103.α3
「ふぅぅ、これでよし。」
今現在4時29分。
後1分か。
ギリギリだったな。
ゆっくりと歩き始め。
男性陣とは違う気配がすう方に向かう。
後ろを振り向き。
自分が立ってた所を見れば。
そこにはちゃんと爆弾が取り付けられたプロパンガスがある。
教室を渡り歩いき。
コンロが目に入り。
外側に行けば見事にプロパンがあった。
なので俺は遠慮なく使うことにした。
「4・3・2・1‥ゼロ。」
『ピッ』
「ドォッン!」
「ぁぁぁぁっ、ビビったぁ、何だよ。怖いわ。」
普通の爆発とは違い。
心臓に直で音の衝撃が伝わった感じで身体が反応し。
一瞬だけ息を吸えない状態だった。
何でいつもとこんなに違うんだよ。
爆発の規模も教室が半壊する程度だし。
「音だけだな。」
早々にプロパン爆弾に評価を決め。
奥の方に向かう。
爆発で燃え盛る炎の音。
そして微かに男性達の雄叫びが聞こえてきた。
「良し、尻込みはしなかったようだな。苦労したかいあったぜ。」
校舎の外。
それも外壁側を歩く俺はゴブリンに遭遇する事すら無く。
室内の廊下に目を向ければゴブリンが見える。
それも廊下を埋め尽くす程の数だ。
「はは‥・頑張って男性諸君。」
俺は悪く無い。
悪くない。
「良し、行こう。」
校舎の外周から気配を頼りに進み。
やがて体育館に辿り着いたので。
俺は室内を確認する為に下小窓から中を覗い―
覗かなくても状況が何となく分かってしまった。
下小窓に近づくに連れ見えてくる肌色の物体。
それが窓から中を見えるのを妨げる。
そんな役割だと思える程に見えた。
気色悪い。
最悪だ。
女性が服も着ず。
布すら無い状態でぐったりと横たわってる。
目が合ってる人も居る気がするが。
全くと言って良い程に反応が無く。
よく見ればそれは亡骸で。
生きてる者も居るが魔力感知を使わなければ殆ど分からない。
俺は見るのを止め。
更に外周を回った。
反対側に行けば段々と運動場が見えてき。
運動場は以上に明るく。
直ぐにゴブリン達が居る事が分かった。
そして他のゴブリンより大きく。
朝礼台の様な物に座り。
ぱっと見すれば目がそこに自然と行き着き。
ダルダルと太ったゴブリンが一瞬で脳に焼き尽く。
そのゴブリンは何処は以前俺が片目を奪った奴と瓜二つであり。
違うとすれば両目があるか無いかだろうと思った。
何度見ても大きく並のオーク以上であり。
人なら数人以上が座れる朝礼台が小さく思えてしまう。
そうだ、奴の名前が知りたい。
俺は以前。
キングゴブリンなのか。
ゴブリンキングなのかで迷ったのだ。
さぁどっちだ!
俺は目をいつも以上に見開きスキルを使った。
【ゴブリンエンペラーLv43】
「‥‥‥‥はぁ?」
エンペラーなの?
そして43?見間違い?
【ゴブリンエンペラーLv43】
見間違いじゃ無かった。
「ゴガガァギギギィィ、ギギ!!!」
「あっやべ、バレたわ。」
『バンッ』
何かが物凄い勢いで飛来し。
咄嗟に身を引いた直後に目の前の壁が砕け。
俺が覗き見る様にしてたコンクリートの角は一部分が大きく欠け。
その場所にはゴブリンが潰れた状態で張り付いていた。
やろう。
問答無用で手下を投げやがった。
「逃げるが勝ちだ。」
俺は全力で駆けた。
それも気休めだろうが遮断系をフル活用してだ。
僅か数秒で塀を飛び越え学校の敷地から出る。
そしてそのまま走り。
走り。
住宅街を走り抜ける。
何も考えず一直線にだ。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ、すっ――はぁぁ、はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ。」
区画整理された街は走りやすく。
減速をする必要が無かった為に。
1分もしないで俺は1キロ以上は進んだと思う。
「はぁ、はぁはぁ、はぁぁ。」
まだまだ油断出来ないが。
走り続けても死にそうなので止まり。
後ろを振り返る。
勿論ゴブリンの姿が見える筈も無く。
俺は無事に一時の間を得られた様だ。
「あの野郎舐めやがって‥」
わざと追いかけて来なかったな。
彼奴の投げる予備動作すら見えなかった。
いくら体型があれでもステータスで考えるなら俺よりは速い筈だ。
それなのに追ってこないって事は。
「俺なんて、殺す価値もねぇってか。」
クソっ腹立たしいわ。
それにLvが高すぎる。
今までの様に30後半なら戦う予定だったのに。
まさか43って何だよ。
チートやんけ。
全く。
まぁ良いや。
脱出は出来たし。
体育館に無事に近づけたし。
流石に遠すぎて届かなかったが。
あれだけ接近すれば魔力感知が全体に行き渡る。
そしてあの中にMPが100を超える女性は一人も居なかった。
そのせいで逆に皆が死んでると一瞬思ったんだけどな。
いくらなんでも低すぎるやろ。
初日から捕まった人が殆どだったのかな。
「てか。」
どうしよ。
≪チャットが届きました≫
「おおおおお!忘れてたッ」
俺は急に聞こえてくるアナウンスに歓喜した。
そして急いでメニューを操作して開く。
ユナさんからだった。
【爆発貴方?向かうわね】
あ‥
ダメだ。
ダメだ止めないと。
爆発って十中八九さっきの奴だろう。
それを聞いて皆で話しあって今送った。
どうせそんな所だろ。
不味い。
不味いぞ。
何て言って止める。
10文字だ考えろ。
「んんんんんん~」
【危険
ヤバいどうしよ。
てか俺の現在地って何処‥‥
あれ。
なんか駅に入る地下階段がある。
それに名前書かれてるやん。
ここが駅なん?
浜田山駅?
はい?何処ソレ。
東京育ちじゃないし。
引きこもりには難しい。
だが向こうは誰一人欠けて無ければ8人居る。
きっと一人ぐらい分かるだろう。
【危険合流浜田山駅来て】
凄い読みづらいな。
まま良いや送っちゃえ。
「これどうにかならないんですか?」
聞いてる筈も無いアナウンスの方に呼びかけるが。
勿論反応は無く。
ユナさんからの反応も来るわけが無かった。
一日一回だしな。
≪チャットが届きました≫
「へぇ?」
アナウンスの人が気を利かせてくれたのだろうか。
俺は急いでメニューを開いた。
だが差出人が一瞬で分かった。
【了解お兄さん大好き!】
他に伝える事は無かったのだろうか。
ユウカも無事なのが分かって嬉しいが。
何だが素直に喜べないのは何故だろうか‥
俺は駅の入口付近で座り込み。
一人で考え込むのだった。
主にユウカの事で。