93.
「うッ‥‥」
「大丈夫か?」
平気だと思っていたが違った。
マユリが嘔吐感を催していた。
仕方ないと言えば仕方ない。
ゴブリンの死体が散乱している。
それも手足が切断されてる奴。
頭だけだったりと様々だ。
「大丈夫‥」
それは大丈夫とは言わない気が。
まだ戦闘をしているなら楽だ。
目の前の敵に集中していれば良いのだから。
だが俯瞰して見るだけなら考えてしまう。
無惨に殺された者の事を‥
「お兄さん私の心配は?」
「お前は元気だろ。」
「ははっ、それもこれも、お兄さんが悪いんです。私だってコボルトの時は大変だったんです。」
「いい経験だった様だな。」
くだらない話をしている間にもユナさん達は進む。
敵に向かって飛び込む近接組の速度は速く。
只歩いても追いつけず時々駆け足で追いかける。
「あれ。」
急にユナさん達が立ち止まり。
ゴブリンに襲いかからず止まる事を覚えた。
「何か居るな。」
「はい。凄く大きく無いですか?」
「うッ。」
ユナさん達の前に居る一体の緑色のモンスター。
その身体は痩せ背が小さなゴブリンとは違い。
まるでオークの様に太り背も2m程ある。
ゴブリンと一緒に居るし色的にはゴブリンと思われるが。
単体で初見ならばゴブリンとは思わないだろう。
【ゴアームLv30】
ゴブリンなのかすら怪しい。
だが敵である事に代わりは無いのだが。」
【ゴアームLv29】
【ゴアームLv31】
更に2体も居る。
それも道を塞ぐように横並びに。
両者が睨み合う中で最初に仕掛けたのはアイだった。
そしてアイが走り出した瞬間にユナさんも走り出し。
遅れてモモカとヒヨリも飛び出す。
「ユウカッ」
「はいッ。アロー」
モモカとヒヨリが向かう右端の敵にユウカがアローを放つ。
アイが左端の敵に正面から行き。
敵がアイを狙い見た目に反した速度で腕を振るう。
スライディングで躱し相手の背後に行きナタで切りつける。
加速し加速するユナさんが中央の敵に腹に拳を打ち込んだ。
しかし‥
そのオークの様な豊満な腹の脂肪が波打つ様に揺れ。
怯む様子無くユナさんを払い除ける。
アローを左腕で防ぎかき消す。
ヒヨリが横腹狙いモモカが頭を狙い攻撃する。
ゴアームは右腕で頭上から迫るモモカの鉄筋だけ防ぎ。
ヒヨリの攻撃は無防備の為に攻撃が通る。
しかしユナさんの攻撃同様に脂肪が揺れ終わる。
アイに対して向き直るゴアームの背中がこちらを向く。
その背中には薄皮一枚切られ傷痕しか無かった。
「お兄さん、あれはボスとかでしょうか。」
「それなら3体も居るのは卑怯だろ。それにあれは恐らく量産型だ。」
「でもユナさんの攻撃すら効いてませんよ?」
「まぁ見た目通り、打撃には強いんだろうな。」
「でも私の魔法効きませんし。」
「ユウカ、弓を使ってみてくれ。」
「はい。」
前回作った弓をアイテムボックスから取り出し渡す。
矢はその都度作ってもらう事になっている。
その方がお互いに楽だしな。
「すぅぅ。」
ユウカが矢を作り弓を構える。
長弓では無いため背が低いユウカが弓を構えても問題はない。
そして矢が引かれ。
力を入れ引いている手が震えている。
「大丈夫か?間違ってもあて――」
矢が放たれ飛んでいく。
そして右端のゴアームに飛来し。
先程より速度が上がった矢が防がれる事は無く。
無事に敵の脳天を貫き頭を破壊する。
「大丈夫です!こうみえてDEX値は高いのです。」
どうだと自慢する様にこちらを見ている。
「そうなのです。」
まだこちらを向き。
顎を上げ微笑んでいるが。
目は瞑っていた。
「よしよし、偉いぞぉ。」
頭を撫でると機嫌が良くなったので間違っては無かった。
「よし、そのまま次を狙え。」
「らじゃ。」
「ユナさん、アイ気おつけて!」
俺が叫ぶと二人がユウカの姿を見て理解する。
そして背中を向けているゴアームが次に狙われ。
ユウカが的確に頭を狙い無事倒す。
そして真ん中の敵もユナさんが合図で攻撃が放たれる。
ユナさんは手を後ろに回し指で放てとジェスチャーし。
放たれた矢をユナさんが避け。
ギリギリまで矢が見えていなかった最後の敵もそのまま倒れた。
「やりましたよっお兄さん!」
「本当に凄いな。」
素直に関心しながら撫でながら褒める。
「ユウカさん、チートじゃ無いですか?」
「え?、いやいやいやッ、私なんてまだまだですよ。ユナさんとお兄さんの方が強いですし。」
「それはそうだけど、比べる相手がおかしいのよ。」
「あら、アイさん?私はおかしいの?」
「いえッその様な事はございません、トキヤさんがおかしいと申し上げたかったのです。」
流れる様に俺がおかしい発言されるが。
パワハラ現場を見ている気分になり特には何も言わなかった。
「そうだよ。ユウカちゃん強かったよ?私何も出来てないし。」
「マユリさんだって、攻撃したらあんな奴ら丸焼きですよ!」
ゴアームの丸焼き‥
「不味そう。」
「トキヤさんッ!?食べるつもり?」
「いやいや、そのつもりは無いよ。食材には困ってない、けど。良くある創作系だとオークは美味しいって事は稀にあるからさ、気になっただけだが流石に、あの緑色の奴はありえない。」
「なら今度オークいたら食べてみましょ。」
「「え」」
そして以外にもユナさんが興味を示してくれたのだった。