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97.


 俺の願いはいとも簡単に消え去った。

 


「子供まで‥‥」


 後方から追ってきたゴブリンに引きずられてたのは子供だった。

 それもユウカと見た目がそう変わりない小学生以下の。

 それが手足を縛られ引っ張られてたり。

 体重が軽い為かゴブリンが一匹で棒に下げてたり。

 ゴブリンは微塵も大切にはしていなかった。


「トキヤ、流石に殺らない‥よね?」


 マユリが顔だけ俺に向けながらそう言ってきた。

 言動とは違い手は既に俺の裾を掴み。

 後ろに引いていた。


「お兄さん、ダメですよ、ほら‥私と変わらないじゃないですか?」


 ユウカもよく分からない理由を言い出す。

 2人とも俺を抑える辺り。

 どうやら既に俺は見境なく殺すと思われてるみたいだ。

 仕方ないのかもしれないし。

 だけど、問題は無い。


「ならどうする、人質が有効だとバレたら次がまた来るぞ?」


「だから、直ぐに殺したの?」


「あぁ、それ以外に無いだろ?」


「・・・・」


「黙るぐらいなら、止めないでくれ。それに助けてももう、助からないだろ。」


 皆分かってる。

 だって子供達は誰も叫んですらいない。

 意識はしっかりあるのにだ。

 目は開いていて俺達を見ている。

 だけどその目はもうとても生きてるとは言いたくない。


「俺だったら殺して欲しい、そう願うね。」


 どうしてそんな目をしてるのだろうか。

 きっと捕まってからずっと玩具にでもされてたのだろう。

 爪で引っ掻けば性別問わず叫び泣きじゃくる。

 恐らくゴブリンからしたら楽し以外には無かったのだろう。

 それに身体の大きさが近いが故に不運な事もあった筈だ。


「でも子供だよ、助けてからでも良いじゃん。」


「マユリなら作戦は有るのか?悪いが俺は思いつかないぞ、だって助ける事を念頭に置いて無い俺が、最良の作戦なんて思いつく筈が無いだろ。」


 話してる間にゴブリンが近寄り。

 矢の射程に達した為俺達に矢を放ち出す。

 オボロが壁を張りまた不愉快な音が鳴り出す。


「奴らが爆弾の範囲から出るまでだ。」


 俺達が左右に避けたり。

 後ろに下り続ける事は出来ない。

 ユナさん達の敵と綺麗に挟まれれば終わりだ。

 この保っている間隔があるから俺達は有利なのだから。


 子供を殺す‥

 それはきっと間違ってるのだろう。

 子供には自分の身を守るだけの身体と思考力の発達が足りていない。

 自己責任能力が無いとも言われるから未成年は守られるんだ。

 それが小学生なら、助けてやりたいが。

 どおする。


 このまま進まして子供達が範囲から出たら爆発させるか?

 いや、それでもゴブリンが直ぐに手を下す可能性だってある。

 けど助けられる可能性も増えるがリスクも伴う。

 それにだ。

 助けた後は?

 

 助けた後の事が決まってないのならそれは、無責任極まりないだけだ。


 辛くて死にたい自殺者を無理やり止めるとしよう。

 その後に何もしないで秒で消えるのと何が変わろうか。

 

 死の先延ばしでしか無い。


「どんなに考えても、無いよ。俺が手を下す、だから何も気にするな。」


 敵が爆弾の範囲外に出るため俺は爆弾を起爆させた。

 起爆させる瞬間にマユリとユウカが俺を止めようとしたが。

 基本的に爆弾の爆発はそんな難しい作業でも無い為。

 阻まれる事無く爆発する。


「ンゥ。トキヤ何で‥」


 オボロのお陰で爆風などは無く。

 只々目の前で爆炎が一瞬で広がり。 

 静観しているだけで脆い子供の身体は視界から一瞬にして消えていった。

 大人より軽いそれらは何処に飛んでいったのかすら分からない。

 ただ目で探してしまうのは仕方が無いことなのだと思った。


「助けた後はどうする事も出来ないからな、せめて俺達が巨大な拠点でも持っていたのなら、俺の考え方は違ったのかもしれないけどな。現状は仕方がないよ。」


 俺が静かに言い終えた後にオボロが壁を解き。

 ユウカが静かに後始末を始める。


「バカっ..。」


 消え入りそうな声で言われ。

 拳で肩を殴られるが。

 その力はとても弱く。

 力では無いモノだけが込められていた。


 ユウカが作業を終え。

 俺達はユナさん達の切り開いた道を進む。


 あぁ辛い。

 どうして俺はこんなにも中途半端、なんだろうな。

 

 どうせなら何も思わない冷酷な心が欲しかった。


 それならもっと――


「お兄さん、爆弾仕掛けないんですか?」


「ああ、すまん、済まん、今仕掛けるよ。」


 ユウカに言われ俺は爆弾を道に仕掛けだす。

 そして前を見れば。


 ユナさん達が左右から奇襲を受け。

 乱戦が既に始まっていた。


 次々に塀を超え姿を現す無数のゴブリン。

 明らかに待ち伏せだった。




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