85.
「魔物は夜寝ている。」
夜に移動するのはありなのでは?
死神さんなど一部例外は居るが。
ゴブリンなど寝ている魔物も基本的には多い筈だ。
「‥急にどうしたの?来る時に頭ぶつけた?」
「ぶつけてませんし、これが普通です。」
「それは‥それで、問題ね。」
え、何が!?
あまり理解できないが放置だ。
「単に夜移動する方が安全じゃないか、って話です。」
「ん~ん、でも一つ問題があるわよ。」
「それは?」
「夜に活動するモンスターも勿論居るし、何より皆夜戦うには視界が悪すぎるわ。」
「あっ」
「あっ、って皆が暗くてもハッキリ見えてるとか思ってたの?、スキルの効果も厄介ね。」
「ごめんなさい。」
忘れてた。
確かにいざ夜移動ってなるとなぁ。
敵が弱かったり鈍いオークなら大丈夫だろう。
しかし現状で速度面でこちらより速い奴が多い中。
―夜間の戦闘は無謀か‥‥
「なら今日はここで一夜越すしかないですね。」
「そうね。」
曇りだした空から今にも水滴が落ちてきそうだった。
「ほら、熱くないんだしちゃんと見ときなさいよ。」
「分かってますよ。」
スコープを覗けばちゃんとマユリ達が見える。
時々建物の死角に入るが位置は分かる為に見失う事はない。
そしてブロックゴーレムが急に欠け。
モモカが叩き壊してるが。
おかしいだろ。
彼奴等Lv以上の強さじゃないか。
弱点を見つけ的確に実行するとは怖いわ。
「まぁ大丈夫そうです。」
保険でオボロも預けてあるし。
オボロが居れば潰される事はないだろう。
同じ大きさの正方形同士がジャンプ無しに潰せる訳はないのだから。
オボロが壁を出せば泥沼の押し合いが始まるだけだ。
心配しなくてもあの調子ならLvを上げて来てくれるだろう。
「お兄さんって、自分に経験値って流してないんですか?」
「なぁユウカ。」
「はい、何でしょうか。」
「俺に話しかけるのは全然良いんだけどさ、何で俺の背中に乗ってるんだ?下がコンクリだから肋骨が痛いと言えば痛んだけど。」
俺がうつ伏せで待機してたら、しれっと上に乗ってきたのだ。
予想よりは軽すぎるけど。
VITなんて関係なく肋骨が痛い。
「そこにお兄さんの背中が在ったからです。」
何か違う気がする。
まぁでも。
小学生の妹が乗ってると思えば問題はない。
「それで答えだけど、逆にかなりの経験値を俺に回してる。それが答えだ。」
「え、でも。」
「そういう、事だ。Lvが36になる気がしないよ。」
25から26に上がる時も必要以上に経験値が必要だった。
今も同じ状況だとしても上がらなさすぎる。
「うげぇ、私それだと上がる気がしません。」
「ねぇトキヤさん、あのヤギみたいなのって何Lvだった?」
「たしか、36です。」
「なら、トキヤさんが一人で戦った強いオークは?」
「‥36です。」
「よく生きてるわね。」
「すいません。」
「何で謝るのよ、違うでしょ。」
「はい‥」
つまり経験値の壁を突破した怪物と戦ってた訳だ。
本当に運が良いである。
「一つ分かった事があります。それはLv36に到達してる奴は今の所何かしら、変異か進化してると言う事です。」
「それはつまり、お兄さんも36で変わるって事ですか!?」
「何で楽しそうなんだよ、俺は嫌やぞ。人間で十分だ。」
「まぁそう言わずに、エルフとかになれたら良くないですか?更に格好良くなれます。」
「なぜ、人間の変異か進化先にエルフがあるのか知らんが。それならユウカはドワーフだな。」
「ドワーフ?」
「ああ、もっと背が小さくなる――」
「何か?」
「肋骨痛いっ、悪い悪かった。」
ユウカが両手を背中に置き思いっきり押してきた。
痛い。
「分かれば良いんですよ、分かれば。」
「でもモンスターみたいに醜くなるのは嫌よね、トキヤさんが36になってそうなったら、私Lv上げないで頑張るわ。」
「俺モルモット!?」
「そうなるわね。」
確かに気になるけど、先人を行くのは嫌だな。
不気味過ぎるわっ。
「ちょっと待って。」
俺はスコープを覗き状況を確認する。
マユリ達は4個体に囲まれオボロが防いでる状態だった。
流石にきつそうだな。
倒すか。
俺はオボロが防いでる一体のブロックゴーレムに狙う。
他の3体は攻撃されてる為横取り扱いにされたくないためだ。
ボルトハンドルを起こし手前に引き爆弾を装填する。
そして撃つ。
既に生易しい爆発音を通り越しだ爆弾が耳を塞ぎたくなる音を出し。
ユウカとユナさんが耳を塞ぐ。
そして空中で二度目の爆発が起き。
更に加速してブロックゴーレムに命中する。
命中した箇所から反対側まで綺麗に貫き。
内部から広がる様にブロックゴーレムが粉々に崩れる。
「ちょッと!そんなに音が大きいなら言ってよ、びっくりしたじゃない。」
「そうですよお兄さん、私なんて間近で耳が壊れそうでしたよ。」
「すまんな、それとユウカの耳が壊れそうなのは近くに居たのが悪い、つまり降りてくれ。」
「嫌です。」
「さいですか。」
「それよりいつの間に音が大きくなったのよ、前は全然音しなかったじゃない。」
「何か弾丸代わりに使ってる爆弾を強化してた、いつの間にかなっちゃってました。」
「そんな、しらを切る様に言っても許さないわよ、許して欲しかったら飲み物だしなさい。」
あれ。
何だその脅してるのか要求してるのか分からない言い方は。
「お兄さん、ツンデレなユナさんが居ますよ、ちゃんすです。」
「あぁ、そうだな。」
ユウカが小声で耳打ちしてきたので小声で返し。
ツンデレなユナさんの要望に答えつつ時間を過ごした。
さて日没までもうひと頑張りだ。
日頃から読んで頂き嬉しきです。
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