64.
順番。
そんな概念はオークには無い。
我先にと押し寄せ混み合う市役所前。
それを必死に迎撃してる人。
オークの死体が敷き詰められている。
そう思えるぐらい数が横たわっていた。
同じ様に人の死体もかなりの数があるが。
迎撃してる人を他所に突破するオーク。
人とオークが入り交じり既に混戦状態だった。
築いていた防衛線が何処だったのかすら分からない。
「少し遅かったか」
市役所前でまだ戦ってる人が居る。
防衛線が破られて余り時間が経っていないのだろう。
「まだ間に合う!」
「おいッ‥ああぁぁ言わんこっちゃない、ユウカ追いかけて援護して。」
「はい。行ってきますね」
先走って行ったユナさん。
生きてたら後で文句言ってやる。
誰も助けないとは言ってないのに先走るなよ。
いっちゃん良くない。
「ユナさんとユウカとパーティー組んでる人は抜けて、4人で組み直して」
これであの2人が経験値を得られる。
最悪どうにか出来るだろう。
あの2人は仲良くコボルト無双した連携力があるし。
「トキヤさん組み終わりました。」
「分かった。」
これからが大変だ。
ユナさんの走り出した方向的に。
向かったのは混戦状態の市役所前だ。
俺達が後を追いかけ合流した所で効果が薄い。
それに混戦してる場所ならユナさんが片付けるだろう。
問題は終わり無く攻めてくる。
溢れるオーク達だ。
ユナさんが強かろうが。
数百、数千と繰り返されれば。
体力が先に底をつく。
だから俺達がやる事は。
「良し、オークを惹き付けるぞ。」
「え?」「え。」
「ん?」
「冗談ですよね」
「マジ?」「・・」
「冗談言っても仕方無いからな、てな訳はで囲まれたら死ぬから文字通り死ぬ気で戦え。」
「いやいやいや、トキヤさん無理だって!私達死んじゃうよ。」
「そうだよ。違う方法にしよう。」
後ろの3人も無理と顔を振っている。
モモカだけは顔色悪く喉を抑えていた。
あぁ。
さっきユナさんが走って行った時追いかけようとして。
ハルさんに首根っこを引っ張られてたな。
ストッパーが居てくれて本当に良かった。
「何別に面と向かって全て相手にするつもりは無いさ。」
「ならどうするんですか?」
「市役所の向かいには何がある?」
「え~っと、マンション?」
「そうマンションがある。あれを市役所の方に倒壊させオーク達を下敷きにする。まぁ君等は共犯だな」
「「「「「「・・・」」」」」」
「俺達も行くぞ、後付いてこないなら危険な時も守れないからそのつもりでな」
俺が歩き出すと後ろからついて来る。
勿論6人が。
さて。
マンションは20階ぐらいだろうか。
市役所との距離を見比べてもギリマンションの方が低い。
被害が出たらそれは必要な犠牲としようか。
これでオークが何百と倒せるのだし。
市役所と間にある道に対して横長なのが良いな。
上手く行けば。
全滅一歩手前だ。
マンションに向かう際。
大きく迂回し役所とは逆方向から入る。
おかげでオークとの戦闘は無い。
「あの、トキヤさん。この建物に人が居たら」
「まぁ居ないだろうが、居たらドンマイだな。」
「・・・」
「ダメだよトキヤさん!、せめて知らせて上げないと」
元気になったモモカがダメだと言う。
そうだよなダメだよな。
うんうん。
俺もダメだと思う。
だから。
「だから君等でこのマンションに人が居ないか見廻って来て。制限時間は15分ぐらいかな、それより遅いとマンションと運命ともにしちゃうからね。」
「え~と、またまたぁ冗談ですよね?私達で10分?」
「ほら早く行って!俺は爆弾仕掛けるからタイマー式だから止めらんないからね」
「皆行くよ」
アイの一言で一斉に走り出す。
そして勿論だが文明の利器は使えない。
階段で頑張ってくれ。
階段をかけている彼女達を見ながら俺はそう思っていた。
そしてハルさんがロングスカートである事を認識する。
確かに急いでたら長いとか関係無いもんな。
だから後方で戦って無かったのか?
てか着替えなさいよ。
戦闘するかもしれないんだから。
そして最後尾のハルさんが両手でスカートを抑え。
最速で後ろを振り向こうとしたので。
俺はそれよりも早く違う方向を向く。
甘いな。
これがステータスの差だ!
何事も無かったように歩き出す。
バレてない。
きっとバレてない。
さて俺も作業しよう。
先程タイマー式と言ったが嘘だ。
実際は爆弾作成で作れはする。
しかし何かトラブルが起きた時。
止められないのが危険過ぎる。
それなら普通爆弾で十分だ。
消費MPも節約出来るし。
俺は以前ユウカを連れてやったように爆弾をしかける。
スキルの効果は本当に凄い。
俺が構造を考え。
ここを壊せば倒れるだろう。
時々思っていた事がどれ程甘い考えだったか思い知らされる。
全ての柱に置くのではなく。
最適な場所にだけ設置する様。
勝手に頭の中で指示が来る様に考えが纏まる。
俺は一階から順に置いていき。
2階にも上がり仕掛ける。
そして今回はどうやら3階にも必要らしい。
気持ち悪い感覚とも言えよう。
3階にも置くという思考が頭に出てきて強調される。
小走りで爆弾を仕掛け。
10分で仕掛け終えた。
後は待つだけだ。
それにしても暇だな。
久しぶりに休憩してる気がする。
壁に背中を預け座り込む。
あれ‥
意識が。
広いエントランスの一角で1人。
意識を無くしたのだった。