57.
「それじゃあ、俺は1人で基本的に動くからそちらはユナさん任せましたよ?」
「任せなさい上手くやるわよ、それより敵のボスがこっち来たら許さないからね。」
「すれ違ったらごめんなさい」
俺は苦笑いしながら伝える。
だけど失敗は許されない。
この作戦は何方かがミスれば破綻する。
俺がミスればボスがユナさん達の方に。
ユナさん達がミスれば数多くのオークが俺の所に。
何方も挟まれる危険性がある。
「お兄さん笑ってますけど、本当に1人で大丈夫何ですか?この小さい私だけでも」
「ユウカ俺のスキルは小さいからって反映されたりはしないんだよ、諦めろ。」
ショッピングモールの広場の手前100mで呑気に話す俺達。
オークが居ないわけじゃない。
市役所に大半が居るとしても。
広場には百匹以上は居る。
それを遠目に見ながら話してるのだ。
「でもあの数ならトキヤさんとユナさんとかなら2人で殲滅出来ないんですか?」
「やろうと思ったら出来るな。でもボスとマッチョが揃う方がヤバい気がするんだよ。」
実際。
あのマッチョは動いて俺を攻撃して来た。
なら入口前で騒ぎが起これば。
対応する為に中から出てくるはずだ。
その際。
ボスも両方出てこられたら手に負えん。
俺が単騎でマッチョと他のオークを引き受けてもいいが。
その場合ボスをユナさん達に任せる事になる。
ユナさんがいくら強くても。
刃物じゃ勝てない。
黒オーク相手に使ってたら。
刃が折れたらしい。
そりゃそうだ。
その用途で作られてない物には限界がある。
ユナさんは今STRの暴力で戦うしかない。
その攻撃力に頼るぐらいなら。
俺のLv6の爆弾の方が仕留められる可能性があるから。
この作戦に決まったんだ。
爆発に巻き込まれたら死ぬので。
一人行動を作戦で決めたんだ。
「市役所もいつまで耐えれるか分かりませんし、俺はもう行きますね」
「しくじらないでね。」
「お兄さん気おつけて」
「そっちもなそれじゃ」
俺は1人大回りしながらショッピングモールに向かう。
マユリ達は戦い方を話し合ってる為話はない。
そっちの事はユナさんに任せてあるし。
それにアイはいつの間にか向こうに混ざってたし。
前回と同じ様に侵入する。
ショッピングモール内の前と違う所と言えば。
やはりオークの姿が見えないし。
生物の気配がしない。
ある一部の場所を除いて。
あの場所から動いてないようだな。
位置が分かり少し安堵する。
すれ違いだけは勘弁だった。
俺はその気配を捉えながら。
ゆっくりと。
エスカレーターを階段にして上る。
3階に着き。
南側の角の場所を目指し歩く。
オークが動いたのか。
殺意を俺に向けたのか知らないが。
危機感知が止まらない。
あぁ。
これ絶対貧乏くじだって。
何で俺が。
あぁぁ。
俺しか居ないからか。
自衛隊の助けを取れなかったのは痛い。
まぁ今更重火器で何になるって話だが。
外を任せられるだけでも。
今、隣にユナさんが居た可能性だってあったんだ。
そう思うと無理ゲー感が強まった。
歩き歩くと目当ての場所に着く。
そのは3階の角のテナントで。
中には沢山の棚や物があった記憶だったが。
見るからに物は周囲に無理やり寄せられ。
その中央には堂々と待っている一体のオーク。
そのオークは大きく。
普通オークが人間の成人男性と例えるなら。
目の前に居るのは。
オークの力士だ。
背は3mはありそうだ。
その身長でも全然痩せてるとは思えない横幅。
目の前の店だった場所が小さく思える。
そんなはずは無いのに。
「やぁオークのボスさん」
俺が放った言葉は。
静まり静寂のショッピングモール内では大きく。
オークが反応を示した。
「ナニヲシニキタ」
喋るなんて微塵も思って無かった俺は。
その返しに戸惑い。
硬直するのだった。