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99.


「お兄さん、ユナさん敵の位置が分かったってのは、どういう事ですか?」


「敵が密集してる位置、まぁ本隊って言ったほうが良いのか?」


「そうね、敵のアジトよ、拠点よ。」


「それで、それは一体どっちなんですか?」


 俺とユナさんは目を合わせ同時に。


「「あっち!」」


「あれ‥」

「ちょッ、え?」


 俺とユナさんが指を指した方向が違った。

 それも綺麗に逆である。


「お兄さん?ユナさん?」


「ユナさんこっちでしょ!」

「いやいや、トキヤさんだっておかしいでしょ、明らかにこっちよ!」


 2人の意見が綺麗に食い違い。

 お互い引く気は無かった。


「だって、敵がこっちの方が多かったです。」

「それを言うならこっちの方が奥まで敵の気配があるのに、無視するのは違うわよ。」


「それは奥の方に居る、この隊列の奴らの可能性だってあるじゃないですか、それに比べてこっちならその可能性はありません!」

「だからって敵がちょっと多いって理由でそっちを本陣と決めつけるには、根拠としては弱いわよ。」


「敵の数、それと方向、今はこの2つがあれば十分じゃないですか?」

「こっちも同じよ、敵の総合的な数では多くて、私の勘の2つで十分よ。」


「感ですか?」

「そうよ、女の勘は当たるのよ。ねぇ皆?」


「グッ‥‥」


 せこい。

 何たる卑怯な手を。

 この場でそれを言われたら男性の俺に味方は居ないじゃ無いか。


「ユウカ~」

「お兄さん、こっちにしましょ!」


「な‥・・」


 裏切られた。

 何故だ!

 それに他の皆を見ても、目すら合わせてくれない。

 やはり同じ性別の人を優先してしまうのか。


 いや、単純に皆もあっちだと思ってるのか?

 それなら俺だけ選択肢が違う事になる。

 それは9分の1であり。

 ハズレでの可能性が高いじゃないか。


「みんな、そうかよ。そうか、良いだろならそっちに行こうじゃないか!」


 もう成るように成れだ。


 それから隊列を追うのを止め。

 俺以外が賛成である北に進路を変えて進んだ。

 今通ってた道よりは少し狭く。

 車がギリギリ2台通れるかぐらいの道だ。


 そんな住宅街の道を進み。

 勿論直ぐにゴブリンに会うことは無い。

 そして数百メートル程進んでゴブリンと遭遇するが。

 その数は小規模で20匹程であった。


「よ~し・・・・」


 俺は少し殴ってゴブリンを殺そうと考える。

 勿論ちょっとした気分解消だ。

 しかし最後尾の俺よりも先に皆が走りだし戦闘を始めた。

 ユナさんが一瞬して数匹倒し。

 モモカやアイがそれに続く速度で倒す。

 

 その為俺が2秒程遅れた今から行こうにも。

 戦闘に介入できる余地が微塵も無かった。

 他の皆も戦闘しており。

 リカも楽しそうにシャボン玉爆弾を使い。

 ヒヨリさんがカバーしながらハルさんも戦い。

 マユリも火で敵の丸焼きを作っていた。

 広場じゃなく只の道路では強引に突破しない限りは無理そうだった。


「みんな、おつかれぇ~ははっは‥・・」


「やりました!お兄さん、私5匹も倒しました。」


「おぉ、凄いぞ、流石だ。」


 本当に凄い。

 あの敵を奪い合うような状況で四分の一を倒してる。

 そして当たり前の様に俺に褒めてもらいに来た。

 本当に色々流石である。


「2人とも行くよ。」


「おう。」


 俺とユウカの2人が合流してまた進み出す。

 そしてまた同じ様な間隔で的に出くわす。

 あれ。

 何で居るの?

 不自然すぎない?


 そんな事を考えてたらまた敵が倒され出番はなく。

 また進み始める。


 敵は俺達を見てたんだよな?

 だから人質の種類を変えた筈だ。

 元々後追いで向かってた可能性もあるが。


 でも何らかの対応をしたと見るのは当然だろ。

 なら向かう先が拠点とかなら簡単に通すのだろうか。

 どちらにせよ罠な気がしてきたな。

 

 この感覚スキルだ。

 行ってはいけないと告げている。

 俺はもうユナさんの時の過ちからスキルには従うと決めてるのだ。


「ちょ、皆待って。」


「お兄さん、どうしました。」


「あぁこのまま行くのは良くないと、スキルが教えてくれてるんだ。」


「だから止まってどうするのよ。」


「行って近づけば、状況も分かると思うよ?」


 待ってマユリまで?

 何か皆ノリノリ過ぎない?

 だってさっきハルさんも戦闘して――


「え、」


「お兄さん?」


 そうだよ。

 今まで戦闘すらした事無かったよね?

 なのにどして戦闘してるん?


「あっ‥」


 俺はまた微かに声を出す。

 それは思考からくるものではなく。

 俺の方足の感覚が無くなり何故か倒れたからだ。

 まるでよって足を滑らせたけど反応してない感じ。


 そのまま側面を地面にぶつける。


「お兄さん!」


 ユウカが俺を咄嗟に起き上がらせ。

 上半身が持ち上がった事で足を見る事が出来た。

 そして左足には綺麗に穴が空いており血を流していた。

 よく見れば半透明の棒の様な物体があるのが分かった。


「や…‥」

 

 あれ、声が、出ない。

 それに身体が、動きづらい。

 やばい。

 麻痺だ。


 何で矢の接近に反応出来なかったんだろう。

 矢が透明だからか?

 これは一本だけ、ならまだ良い。

 けど複数持ってるなら皆が‥


「皆敵よッ!」


 ユナさんが叫んでいた。

 そして次々に四方八方からゴブリンが急に姿を現し。

 スキルにも急に反応を示す。

 つまり敵も、潜伏か。

 それに類似するスキルを使ってたのか。


 まじかよ。

 何で、ゴブリンなのに‥立派な作戦何だよ。

 せめて、待ち伏せだけなら良いのに。

 更に潜伏スキルも使うか。


 そして他に矢を使わない事から。

 この矢は一本しか無く。

 初手で的確に俺を狙ったのか。


「ゅ‥‥」


 ダメだ。

 声が出ねぇ。



 

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