きそうだからやめろ」

 清二の言葉で義之が光ちゃんを見る。

 そして慌てる。

「二乃部さん! 違う、違う! 影治のことなんかで泣かないで!

 あの、その、え~と。こら、影治! 泣かすな!」

「いや、お前の言葉で泣きそうなんだろ」

 同感だったが、お前も悪いぞ。俺。

 俺もなんで泣きそうなのかはわからないけれど……。

「はあ、影治も悪い! まあ、現状を理解したなら行くぞ、義之。あっ、五橋さんも。

 影治は少しフォローしとけ!」

 そう言って清二は二人を連れて病院に入っていく。

 三人が病院に入り終わるのを見届けると、光ちゃんは言ってくる。

「影治くん、ほんとに私が……その……」

「かわいいと思っただけだよ。光ちゃん」

「そ、そう、よかった。って、そんなこと言っても騙されないんだからね!」

「わっ、ツンデレだ。いや、デレてからだから、デレツン?」

「も、もう、だから、そんなのじゃないって!」

「ハハハ、ところで五橋さんは、なんて言ったの?」

「『私はまだ、諦めてないけどね』だって」

「ふ~ん」

 なんだ、なるほど。

 それで、光ちゃんに謝ったら、光ちゃんとの関係を無しにして、五橋さんと付き合おうとしてるようにも思えるか……。

 そういう意味でのふ~んだったが、光ちゃんはご不満のようだった。

「あまり、驚かないね。やっぱり、聞いてたんじゃないの?」

「いや、流れがわかっただけだよ。それより、いつから五橋さんのこと、名前で呼びようになったの?」

「気になるんだ、愛ちゃんのこと」

「いや、光ちゃんのことでしょ?」

「ふんだ! 教えてあげない!」

 やばい、かわいい。(やばい、かわいい)「ほら、行こう!」

 光ちゃんが手を差し伸べてくる。(ああ、行こうってことか?)

(また、聞き逃してたのかも……一応、謝っておこう)

「えっ、あっ、うん、ごめん。行こう」

「なんで謝るの?」

 少し怒っている。

 光ちゃんはお気に召さなかったらしい。

「なんで……でしょう? まあ、行こう」

 聞いてなかったと言いたくないのだろう。

 俺はそう言って、光ちゃんの手を取り、今度は俺が入口に向けて引っ張る。


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