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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゲームのような世界で俺はスチルを回収する。 でもロードのやり方が、飛び降りっておかしくないですか?

「あんたなんて最低。私の気持ちを知ってもてあそんで。私は、あなたじゃない人と幸せになります」


「ま、待ってくれ。俺じゃないって誰と?まさか野球部のキャプテンか?」


「え、あんたになんて関係ないでしょ。さようなら。もう話しかけてこないで」


 俺の名前はカズキ、県立高校の3年生だ。顔は平凡だけど俺はあることに巻き込まれている。先ほど俺に絶縁をしてきた女性は、クラスの委員長でありヒロインの一人だ。俺は、彼女に絶縁され続けている。

 もう通算何回目だろうか?彼女が走り去った後に、意中の彼に抱き着くのを何回も見ている。現れる彼が完全ランダムだったため、そんな苦行を俺は続けていた。


 サッカー部のイケメンが、また現れた。何度も見慣れた、そのスチルはもういらない。そろそろ野球部のキャプテンか、違う相手が出てくれないと。ヒントと言う名の指令が達成できない。


『ヒント:委員長はイケメンが好き。ざまぁされて最後に出てくる彼氏は毎回変わります。全5人スチルを頑張って集めよう。』


 俺は、サッカー部イケメン3回、バレー部の後輩2回、吹奏楽部先輩1回、陸上部同級生2回

というのを見てきた。せめて、2回だぶったら、もう出ないという仕様にしてもらいたかった。

 俺は、彼女が彼に抱き着いたのを見守り終えると、それに興味を失くして校舎の屋上に向かった。そして屋上に向かいながら考えていた。


(ロード個所は、彼女の攻略を始めた2ケ月前だな。フラグも全て元通りだ。4枚まで集めたんだ。俺はまだ諦めない。このループ。くだらないエンドレス高校生活を終えてみせるんだ。もう着いたか)


 屋上に着いた。今日も清々しいような快晴だった。絶縁後同じスチルだったら、

やり直しをしなければならない。いわゆるロードだ。

ロードをしなければ、1年の4月に戻されるだけだ。正直言ってそこまで戻るのは時間の無駄だった。

 ロードするには、ここから飛び降りるだけだ。何十回と繰り返してきた行為に、

俺はすっかり感覚がマヒしていた。

 校舎の端に立つ。見慣れたグランドを見下ろす。すこし風が強いな。委員長が彼と

下校している。さっそく仲が良いのを見せつけられているようだった。俺は周りを見渡して、

誰にも見られないように、校舎から飛び立った。

 まあ、見られても問題はない、この間は少し見つかって先生などに組み伏せられたりして、

1日棒に振ったりした。まあその後、近くの廃ビルがあったので、場所と時間が変わるだけで、

やることは変わらなかった。

 ただ一つ言いたいことがあるとするなら・・・


(何度繰り返してもこのロード方法だけは納得がいかない。)


 こんな慣れたように飛び降りる俺だったが。誰にでも初めてはある。

初めて攻略を失敗した時のヒントが、ロードのやり方だった。


『ヒント:フラグが折れてやり直したくなったら、ロードをしよう。ロードは簡単。

校舎や高い所から飛び降りれば、指定した日付からやり直せるよ。』


 そんなふざけたヒントを見て、初めは言葉を出せないほど驚いていた。その前に、色々ヒントを活用してスチルを手に入れてたため、ヒントに偽りは無いとは思っていたが、ロードをしないとスチルが集まらないのが確定したため、恐る恐る飛び降りた。


 その飛び降りを経験したことにより、恐れるものは無くなった。「俺は絶対に

スチルコンプをして、このループを終わらせるんだ」と心に決めた。


 飛び降りながら、走馬灯が浮かんできた。始めの頃はスチル集めは楽しかった。


「かずくん。好きです。付き合って」


「カズヤ、私のものになりなさい」


「カズっち、だーいすきぃ」


「かず。食べたい」


「かずやさんが逃げるのがいけないんですよ。だからもう逃がさない。卒業してもここで一緒に暮らしましょ。あはははは」


 幼馴染、お嬢様、先輩、後輩、そして関わりたくないストーカー、攻略成功のスチルは一部を除いて思い出になりつつある。なお委員長は、サブヒロインの立ち位置だった。

 しかし、回収率が80%を超えてから、スチル回収のヒントがおかしくなっていった。


「かずくん。それは裏切りだよ。私許さないから。トモキ君も許さないって言うと思うから」


「カズヤ、あなたがそんな下衆だったなんて知りませんでしたわ。二度と顔を見せないで下さる。

まあ明日からはあなたは、この高校に居られなくなるのよ。転校させてあげる」


「かず。まずい。部長の方が美味しい」


「かずやさんには、私の愛が届かないなんて、そんなことはないの。きっと何かの間違いよ。私が目を覚まさしてあげる。大丈夫、痛いのは一瞬だから。ナイフと包丁どっちがいい?ふふふ。あはははははは」


 こんな感じで、バッドエンドのスチル回収、特に最後のヤンデレについては、もう2度と会いたくないと思われた。

 集めるのは非常に苦労したが、でももう解放されるんだ。この「回収率98%」の文字だけが俺の救いだった。

 

「次こそ、2枚回収するぞ。」


ぐしゃ。


 校庭に、赤色の液体が広がっていく。


『ヒント:委員長はイケメンが好き。ざまぁされて最後に出てくる彼氏は毎回変わります。全5人スチルを頑張って集めよう。あと一人。』


 あと一人がなかなか出ない。これが最近の詰まりポイントだった。ヒントなのに完全ランダムを匂わせる鬼畜っぷりである。このヒント、もはや指令に俺は悩まされていた。

 あの後5回ほどループして、無事99%になった。


(野球部キャプテンじゃなくて、弓道部の童顔ショタボが相手だったとは・・・

委員長勘弁してくれよ。)


 そんな中、次のヒントが表示される。


『ヒント:最後は全員のフラグを折って、ざまぁされたら、最後は校舎から飛び降りてゲームエンド。最後は華々しく美しく散りましょう。あともう一息がんばれ』


「だーーーーーーーー。最後は飛ぶだけだ。このつらいループもようやく終わる。やったーーーーー。」


 俺は、このループが終わりが見えて心のそこから喜んだ。でも飛び降りでループが終わったら、俺はどうなるんだ?そんな疑問が浮かんでいたが、まずは順番に振られよう。



/*********/


 あのバッドエンドを総ざらいした。


 かなり昔に攻略したヒロインたちの罵倒に心を折られそうになりながら、最後を飾る屋上に俺は戻ってきた。

 まあもう1回心を折られるのは嫌なので、直近のロードポイントをここに設定したい。


(それにしても、ここにはループ生活でよく通ったな。2周目の失敗からの飛び降り、はたから連続して見れたなら、毎日飛んでいたな。戻るためとは言え、無茶したものだ。だが、もう大丈夫だ。これで終わるんだ。飛ぶのには慣れているんだ。さあ飛ぼう。)

 

「あー、長かった高校生活もようやく終わりか」


 誰が聞いていないが、俺はつぶやいた。このループと決別するために。

ふと、通学路の方向を見るとヒロインたちが彼氏と帰っている。

 委員長が、サッカー部の部長と帰っているのが見える。お嬢様が執事見習いと、先輩が俺の友達と、後輩が部長と歩いている。それぞれの俺を「ざまぁ」するための彼氏と帰っているのが見える。

 俺が飛び降りる前に、絶望させるための演出だと言わんばかりによくできていた。こうもタイミングよくみんなを見れるなんて、まるでヒロインが全員盗られたのを確認させるように。

 俺は何もかも吹っ切れた。

(これで良いんだ)

 屋上の端に立つ。昇降口付近に居た幼馴染のアユカと目が合ったような気がした。


「さて回収するか。最後のスチルを」


 俺は飛んだ。校庭がどんどん近づいて来る。そしてどんどん加速していく。


どん。


 少し位置がズレて、植え込みに落ちてしまった。


『スチル回収100%おめでとうございます。残りの高校生活を普通に楽しんで下さい』


 そう頭の中に響いてきた。慌てた様子でアユカが駆け寄ってくる。


「かずくん、何やってるの。どうして、ねえどうして。」


 幼馴染の声が遠くにする。あれだけ


「どうして飛び降りたのよ。う、う。」


(どうしてそんなに泣いているんだよ。あんだけこっぴどく俺を振ったのに。最低な俺のために泣いてくれるのか)


 頭を撫でてやりたいけど、痛くて動かないがせめて謝ろう。


「ご、ごめん。あ、ゆか。」


 アユカには、色々お世話になっていた。特にこのバッドルートでは、無茶苦茶な対応をしていた。

 『幼馴染は基本的に長年の付き合いのせいで、好感度が初期で高い、まるでチュートリアルだ』とヒントに書いてあった。そのためアユカに振られないといけないから、悪意をたくさん込めたイベントが多かったはずだ。


(はずだったんだ。なのに・・・どうして泣いてくれるんだ。)


「アユカ、ど、うして」


「私、かずくんの様子がおかしい事知ってた。ずっと知ってた。だからトモキ君にお願いして

付き合ったフリしてたの。私が好きなのは、かずくんだけだから。」


 アユカが、告白をしてくれた。この今まで一番の温もりを感じる。俺がそれを愛だと思った。でも、もう遅かった。まぶたがとても重い。体が冷え始めていた。植え込みに落ちたとはいえ、

この高さでは、助からないようだ。


 泣いているアユカの顔が頭から離れなかったが、俺はそっと意識を手放した。

このループを終えたことや、最後にアユカの愛を感じられた事に満足しながら・・・


(高校3年間×20週は長かったな。60年長かった。)


 痛みを感じることができなくなった俺は安らかな微笑みを最愛のアユカに浮かべながら静かに息を・・・


「かずくん。死んじゃ。やだーーーーーー」


 そんな叫び声がいつまでも耳に残った。



/*************/


「開式の辞」


「令和3年度 県立オオノザカ高校の入学式を挙行します」


「えっ」


 俺の通算21度目の高校生活が始まることに、気づいてしまった。

どうやらスチル取得率100%が終了条件ではなかったと、俺は絶望していた。



『ヒント:ループもロードもありません。よい高校生活を。』


 この21周目の高校生活で、初日からアユカに告白し隠しスチルを3枚入手し、普通に卒業したのは、また別の話。



/******/

ご覧いただきありがとうございます。


京安藤しーぷです。



この作品を面白いと思ったり、

他にもいろんな作品読みたいと思ったら、


評価の★を押していただけると、

私の作品作成のモチベーションがあがります。


ここが、ダメとか、

この部分が分かりにくい等ありましたら、

一言ください。

次回作の糧にさせていただきます。



余談。

飛び降りダメ絶対。


新生活始まる季節。

いかがお過ごしでしょうか?


仕事やりながら、毎日更新とか無理ゲすぎて、

他の作者さんがすごすぎると思いました。


休日に5本ストックとか無理だから。


そんな感想を抱きました。


皆様もお体にを気をつけください。


ありがとうございました。

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