71.
デカイ。
何だこの豪華ホテルは。
まず内装が普通じゃ無い。
開放感溢れるエントランス。
室内だけど緑がテーマ。
そう思える程の観葉植物の数。
地震対策は十分してた様だ。
人気がないだけで。
汚れては無かった。
「凄い‥」
「うん凄い。」
俺も同じ様な感想である。
今まで利用したホテルとは違う。
本当はホテルマンとか居て。
対応も素晴らしかったんだろうな。
今は誰・・・・
いや。
「人の気配がある。」
全員からが無言になり周囲に目を向ける。
このホテルを籠城場所に選んだか。
まぁ人数にもよるが食料はあるからな。
それか外に出る度胸が無かったかだ。
それにしてもスキルは有り難いが。
正確な位置はまだ掴めないな。
「取り敢えず上に居るみたいだな。」
これ以上は方向も絞れないな。
上がってみるか。
「どうするの?」
ユナさんが前を向いたまま聞いてくる。
警戒してくれるのは助かる。
「そんなに数は居ないだろうから接触してみようと思う、どうせ他を当たっても壊れてるか人が居るだろうしな。」
「分かった。」
他の誰も口を挟ま無い。
異論は無い様だ。
文明の利器。
エレベーターが横にあるが。
勿論使えない為。
横の階段をゆっくりと上がる。
俺とユナさんを先頭に。
後方はアイとユウカに居てもらい。
他のメンバーは中央に集める。
臨機応変に対応するならこの布陣だ。
エントランス部分が天井が高く。
2階に該当する場所までかなりの段数があった。
普通のペースなら一苦労だが。
警戒しながらゆっくりと上ってる為。
足に負担は無かった。
その代わり精神力が削られていく。
ようやく2階部分にたどり着く。
上がりきり左右を見渡してもドアは無く。
目の前に大きめの部屋があった。
ここはホールか食堂だろうか。
そしてこの階に居る。
スキルが教えてくれる感覚が。
上ではなく同じ高さに変わった。
「この階に居るみたいだ。」
「私が話をしましょうか?」
「ユナさん俺を何だと思って?」
「市役所での前科があるでしょ、前科が。」
まさかアレを含まれてるとは。
少し悲しいぞ。
俺は悪くないと思ってる。
まぁ少し屁理屈だった気もするが。
「大丈夫ですよ、向こうが先に動かなければ誰も負傷しませんから。」
「なんで負傷なの、普通怪我が最初じゃなくて?」
特に深い意味は無かったつもりだが。
ユナさんに指摘されてしまった。
なら任せるとしよう。
それに近接戦なら適任だし。
「特に深く考えて言った訳じゃなかったんですが、ユナさんに話は任せますね、段々と自信が無くなって来ました。」
「なら、私が話すけど、他の皆もそれでいいよね?」
「勿論です。」
「はい。」
他も頷いていて大丈夫な様だ。
てか。
これって皆俺より適任って思ってない?
まさかな。
ユナさんがゆっくりと前に進み扉の前に立つ。
俺はユナさんと皆の中間を保ち。
何方で駆けつけれる様に警戒する。
手を前に出し。
大きな扉を開けようとする。
手の平が着いて開けると思いきや。
5本の指が触れただけで開き始めた。
「「「・・・・」」」
扉がそれほど軽かったのか。
ユナさんの力が‥
恐らく後者だろうな。
ユナさんがびくッと動いていたから。
そのままゆっくりと開く扉。
扉が動き奥の部屋が見え始める。
最初に見えたのは机。
白のテーブルクロスが特徴の数名用のテーブルだ。
背もたれに木の枝をモチーフにしたであろう。
作り込まれた木製の椅子。
そしてその奥には一段上がってる舞台。
扉がどんどん開き。
テーブルと椅子が視界に増えていく。
どうやらパーティーなどで使う部屋の様だ。
そして扉は開ききり。
部屋の端に異様に積まれたテーブルや椅子が見えた。
ユナさんが中に入り。
間隔を保ったまま進む。
「止まって下さい。」
男性の声が聞こえて来た。
声質的には年配の方かな。
反響してるがあの家具が積まれた場所だろう。
「勝手に入って来てしまいすいません。私は軌崎と言い、この施設を使いたくて立ち寄ったのですが貴方はこのホテルの関係者でしょうか?」
「私は石田です、ホテルの関係者ではありません。」
「石田さんですね、それで私達がホテルを使う事は石田さん達的には大丈夫でしょうか。」
「・・・・」
ユナさん。
達って言うのは大丈夫だろうか。
確かに1人では無いのはわかるが。
警戒心が強く怯えてる人は。
何故知られてると思い。
更に注力してしまう。
「私はこのホテルの責任者ではありません、そして責任者と呼べる方も居ないので問題は無いと思われます。」
「有り難うございます。私達は最上階を使おうと思ってるのですが既に誰かが使ってたりするか分かりますか?」
「いえ、誰も使ってないと思います。それと申し訳ないが食料は‥」
「食料は分けて頂けなくて結構です、それと数時間で出て行くつもりなのでトラブルが無ければ基本的には不干渉で宜しいでしょうか。」
「はい、問題ありません。」
「では失礼します。」
結局最後まで姿を見せなかった男性だが。
最上階を使う事を話したので問題ないだろう。
そのまま大部屋から何事もなく出れたのであった。