105.α5
「ほら、二人共早く歩く!」
「まってください、ユナさん…」
「そうです、休憩を提案、しま。す‥」
「ダメよ、貴方達が馬鹿みたいに体力を消耗したのが悪いのよ。」
俺とユウカは既に満身創痍だ。
目的地らしい一軒家には着いたが入るのが辛い。
それはユウカも同じで一緒に座り込んでた。
それもこれも全ての原因は。
俺とユウカが激しい死闘を行ったのに休憩してないからだ。
終わると同時に走らされ。
止まると殺される様な緊張感で頑張った。
「だからって、こんなに、急ぐなら、途中で止めてくださいよぉ。」
「いやよ、面倒だし。それに死ぬ気で走ればどうにかなったでしょ?」
「「・・・・」」
文字通り死ぬ気だったよ。
恐ろしい者が居たから。
「ほら立って。」
腕を引っ張られ再び立たされる。
正直言えば疲れてるだけじゃなく。
足取りが重い。
だって俺は誰が怪我したのかすら分からないし。
その度合すらも分からないのだから。
そのまま引っ張られ玄関から中に入る。
止まる間も無く勿論土足で進み。
玄関を開けるとゆったりとした廊下があり。
右側には2階に上がる階段があったり。
ドアがいくつもあるが、その中で一番奥のドアに向け背中を押される。
背中を少し反り気味に歩るかされ。
やがてドアノブに手が届いてしまった。
「・・・・」
開けたくない俺がいる。
いやだ。
本当に遠慮したい。
こんなの全然学校を遅刻して教室のドアを開ける方が楽である。
何だこの異様な気持ちは‥
「さっさと開けなさいッ!」
「いっ、あ。」
ユナさんの声に驚き。
ドアを開けてしまった。
ドアの向こうはリビングだった。
そして背凭れ側が見えるソファーからはみ出る足。
おかしい。
ぐったりと伸びてる足が四足見える。
「あ!トキヤさんだ。」
「ご無事であったかトキヤさん。」
「うっストキヤさん。」
「お、おう?3人とも元気そうだな。」
モモカにヒヨリとリカの3人は健在だ。
そしてハルさんも後ろで座ってる。
って事はマユリとアイが倒れてる。
俺はゆっくりとソファーに近づき。
段々ソファーの背凭れで隠れていた二人の姿が目に入ってくる。
アイはうつ伏せで垂直で固まってるし。
マユリも横を向いて首が座らずぐったり伸びてる。
「い、生きてるよな?‥‥大丈夫か?」
魔力はある。
なら生きてる筈だが寝てるのか?
「ぁ、トキャさん。」
名前を呼ばれてると認識出来る程度にアイの声が聞こえてくる。
「生きてて良かったよ。本当に‥‥」
「ユナさん私睨まれてませんか?」
「大丈夫よ、ユウカちゃん私も。そんな気がするわ。」
俺が後ろを振り向き。
二人を睨みつけてた。
だってこれ単にMPを限界まで消費して倒れてるだけだろ!?
良くも大袈裟な雰囲気を出してくれたな。
「まぁ、何だ二人共ゆっくり休んでてくれ、マユリは寝てるか。」
「はい。私より、ヤバそうすから。」
「それじゃ後でな。」
「はい。」
アイとの話しを終え。
再び後ろを振り向き二人を‥あれ?
「あ、トキヤさん、ユナさんとユウカちゃんなら上に行きましたよ。」
「なるほど。」
つまり逃げたと。
あの二人なんて悪巧みをするんだ全く。
本当に心配した俺の気持ちが無駄じゃないか。
まぁ実際に倒れてるから状況が良い訳では無いが。
「あの二人は放置しとくとして、4人は大丈夫なんだよな?」
「うわぁ、トキヤさん放置プレイすか、鬼畜っすね。まぁうちらは大丈夫です、疲れはありますが動けるので。」
「それにしても、やっぱり久しぶりな感じがするよね。たった一日ぐらいなのにさ。」
「モモカ今何て言った、寂しかった?」
「違うから、そんなんじゃっないからね!」
ならどうしてそんなにテンパるよ。
てか聞きたいのはそれじゃないんだよ。
一日?
数時間の間違えじゃないのか?
「俺と離れて今で正確には何時間経った?」
「え~と、26時間とかでしょうか?」
ヒヨリが言うなら正確性があるな。
モモカとリカの発言なら多少は疑うが。
「26時間。」
「あれれ~トキヤさんの方が、私達美少女と長い時間離れてたから、ヤバかったりぃ?」
「リカっちそれ本当!?]
「絶対そうだよ、だって反論しないんもん。」
「ふぅぅん、そうなんだ。」
待て。
なんか勝手に違う捉え方されてるがそれどころじゃない。
俺は本当に1日以上寝てたのか?
それ色々やばくない?
どんなけ強力な効果が矢に仕掛けられてたんだよ。
永眠しててもおかしくないと思うぞ。
一日で何が変わったか。
それが重要だ。
敵のレベル?
だから予想以上にエンペラーが強かったのか。
それなら納得出来るぞ。
つまり俺は今。
新作MMORPGの大事な序盤に丸一日以上サボったって事だ。
「なんて事だ、終わりだ。」
課金で遅れを取り戻すなんて事は出来ない。
出来るのは睡眠を削るレベル上げだ。
しかし単純にその作業をしてもこの差は埋まらないだろうな。
終わりだ。
俺の記憶で真新しい奴ですらこれは負けるぞ。
通常のミノタウロスにだって勝てるか分からなくなってしまった。
それに厄介なゴブリンの脅威度が変わる。
一体どれ程個体が強くなり。
数を増やすに増やしたのだろうか。
「もぉ、何も考えたくねぇ~」
「トキヤさんが壊れた。」
「壊れたな。」
「そうですね。」
「お前らも少しは考えろよ!」
俺は笑い気味に言うが。
実際マジで洒落にならない状況だと思う。