68.
飛散した瓦礫を避け進む。
大回りになるが仕方がない。
瓦礫の上を歩いて足元から攻撃されたら危険だ。
市役所の入り口の横に居る筈だ。
しかし入り口は見えなかった。
完璧に瓦礫で塞がれていた。
「トキヤやり過ぎ。」
「加減を知らないねぇ」
「何だ二人共文句が有るなら次、あの数が居たら2人に掃除してもらおうかな」
「「冗談」だよ」
切り返しの早い2人を置いて歩く。
入り口が無いのなら違う所から入ろ。
要塞として作られてる訳じゃないからな。
市役所の側面に行けば大きな窓ガラスがある。
有った筈だが無かったので問題無い。
俺はその通れる様になった所から中に入る。
中の状況はかなり酷く。
今も砂埃が舞。
視界は最悪。
そして見える距離には椅子や紙。
道具が落ちていた。
見えない所も大体こんな感じなんだろうな。
「ユウカ、ユナさ~ん」
2人の名前を叫ぶ。
「反応無しか」
すると砂埃の中で影が動き。
大きな影が迫り来た。
「何だただのオークか」
本当に黒でも無い普通のオークだった。
「ト、ト、トキヤさん、敵!敵!!」
「ウォオオオ」
「どっちも騒がない」
オークの素手による攻撃を手の平で受け流し。
あれ。
このオーク力強くない?
首に手刀を入れ。
へし折る。
感触も変だ。
折るというより。
叩き切るつもりで振ったつもりだった。
それで切れて無い。
黒じゃなくても強い奴は居るんだな。
「皆、黒じゃなくても強いの居るらしいから気をつけろな」
「当たり前じゃん普通は警戒するよ。」
「流石に私達には真似できませんしね。」
「ははっトキヤさん最初会った時みたい」
最初会った時?
モモカに言われ思い出した。
「あぁ、あの時は気分最悪で豚の声を聞きたく無かったからな」
「何かごめんなさい」
「ん?どうしたんだ、別に気にもしてないぞ。それよりやはり中にも居たな、気をつけながら進むぞ」
「は~い」
1人だけ元気である。
俺が先頭で進み。
市役所を進んでいく。
死体がない。
これは敵が来た段階で下げたな。
なら2階か。
「誰か階段の場所分かるか?」
「あっち、だったと思います。」
「私もそうだと思う」
直ぐに答えられる人は心強い。
行ってみよう。
間違ってても虱潰しだし。
足元にはオークの死体が沢山ある。
「死んだふり居そうだな」
「それフラグじゃない」
「大丈夫、俺のフラグは当たらない。」
「その自信は一体何処から来てるの。」
「それは俺の経験だ。」
主に昔からのゲームだが。
ブォ
「今何か変な音しなかった?」
「聞き間違いだろ。」
「脂肪を踏んでるからその音じゃね?グチョグチャ鳴るやん」
「そんな事私今の今まで思ったことも無かったよ。」
「私もです」
「私も~」
「待て待て」
この流れは6人全員で賛同するパターンだ。
そんな居心地の悪い状態をぬくぬく作らしてたまるか。
「何よ」
勿論理由など他にない。
ただ止めただけだしな。
何も言えなかった。
ブォ
「ホラまた聞こえた!」
グチャッ!
俺は足で地面を踏みしめた。
そして肉が潰れる音がした。
「何が聞こえたんだ?」
「トキヤさんが今証拠滅殺したでしょ」
「アイちゃん、滅殺なんて物騒な言葉どこで覚えんだい?女の子が使ったらダメだよ。」
「こんな時だけ女の子言うなぁああ!!!」
両手を下に突っ張り。
背伸びでもしてる様に抗議するアイだった。
「そんな怒ってたら可愛い顔が更に可愛くなるだろ」
「意味分からんわっ!ッて可愛いとか。何言ってるんだよ。」
少し動揺してるぞ。
更に可愛いアイだった。
「トキヤ、敵も居るかもしれないから後にして」
マユリに怒られた。
「すまん。」
いや。
これは自分に構ってくれないからと。
拗ねてる可能性も有るぞ。
どっちなんだ。
ソレはないか。
思い込みが身を滅ぼすとは言うしな。
危険な旅はしないでおこう。
オークの死体を踏みつけ進み。
ようやく階段が見えてきた。
階段の周りは死体で溢れていた。
階段を上ろうと第一歩を踏み入れる。
すると踊り場から急に影が迫ってきた。
その影が手に持つ武器が視界に入る。
刃物だ。
やばい。
マッチョオーク並に早い奴が居る。
そんな事は思ってなかった俺はとっさに反撃する。
首に迫りくる刃物。
その相手の手首を掴み。
片足で相手の顔があろう場所を蹴る。
「トキヤさんスットプ!」
「ユナさんダメ!」
「「・・・・」」
数秒の間が空き。
目をパチクリさせ見つめ合う。
俺とユナさん。
2人して気づく。
危なかった。
俺の左足はユナさんの頬に触れかかり。
止めた筈の刃物は俺の首に添えられていた。
これ止められなかったら。
俺って死んでた?・・・・