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77.マッチョ


「道路が壊れてないと良いな。」


 呟きながら自衛隊車両を運転する俺。

 俺が仮眠を取った後にホテルを出た。

 長居しても良かったが不穏な奴も居た為の決断だ。


「お兄さん壊れてたらどうするんですか?」


「迂回したりするけど、明らかにダメそうなら徒歩だな。」


「えええぇぇ」


 露骨に嫌そうな声が後部座席から聞こえてくる。

 アイだな。

 しかし俺にはどうにも出来ん問題だ。

 この地域は比較的大丈夫だが。

 新宿方面がどうなってるかなんて俺には分からない。

 もしかしたら道すら無いのかもしれない。


「だったらヘリでも借りれば良かったんだよ!」


「そなアホな、誰が操縦出来るんだよ。」


「確かに‥」


 いや。

 それぐらい分かるでしょ。

 ヘリが魅力的なのは分かる。

 路面状況に影響されず短時間で移動出来るのは良い。

 だけど誰も空中で自由に動けるスキルは無い。

 緊急時に後手に回るのは危険だ。


「オボロが居なきゃそもそも車すら使ってたか分からんしな。」


 車などでは緊急時どれだけドアに近いか。

 これが最も重要だ。

 脱出が可能か不可能か。

 即座に反撃できるか否か。


「オボロちゃんありがとねぇ。」


 そして前方に3匹のゴブリンが現れる。


「良し。轢き殺すか。」


「危なくない?」


「大丈夫と思う、壁もあるし元々この車両は頑丈だ。」


 俺はマユリの問に答えながら速度を上げた。

 そして半透明の壁に覆われた車両がゴブリンに衝突する。

 その衝撃は車両には伝わらず。

 壁に弾き飛ばされ。

 ゴブリンは四方八方に飛んでいった。


≪経験値を獲得しました≫

≪経験値を獲得しました≫

≪経験値を獲得しました≫


「完璧だ。」


「何が完璧だッ、なのよやってる事エグいわよ。」


「今更、言われても」


「‥‥ごめんなさい。」


 もの凄く俺が悪いみたいじゃん。

 衝突時の力は計り知れないな。

 壁に傷が付いてる。

 

「ゴブリンまでだな、オークは無理そうだ。」


「オークまで轢こうとしてたなんて。」


「楽が一番である、それに無理だと分かったのならユウカ、悪いんだがオークが出てきたら頼むな。」


「はい!任せてください、私が針豚にしますから。」


「お、おう。」

 

 言葉が悪いぞユウカ。

 お兄ちゃんはそんな風に教えた覚えはない。

 

 走り出す前に一回試したが。

 ユウカの魔法攻撃なら乗車しままま可能だった。

 壁を展開しながら攻撃出来るとはまさに攻防一体である。

 車両に乗ってない時でもユウカとオボロはセットが良いな。

 最悪ぬいぐるみを抱っこしてる中学生に見えるし。



 2時間は車を走らせ。

 直線距離の半分程の距離を進んでいた。

 迂回しながら敵を轢き。

 停車してユウカが倒す。

 色々と時間はかかるが徒歩よりは遥かにマシだ。


 徒歩で移動した場合俺の考えでは1日は必要だった。

 大幅な時間短縮だろう。


「さ、ユウカまたオークが……」


 前方100m程先に道に歩いてる影を見つけ俺はユウカに声をかけた。

 しかし。

 オークだと思ってた影は距離が近づくにつれ鮮明になり。

 違う事を認識させられた。


「お兄さん、アレマッチョオークじゃ。」


 アイとユナさんがユウカの発言を聞き。

 後部座席から身体を乗り出し覗き込んでくる。

 

「不味くないですか?」


「不味いな。」


 左に曲がる位置でゆっくりと停車する。

 ハンドルを切りどうするか考える。

 本当にマッチョだとしたらLvが気になる。

 

 俺は鑑定のスキルを使ってみる。 

 しかし距離が遠すぎるからか反応しない。

 マッチョオークに低レベルが居るのか。

 それが重要だ。

 もしも居ないのならオークからの進化と思える。


 居たら特別な個体。

 もしくはLvは何かのきっかけでリセットされる。

 何れにせよ情報は欲しい。

 

 それは急に走ってきた。


「ヤバい。」


 俺は慌ててアクセルを踏み車を動かす。

 車が速度を出し曲がり切る前に奴が接近仕切り攻撃を受ける。

 その手には巨大な斧を握りしており。

 片手で軽々と持ち上げ運転席の俺めがけ振り下ろして来た。


≪ミノタウロスLv33≫


 マジカ。

 振り下ろされた攻撃は壁に当たり。

 そのまま壁を突き破るが壁とぶつかった事で軌道がズレ。

 車が曲がり途中だった為攻撃はサイドミラーにあたった。


 角を曲がり切った車は加速を始め。

 奴が硬直した1秒程で手が届かない距離に動いた。

 そしてオボロがもう一度壁を作る。

 

 しかし時間稼ぎにもならない。

 奴が一歩踏み出せば攻撃を受け壁は壊れる。

 そして車両の上にでも飛び乗られたら壁と同時にルーフが破られる。

 

「ユウカ攻撃しまくれ」


 ユウカが席から飛び出し後部に移動する。

 そして後方のガラス越しに攻撃をおこなう。


 反対側のサイドミラーで一瞬見ると矢が飛んであたっていた。

 詳細には見てられない。

 今は住宅街でありえない速度で走ってる。

 もし突起物にタイヤが乗り上げたら間違いなく事故る。

 

「お兄さんあいつ硬すぎて筋肉で矢が通らないですけどッ!」


「それでも攻撃しろ、走らせるなジャンプさせるな接近されれば終わりだ。」


 下りて全員で戦うか?

 嫌いくらLvが上がったとは言え足手纏だな。

 ユウカの攻撃が効かないのなら。

 俺とユナさんの2人か。


 それでも俺は誰かと戦うのなら爆弾が使いづらい。

 近接戦にしてもアイの方がステータスは上だろうか?

 どうする。

 どうしたら良いんだ。


「は?」


「どうしたの?」


 俺に反応してユナさんがこちらを見る。

 そして前方にも目が行ったのだろう。


「えっ…」


 今度はユナさんからそんな間の抜けた声出てきた。


 俺とユナさんは進行方向で歩いてる。

 2体のミノタウロスを目にしたのだった。


 



  



 






 

 



 



 







 






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