表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/108

105.α5


「ほら、二人共早く歩く!」


「まってください、ユナさん…」

「そうです、休憩を提案、しま。す‥」


「ダメよ、貴方達が馬鹿みたいに体力を消耗したのが悪いのよ。」


 俺とユウカは既に満身創痍だ。

 目的地らしい一軒家には着いたが入るのが辛い。

 それはユウカも同じで一緒に座り込んでた。


 それもこれも全ての原因は。

 俺とユウカが激しい死闘を行ったのに休憩してないからだ。

 終わると同時に走らされ。

 止まると殺される様な緊張感で頑張った。


「だからって、こんなに、急ぐなら、途中で止めてくださいよぉ。」


「いやよ、面倒だし。それに死ぬ気で走ればどうにかなったでしょ?」


「「・・・・」」


 文字通り死ぬ気だったよ。

 恐ろしい者が居たから。


「ほら立って。」


 腕を引っ張られ再び立たされる。


 正直言えば疲れてるだけじゃなく。

 足取りが重い。

 だって俺は誰が怪我したのかすら分からないし。

 その度合すらも分からないのだから。


 そのまま引っ張られ玄関から中に入る。

 止まる間も無く勿論土足で進み。

 玄関を開けるとゆったりとした廊下があり。

 右側には2階に上がる階段があったり。

 ドアがいくつもあるが、その中で一番奥のドアに向け背中を押される。


 背中を少し反り気味に歩るかされ。

 やがてドアノブに手が届いてしまった。


「・・・・」


 開けたくない俺がいる。

 いやだ。

 本当に遠慮したい。


 こんなの全然学校を遅刻して教室のドアを開ける方が楽である。

 何だこの異様な気持ちは‥


「さっさと開けなさいッ!」


「いっ、あ。」


 ユナさんの声に驚き。

 ドアを開けてしまった。


 ドアの向こうはリビングだった。

 そして背凭れ側が見えるソファーからはみ出る足。


 おかしい。


 ぐったりと伸びてる足が四足見える。


「あ!トキヤさんだ。」

「ご無事であったかトキヤさん。」

「うっストキヤさん。」


「お、おう?3人とも元気そうだな。」


 モモカにヒヨリとリカの3人は健在だ。

 そしてハルさんも後ろで座ってる。


 って事はマユリとアイが倒れてる。


 俺はゆっくりとソファーに近づき。

 段々ソファーの背凭れで隠れていた二人の姿が目に入ってくる。


 アイはうつ伏せで垂直で固まってるし。

 マユリも横を向いて首が座らずぐったり伸びてる。


「い、生きてるよな?‥‥大丈夫か?」


 魔力はある。

 なら生きてる筈だが寝てるのか?


「ぁ、トキャさん。」


 名前を呼ばれてると認識出来る程度にアイの声が聞こえてくる。


「生きてて良かったよ。本当に‥‥」


「ユナさん私睨まれてませんか?」

「大丈夫よ、ユウカちゃん私も。そんな気がするわ。」


 俺が後ろを振り向き。

 二人を睨みつけてた。

 だってこれ単にMPを限界まで消費して倒れてるだけだろ!?

 良くも大袈裟な雰囲気を出してくれたな。


「まぁ、何だ二人共ゆっくり休んでてくれ、マユリは寝てるか。」


「はい。私より、ヤバそうすから。」


「それじゃ後でな。」


「はい。」


 アイとの話しを終え。

 再び後ろを振り向き二人を‥あれ?


「あ、トキヤさん、ユナさんとユウカちゃんなら上に行きましたよ。」


「なるほど。」


 つまり逃げたと。

 あの二人なんて悪巧みをするんだ全く。

 本当に心配した俺の気持ちが無駄じゃないか。

 まぁ実際に倒れてるから状況が良い訳では無いが。


「あの二人は放置しとくとして、4人は大丈夫なんだよな?」


「うわぁ、トキヤさん放置プレイすか、鬼畜っすね。まぁうちらは大丈夫です、疲れはありますが動けるので。」


「それにしても、やっぱり久しぶりな感じがするよね。たった一日ぐらいなのにさ。」


「モモカ今何て言った、寂しかった?」


「違うから、そんなんじゃっないからね!」


 ならどうしてそんなにテンパるよ。

 てか聞きたいのはそれじゃないんだよ。

 一日?

 

 数時間の間違えじゃないのか?


「俺と離れて今で正確には何時間経った?」


「え~と、26時間とかでしょうか?」


 ヒヨリが言うなら正確性があるな。

 モモカとリカの発言なら多少は疑うが。

 

「26時間。」


「あれれ~トキヤさんの方が、私達美少女と長い時間離れてたから、ヤバかったりぃ?」


「リカっちそれ本当!?]


「絶対そうだよ、だって反論しないんもん。」


「ふぅぅん、そうなんだ。」


 待て。

 なんか勝手に違う捉え方されてるがそれどころじゃない。

 俺は本当に1日以上寝てたのか?

 それ色々やばくない?

 どんなけ強力な効果が矢に仕掛けられてたんだよ。

 永眠しててもおかしくないと思うぞ。


 一日で何が変わったか。

 それが重要だ。

 敵のレベル?

 だから予想以上にエンペラーが強かったのか。

 それなら納得出来るぞ。

 

 つまり俺は今。

 新作MMORPGの大事な序盤に丸一日以上サボったって事だ。

 

「なんて事だ、終わりだ。」

 

 課金で遅れを取り戻すなんて事は出来ない。

 出来るのは睡眠を削るレベル上げだ。

 しかし単純にその作業をしてもこの差は埋まらないだろうな。


 終わりだ。

 俺の記憶で真新しい奴ですらこれは負けるぞ。

 通常のミノタウロスにだって勝てるか分からなくなってしまった。


 それに厄介なゴブリンの脅威度が変わる。

 一体どれ程個体が強くなり。

 数を増やすに増やしたのだろうか。


「もぉ、何も考えたくねぇ~」


「トキヤさんが壊れた。」

「壊れたな。」

「そうですね。」


「お前らも少しは考えろよ!」


 俺は笑い気味に言うが。

 実際マジで洒落にならない状況だと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ