94.
「のっぽ強いですって!」
アイが自分より背の高いハイゴブリンと刃を交える。
リーチの差がステータスの差を無くし互角の戦いだ。
その隙きに側面からゴブリンが攻撃を仕掛けアイは後方に退く。
「あぁぁもぉッ。多いですって!」
ハイゴブリンの数が増え。
明らかに進みが遅くなっていた。
「アイちゃん、私が長いの相手するから細かいの任せて良い?」
「はい、是非お願いします。」
ユナさんの提案にアイが乗り。
入れ替わる様にユナさんがハイゴブリンに向かい。
アイが小さなゴブリンを倒しに動いた。
そしてハイゴブリンに凸ったユナさんは敵の攻撃を躱し。
ゴアームと比べたら痩せ過ぎのハイゴブリンの横腹に蹴りを入れ。
そのまま蹴り飛ばし。
ハイゴブリンは壁にぶつかり。
身体が折れた状態で動かなかった。
そしてユナさんを狙うゴブリンをアイが地面に叩きつける。
「さすがです‥」
「アイちゃんもありがと。」
立ち代り入れ替わりでゴブリンとハイゴブリンを倒し。
敵を倒す速度を順調に上げていく。
そしてモモカとヒヨリも二人一組で安定して倒していた。
だが暫く進めば‥‥
「待って、まさかだけどさっきの奴らは、雑魚なのッ?」
「そうですよ、何ですかあれ!聞いてませんッ!」
ユナさんとアイが視界の先のゴアームを見てそう嘆く。
「まぁ誰も雑魚じゃ無いとは言ってませんし。」
「そんなぁ嫌なんだけど私、殴っても効かないし。」
「そうですよ、硬くて切れません。」
速度を取り戻し進む先にはゴアームが再び2体居た。
「反則です!」
「いや、ルールは無いだろ。」
「それでもッ!・・・・」
「「・・・・・」」
「終わりました。」
アイが駄々をこねている間に矢が飛んでいき。
ゴアームの頭が矢の威力に弾け飛ばされ死んだ。
「だそうだぞ、ささっ進んで進んで。」
「はい。」
アイがゆっくりと戻り。
先程よりも感情が入った様に戦い出す。
何か八つ当たりしてないか?
まぁゴブリンが減ってくれて嬉しいが。
「お兄さん。」
ユウカがひたすら俺を見ていた。
「良くやった偉いぞぉ~」
まさかユウカがゴアームを倒す度にこれやるのか?
‥‥一体あと何体居るんだよ。
勘弁してほしい。
「マユリにリカもそろそろ戦いたいか?」
「大丈夫。」
「‥大丈夫、かな。」
マユリはともかく。
リカまで遠慮するのは意外だった。
「そうか、なら。ユウカどんどん頼むな。」
「はい!」
話していたマユリとリカを向いていたユウカが俺に振り向き。
元気よく返事をしたのであった。
「でも、トキヤ流石にこれは多すぎない?」
「正直分からん。」
コボルトの時も1000は超えてた。
そしてオークも劣らずそれぐらいは居ただろう。
なら異世界のGであるゴブリンなら万は居るだろう。
「まだ500しか倒して無いんだ、こんなもんじゃないか?」
「規模の桁がおかしいよぉ。」
理解できないといった感じで呆れてるが。
これが現実である。
「危ないッ」
マユリの腕を掴み引き寄せる。
そしてその場所には矢が刺さる。
「矢?」
「後ろだ。」
後方を見るとゴブリンの軍勢がおり。
俺達は進行方向と後方で挟まれていた。
そして矢は後方のゴブリンが放った者だと直ぐに分かる。
いかんせん弓を持っているゴブリンが多かったのだ。
そして今度は奇襲が終わったゴブリン達による連矢が開始される。
「オボロ」
オボロが俺含め4人をスキルで囲い守る。
矢が飛来し次々に壁に当たり勢いを失い落ちていく。
矢が壁の頭上に積み重なり。
正面の壁の前にも矢が次々に落ちていく。
「私の矢もこんな風に無力化されたら悲しいですね。」
「まぁ一撃が軽いならこれで暫くは耐えられるからな。」
現にオボロが作りだす半透明の壁は亀裂が入る事もなく。
数百数千と放たれる矢を防いでいる。
「ユウカ反撃だ。」
「はいです、やり返しです!」
ユウカのアローの矢は出現場所の自由度が広く。
壁の外に出せる為に攻撃が可能だ。
「ふんッ」
ユウカがいつもより気張って頑張っていると思ったら‥
突如として壁の頭上が青く光りだした。
「おいおいおいおいッやり過ぎだぁ!」
一本一本が薄く青色を纏うアローの矢が。
見上げる頭上には何十では無く。
数えられない程に浮かんでおり。
その膨大な数が結果的に強い光を放っていた。
「えいッ!」
そしてユウカが上に伸ばしてた腕を前に振り下ろし。
一斉に矢がゴブリンめがけて発射される。
その数はまさに相手のゴブリンの矢の数にも引けを取らない。
粗全ての矢が同時に衝突し敵の姿が一時的に見えなくなる。
「ふっふっふぅ、えへん!敵を倒しました。」
「お、おう‥」
満面の笑みのユウカを褒め。
後方を確認した。
「あれ。」
「どうしたんですかお兄さん、私が役に立ち過ぎて困って……えええええええ!!!何でッ!?」
後方のゴブリン達は無傷であった。
それに敵の持っている松明の明かりで分かったが。
先程より少し色が薄暗く。
半透明の壁が前面に張られているのが分かった。
「インチキ!MP使ったのに、壁があるなら最初から張ってよっ!」
後先考えずいきなり放ったユウカが悪いのだが。
まぁ気にしたら負けだ。
「MPどれだけ消費したんだ?」
「218‥程。」
つまりさっきの攻撃で矢は218本あったのか。
どっちがインチキなのか分からなくなるが。
「アホ。」
「うぅぅ、ごめんなさいです。」
調子に乗ってるユウカを一旦落とし。
冷静にさせ。
俺達は後方の敵と向き合った。