59.
予想通りと言えば聞こえは良いが。
やはり強い。
先程の爆発で。
腕は欠損して欲しかった。
それが本音だ。
こうなるとまた極大爆弾か？
アレは勝手が悪いからな。
何度も使えない。
作成コストも良くないし。
「グゥゥ‥ヴヴヴヴァ！！！」
来い。
オークが奮起し。
俺も深く身構え示す。
合図としては十分だった。
オークが突進して来る。
僅かな動作で行える。
指弾で応戦する。
応戦しながら後退する。
距離は有って損はしないからな。
飴ちゃん起爆する。
しかし。
そのタイミングを読んだのか。
オークはナタで切るのでは無く。
飴ちゃんを振り払うオーク。
オークと飴ちゃんの距離が広がり。
飴ちゃんは爆発する。
まじかよ。
賢すぎるやろ。
止まらないオーク。
ナタを振り払った動作で外に開いている右腕。
切り返す様に今度は内側に刃を向け。
そのまま俺を狙い出す。
刃の向きから綺麗な横切りだと想定し。
それを避ける為に膝から身体を折る。
通常では怖くて出来ないが。
今更頭を強打する痛みなど考慮出来ない。
膝から折れた身体は天井を正面に捉える。
そして目の前を一瞬で通り過ぎるナタ。
普通爆弾をオークの足の付根に投げる。
攻撃した直後のオークの体勢は不安定で。
俺はこの隙きに転ばそうと考えたのだ。
しかし3ｍもの巨体を。
足払いで倒せるとは思えなかった。
だから爆弾を足首を飛ばす勢いで使う。
爆発させ。
爆風で下がる様に俺は後退する。
途中熱風が今まで以上に感じるが。
あの距離では仕方が無い。
足の主軸が狂った。
オークは俺から見て左側に倒れていった。
急いで追い打ちをかける。
チャンスだ。
普通爆弾（強化Lv5）を3つ投げる。
後ろに跳躍して。
爆弾を同時に爆発させる。
そして物凄い勢いで再び。
爆音と爆風が襲い。
跳躍してた俺を押し出す様に爆風が吹き荒れる。
「うッ」
後ろ側の壁に打ち付けられる。
背中から綺麗に衝撃を受けた俺は。
一時的に呼吸が出来なくなる。
「ッッッハァあああハァああ…」
息が上がりながら。
オークが居るであろう場所を見る。
煙が薄まるのが早い。
そう思った俺は注意深く見る。
理由は簡単だった。
その場所は既に地面は崩壊しており。
俺とオークが居た。
10ｍ程の地面は無く。
2階と吹き抜けのように成っていた。
「はは‥」
俺は脳裏に此処の屋上を破壊した事を思い出す。
あの時は在庫の全て使ったが。
あの3つはそれに匹敵するって事か。
屋上の出来事を思い出し。
その時と同じデジャヴを感じる。
経験値のアナウンスが無い。
最悪だ。
つまりまだ生きてる。
突然。
視界の端の壁に衝突する瓦礫。
あぁ出てきたな。
崩落で下敷きになって居たであろうオークが動く。
物音が聞こえ。
巨体が3階に着地する。
突進で分かってたが。
凄い跳躍力だな。
姿を現したオークは。
全身黒焦げており。
脂肪という壁が薄くなっていた。
「アブナカッタ。コレヲハジメテウケテイタラ。」
急に喋りだすオーク。
しかしその意味が分からない。
「どういう事だ」
「フッ」
鼻で笑われた。
こいつ俺を挑発してるのか？
「ウォォォオ"オ"オ"オ"オ"オ”」
オークが急に咆哮を出す。
そして身構えた。
また突進して来る。
そう思っていた。
あれ？
来ないのか。
しかし何故かオークは動かない。
両腕を腰のあたりで構える。
空手家の様だ。
オークが出す気配が変わっていく。
ヤバい何かしてやがる。
だが待ってはやらん。
動かない的狙い。
急いで普通爆弾（強化5）を投げる。
あわよくばこれで倒れろ。
3つ投げて効かなかった。
現状から1個で倒せるとは思ってないが願い投げる。
そしてオークに爆弾が直撃する。
アイツ防がずモロに受けたぞ。
だが当たり前の様に経験値アナウンスは聞こえない。
その静けさがより不気味さを放っていた。
地面が崩壊し。
風通しが良くなった3階から煙が消えていく。
段々奴の影が見え始め。
姿を捉えた事で不意打ちなどの心配が消える。
それに。
良し。
さっきより脂肪を削れてるぞ。
このまま削ればいずれは奴の防御力は下がる。
その影は最初に出会った頃より。
オークが一回り。
二回り以上小さくなっていた。
てかさ背も小さく成ってないか？
煙越しだからこんなもんか。
そして煙から歩いて出てくるオーク。
「ヤハリコノカラダハイイナ。」
そんな事を言いながら出て来るオーク。
その姿は。
「マッチョおぉぉおおおクッ！？」
見間違う事は無い。
俺を殺しかけたオークが目の前に居たのだった。
