72.
「無事に使える様で何よりです。」
「あぁ、そうだな。」
「お兄さんはあんまり嬉しくなさそうですね、どうしたんですか?」
「ちょっとな。」
姿も見せない割に。
よく許可したものだ。
急に人が来て居座られたら。
気が気でない筈だが。
このホテルで籠城している彼等は。
他人を家に招いている感覚だろう。
俺は考え事をしながら階段を上がっていた。
全く警戒してない訳ではないが。
口頭で断りを入れられたのは大きい。
階段を上る足取りは軽かった。
最上階はより違う雰囲気だった。
大理石の床の中央には白のカーペット。
階段を上り目の前の奥に一部屋。
左右に一部屋ずつ。
つまりこのフロアで3部屋しか無い。
贅沢だな。
「凄い!凄い!私こんな所初めて来た。」
アイのテンションが上がっていた。
楽しそうで何よりだ。
辛いことだけでは壊れてしまう。
「貸し切りです!本当に。」
ユウカよ。
2階に人は居たんだが‥
まぁ、そういう事じゃないんだろうな。
「お財布が豊かな人はいつもこうなのですね。」
「リっちゃん流石にフロアを貸し切る人は稀だと思うわよ?」
「でも居るには居るんでしょ?」
「そうね、居ると思うわよ。」
「これがお財布格差か。」
「お財布格差って新しい言葉作らないの。」
「部活の大会で使う宿泊先がこれだったら毎年優勝出来そうだな。」
ヒヨリさんは何の部活だろうか。
少し気になる。
剣道とかかな?
棒の使い方が妙に上手いし。
「大学はそんな贅沢認めないでしょ普通は。」
「でも毎年県で優勝してる部活は待遇が良いって聞いたよ。」
「ええぇ、良いなぁ~私らバド部なんて予算全然下りなくて大変なのにぃぃ。」
アイはバド部だった。
運動してるとは思ってたが。
バド部だったか。
そろそろ。
「皆は奥の部屋に行って自由にしてて良いかなら。」
「え、トキヤは?」
マユリに問われたが。
逆に同じ部屋に俺が居たら。
ハルさんやモモカ達が気を使うだろ。
「俺は1人で良いかな。」
本当は俺が1人になりたいだけだが。
「うん。わかった。」
「えッお兄さん、一緒にお風呂入らないんですか?」
「「「「「「・・・・」」」」」」
こらユウカ。
君が余計なこと言うから場が凍りついたでしょ。
気まずい。
どうしてくれる。」
「入らないよ。」
「でもユナさんは一緒に入りたいらしいですよ?」
「ッ?」
「言ってない!言ってないッ、誰もそんな事言ってないからね、こっち見ないで!!」
ついユナさんを見てしまった。
それにしても嘘は良くない。
「ユウカ嘘は良くない、少し考えてしまっただろ。」
「考えるという事はそういう事です!」
「何がそういう事だよッ、嘘ついた事を誤魔化すんじゃない。」
「痛いですぅ。」
中学生。
いや小学生には頭ぐりぐりが一番だ。
実際は高校生だろうが。
俺と会った時嘘をついたのがいけない。
今思えば最初から嘘を流れる様につくなユウカは。
お仕置きじゃ。
俺はちょっとだけ力を入れ更にぐりぐりした。
今のユウカのステータス次第では全然効いてないからな。
念入りにだ。
「これにこりたら悪さはするなよ。」
「はい。善処します。」
確約じゃなかった。
まぁ良いや。
「じゃ、後は女性だけでのんびりしててくれ。」
「1人で出ていくんじゃないわよ。」
「ああ。大丈夫だ、流石に疲れてるから動かんよ。」
俺は右側の部屋に1人入り。
目に入ったベットに倒れ込んだ。
つらい。
もう身体もガタガタだ。
いやボロボロである。
世界がおかしくなって約80時間。
まともに寝てない。
いつもなら問題無いが。
人と居ると疲れる。
特に女性だ。
男女で親友は無い。
俺はそう思っている。
だから心を許せず。
どこか警戒せざるを得ない。
元は大丈夫だったが。
前の職場での出来事から揺ぎが生じた。
はぁ。
疲れる。
1人よりは楽しいという面では良いが。
疲労を考えると遠慮したい。
これが彼奴等だったらな。
俺も楽なんだが。
言っても始まらんな。
それよりも最後にユナさんが言った意味。
あれは何を示していたのだろうか。
1人でレベルを上げに行くな。
私達を置いて行くな。
それとも‥
あの人は一部変だが。
基本的には優秀な人であり。
感も鋭い。
変に気を使わせてしまっただろうか。
気付かれないようにしてたつもりだが。
後でお礼を言わないとな。
謝るより感謝の言葉は時には重要だ。
それにしても俺も風呂に入りたい。
これでも日に2回は入ってた風呂好きだ。
しかし身体は重く。
ふかふかのベットに沈み。
起き上がれない。
ダメだ。
後ででいいや。
あッ。
俺のオークの経験値って。
どうなってるんだ。
いつもの様にアナウンスが聞こえる。
そんな事は無かった。
反応するかどうか気まぐれだな。
試しに適当にモンスターを倒して。
経験値アナウンス流してみたい気もするが。
ユナさんに言われたし。
意味の無い実験はしないでいいか。
随分久しぶりだな。
声に出す必要は無いが。
「ステータスオープン。」
明日2022/03/22は投稿出来ない可能性があります。
投稿出来なかった場合は03/23日に2話連続投稿の予定です。
後悔はしたくないので、
投稿するにしても延期するにしても頑張ります。