88.
「この辺りにはモンスターは居ないわね、反応が無いわ。」
「そうですね、俺も居ないと思います。」
隣街に入り魔物を避け。
人の気配も避けて進み。
一夜を過ごすのに最適な場所を探していた。
今居る街は個人経営の飲食店や小さな店が大通り沿いに建ち並び、もしも魔物が現れる事が無かったのならば日没のこの時間は仕事終わりのサラリーマンや、学生で賑わっていたのかもしれない。
それが見る陰も無く。
何故か人の気配すらも辺りには無かった。
「この近くに避難所って有るんですかね?」
「無い訳は無いんだが、何処に在るのかは俺も分からないな。」
「「あっ「ゴブリン」」だ」
粗同時にアイとモモカとマユリの3人が通りの奥を横切るゴブリンを見つけた。
「今度はゴブリンか。」
「いつもは嬉しそうなのにゴブリンは嬉しくないんですか?」
「ユウカ俺を何だと思ってる、それにゴブリンは経験値が美味しく無いのに、数が多くて疎らだから面倒なんだよ。これがゲームみたいに自動狩りとかあれば話は別なんだがな。」
「でも私は楽で良いですよ、だってアロー一回で死ぬじゃ無いですか基本。」
―
―
―
と言ったユウカの発言が30前である。
「お兄さん、お兄さんッ!何でこのゴブリン達一回で死なないんですか!卑怯ですよ。」
「そんなの敵のLvが高いからに決まってるだろ。」
【ゴブリンLv17】
俺が初期に爆破しまくって居たゴブリンより明らかに強い。
それに今回はあの一体目のゴブリンを目視した時からおかしい。
ゴブリンを見つけたと思ったら見られていた。
そして僅か数分で気づかれない様に広範囲から徐々に囲い込んで来やがった。
ユナさんと俺が気づいた時には既に囲まれており。
一点突破を試みてはいるが。
ユナさんが数匹を薙ぎた倒そうが。
俺が数十匹纏めて消し飛ばそうが。
そこを修理する様に直ぐにゴブリンが行く手を阻んでいた。
建物の陰に入っても見つかり。
一匹が騒げは一瞬にして囲まれる。
その為大きな通りのど真ん中で俺達は自分達のスペースを作り。
耐え忍んでいた。
「キリがない!」
一匹また一匹と頭を叩き割るモモカが終わりの見えない戦いに文句を言い。
「まぁでも冷静に考えれば、この数は平和じゃ‥」
「そうね‥あの時は此処よりも周囲を囲まれてたもんねユウカちゃん。」
「はい。それなのに次々になる爆音が敵を無限と思える程おびき寄せ‥」
何だ2人ともこんな時に何の話をしている。
でも実際に通常のゴブリンだけなら捌けただろう。
【ハイゴブリンLv26】
ユナさんが前に戦っていた背の高いゴブリンだ。
それが5匹倒せば一体の割合で出てくる。
モモカが戦えば一瞬で劣勢になり。
アイが戦っても粗互角で一人では倒しきれていない。
戦闘している2人に横からの不意打ちが入らないように通常ゴブリン相手に。
ユウカがアローを放ち続けていた。
「ふっふぅん。私に任せなさい。」
「マユリがついに壊れた。」
「壊れてないよっ。」
強く否定はされなかったが良く分からない。
何をするつもりなんだ?
「ファイヤ!」
無秩序に広がる炎が前方数十匹のゴブリンに襲いかかる。
やがて触れたゴブリンが燃え始め。
「「「「「「「「「「「「「ギァ"ァ"ア"ア"ア"」ア"」」アア」」」ア」」」」」ギ―」
ゴブリン達がパニックリになり暴れまわる。
それはマユリの炎で引火しなかったゴブリンにも炎が移り。
瞬く間に攻撃を放った方面が火の海とかした。
それを見た他のゴブリン達がジリジリと下り。
「ファイヤ!」
違う方面にもう一度マユリ魔法を放ち。
巨大な炎の布が上から覆い被さる様に降りかかる。
そしてゴブリンが燃え。
瞬く間に炎が広がり周囲を盛大に照らしていた。
火の海とかした2方向が燃え盛っている為。
日没したとは想えないほど辺りは真っ赤に照らされていた。
そして炎に悶え苦しむ同族を見たゴブリン達。
彼等でも恐怖したのだろう。
立ち尽くし数秒は仲間を見た後で。
燃えていないゴブリン達全てが足早に逃げていった。
「やったぁ‥」
「マユリっ。」
粗MPを使い切り膝から崩れるマユリ。
反射的に動き。
膝が地面に触れる直前で何とか支える事に成功する。
「せめてちょっとはMP残せよな。」
「加減したら、私は素で迫力が無いんだから意味がないよ。」
「確かにな。」
「えへ。」
残された光景は悶え苦しむゴブリン達。
そしてゴブリンが逃げ道が開けた道。
「一匹にでも見つかればまた同じ事になる、移動しよう皆。」
「でも何処に行っても見つかる気が。」
「外に居るよりは良いだろ、まずは室内に入って考えよう。」
「分かりました。」
開いた道を進み。
外から廊下が見えないタイプのマンションに足早に入り。
下手な細工はせずに4階の一室に俺達は皆で入った。
なお部屋を選んだのはハルさんとユナさんの2人だ。
俺が奥の部屋に入ろうとしたら。
先に進んだ2人に却下されてしまったのだ。
そして2人が此処と部屋を決め。
奥から3番目の部屋になった。
よく分からん。
中に入ると2DKの間取りで。
俺はソファーが見えたのでそこにマユリを寝かせ。
近くに俺も座るとソファーが良く。
沈み込み感じで身体を支えてくれたのだった。
「休憩だ。」
そして休憩を決意するが本音は。
このソファーから動きたくない、であった。