102.α2
生かされてる理由が推測だが餌だった。
気づいてる人と気付いてない人がいるみたいだ。
それなら俺が言うのは余計な一言ってもんだ。
「俺はもう行きますね、時間がもったいない。」
「まっ待ってくれ。」
「どうかしました?」
よく分からない人に話しかけられた。
「娘が、娘が一緒に捕まったんだ、だから私も行きたい。」
「失礼ですが、邪魔でしかありません。その鎖だって自力で取れるんですか?」
「それは‥‥」
ダメだ。
つまりSTRパラメータが低い。
ロクにLvも上がってないんだろうな。
唯一使い道を考えるなら、囮か。
捕まってる男性達を一斉に解き放てば流石に役に立つだろう。
別に無理やり囮をやらせる訳じゃないし。
あり…だな。
「他の方々は此処から出たいって、思わないんですか?」
「思わないわけがないだろッ」
「そうだそうだ。」
「俺も出れるなら・・でもよ。」
「あぁ。」
出たら絶対死ぬって分かってるのか。
「だからって、残ってても助かる可能性もありません、考えてる人が居たら希望を潰してしまって、申し訳ないのですが自衛隊も壊滅ギリギリなので、私達みたいに捕まってる人を助け出す余裕はありませんよ?」
「ほ、ほんとうか?それは。」
「はい。一応これでも、遠くから移動しながら来たので、外の状況は多少は知ってるつもりです。」
此処から最短距離の自衛隊基地の状況なんざ知らんが、何処も変わらんだろうし、助けるにこれる程余裕があるのなら、既に3日とか捕まってる人が居るのが訳わからんくなるしな。
「何なら、私が鎖壊しましょうか?」
「出来るのかそんな事が?」
「ええ。」
この鎖はとても脆い。
俺の今のステータスで考えるなら。
元の人間をセロハンテープで縛ってるのと変わらん。
そして鎖は伸びたりしないから力を入れたら一瞬で亀裂が入って。
逆に苦労してる。
これならさほど労力を必要としないだろう。
「どうする、皆。」
「俺は出たい‥」
「私も。」
「自分も出たいです。」
「一人で残るのは嫌だ。」
「どうせ死ぬぐらいなら一か八かやりますよ!」
「皆さん、声抑えて。」
勝手に盛り上がるのは良いがどうせならバレたくない。
鎖を壊して他の部屋の人達も解放してからだ。
そして一斉に行動を起こすのが良いだろう。
「すまん。」
「それで、今更で申し訳ないのだが、名前を教えて貰っても良いだろうか、青年よ。」
「あぁ、俺の名前はイトウって言います。」
「イトウさんだね、私は森田だ、よろしく頼むよ。」
「俺は犬井だ、来たばかりの君すがってみっともないが、便乗させてくれ。」
「森田さん、犬井さん、こちらこそお願いします。それで自分から一つ提案があります。」
「聞こう。」
「今から皆さんの鎖を破壊しますが、行動を起こすのは少し待ってください。」
「なら、いつ行動するのだね。」
「一人ぐらい腕時計持ってますよね?」
「あぁ、俺も持っている。」
「なら、今何時ですか?」
「今は午前4時だ。」
「なら午前4時30分にしましょう。その時間までに自分はバレない様に他の部屋にも行き、他の男性陣にも話しいをして来ます。」
「見張りはどうするのだね、流石にバレるだろ。」
「その点は心配しないでください。ですので4時30分で異論は無いですよね?」
正直これ以上は構うのにメリットが無い。
さっさと切り上げて他の部屋にも行きたい。
「わかった、どうせ我々だけじゃ鎖から脱出する事も困難だからな、従おう。」
「有り難うございます。では早速」
俺は犬井さんの鎖を指で箸を折る様に壊した。
「えっ?」
「嘘だろう...。」
「夢でも見てるんか。」
無視してそのまま他の人の鎖も壊し始める。
鎖が盛大に落ちて大きな音を出さない事だけ気にかけながら。
ものの一分もかからずに全ての人の鎖を壊し終えた。
「凄い。どんな力なんだね。」
「企業秘密です。じゃ他の部屋に行ってきますね、4時30分に。」
俺は視覚遮断を使い消える。
「居ないぞ。」
「私達は夢でも見てるの、だろうか。」
俺は閉まってるドアを開ければそこに居るのがバレるので。
割れた中廊下側の窓から廊下に出た。
そしてそのまま隣の教室に向かう。
やっぱり居た。
普通に隣の教室にも男性達が集められていた。
まさか手前側の教室全部に居たり‥
考えるのは止めよう。
そして窓ガラスが割れてないので普通にドアを開け入った。
「ギィ!?」
ゴブリンが勝手に開いたドアに注目し始める。
しかし仲の人達も驚いており。
そのまま数秒するとゴブリンはドアを気にするのを止めた。
ゆっくりと捕まってる人達に近づいた。
「静かに。」
暗闇で声を発しれば。
捕らわれてる誰かだと思ったのだろう。
全員が数秒で理解したのか動きも止め停止した。
「実は色々あって、隣の教室から来た者です。」
「さっきのドアも…」
「はい、私の仕業です。」
誰も見えない事で全員が顔をキョロキョロと動かすが気にしない。
「それで時間がありませんので、最後まで聞いて下さい。隣の教室の人達の鎖は今、全部壊してある状態です。そして4時30分になると一斉に行動を起こす作戦なのですが、皆さんこの機会に脱出を考えませんか?勿論鎖は自分が壊します。」
「リスクが高すぎる。やる価値は――」
「先程、一人の男性が殺されました、ゴブリンの気まぐれで。良いですか、このままじゃ確実に殺されるのが落ちですよ?」
見た訳じゃないがまぁゴブリンなら殺してるだろう。
違うにせよ、餌で殺される可能性が高いわけだし。
「選択肢は―」
「ありません。人として生きたいとまだ望むのならこれが最後のチャンスでしょう、それに女性達を助けに行く人達は行く作戦です。」
「どうします?」
「賛同するしかあるまい。」
「では鎖を壊しますね。」
同じ様に手早く鎖を壊した。
「それじゃ時間を確認しますね、4時30分です。」
「あぁ分かった。」
俺は急ぎ次の教室に向かった。
勿論出る時にドアを開けたが名ばかりの見張りは対して気にもかけなかった。
そして次の教室に行きまた同じ工程を繰り返す。
時間一杯まで繰り返す。
一人でも多く助かる確率の為に。