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第八十話 結界内の戦い②

 ネスは紫色のオーラを強めると、一気に竜巻から弾けるように脱出する。


 そして全裸で傷だらけになった身体を気にすることなく、上空からゾーラへと飛びかかった。


「アハハハハ!!! 面白いこと言うわね!おばあちゃん!」


「チッ! 化け物め!」


 ゾーラは魔力の風に乗ると、ネスの攻撃をかわす。

 ネスが激突した地面が轟音を立て、砂塵が巻き上がる。


 ネスは爛々と左右非対称の両眼を光らせ、笑いながら、虚空に魔法陣を描く。


「アハハハハ!!! 楽しいわね! おばあちゃん!」


 そして、紫色に光る魔法陣から無数の黒色の剣や槍がゾーラに向けて発射された。


「そのいつもの黒い武器、通じんぞ!」


 ゾーラも虚空に魔法陣を描き、バリアを張る。

 勢いよく向かってくる黒色の武器は、バリアに当たるとガツガツと音を立てて消滅するが、数本がバリアを通過し、ゾーラの頬を掠めた。


 宙に浮いたネスは指を舐めながら、じっとその様子を観察する。


「……ふーん なるほど、やっぱり私に相当のデバフかかってるわね」


 ゾーラの魔力は倍以上に跳ね上がり、ネスの魔力は相当に抑制されている。

 大抵の魔術や武器ならば、この結界内でゾーラに通用するはずがない。

 しかし、何本かはバリアすら通過してきた。

 ゾーラは頬から一筋の血を流しながら、地面に刺さった何本かの黒色の剣や槍がやがて消えゆく様子を見遣る。


「それでもこの切れ味か。いったい何なんじゃそれは」


 ネスは全裸のまま楽しそうに応える。


「これはね…… 英雄になり損ねた者たちの死の寸前の思念が籠った武器よ。この世には、歴史書にも残らない無念のまま亡くなった優秀な戦士たちは山ほどいるの。そんな彼らの供養の為に有効活用してあげてるのよ! 私って優しいでしょ♡」


 それが本当ならば、ネスの出す黒い武器は聖剣や聖槍に準ずる程の格式の魔導兵器ということになる。

 そして、ネス自身が少なくとも数百年単位で生きている化け物ということにもなる……


「……フン 悍ましいな。どうやらはったりではなさそうじゃ。いったい何年生きとる化け物なんじゃお前……!」


 ネスは杖を構えるゾーラにクスクスと笑いかける。


「あら♡ 信じてくれたのは貴女が初めてだわ! 大したもんね、おばあちゃん♡」


「ペラペラとお前の秘密を喋って大丈夫か? お前。舐めとるのか?」


「もちろん、舐めてるわよ、おばあちゃん!」


 ニィと残虐な笑みを浮かべながら、ネスは両手を掲げ、魔法陣を構築する。


「私の方が強いもの! どれだけバフをかけても! 私にデバフをかけても! 無駄よ、おばあちゃん♡」


 そして再び無数の漆黒の刃が、ゾーラへと襲いくる。


 ゾーラは風で空を高速移動しながら、刃をかわし、また、杖からの光弾で破壊する。


「無駄か、どうかは……」


 そして、森林が騒めき始め、ゾーラの魔力のオーラが増大し始めた。


「やってみんとわからんじゃろ?」


 そして、緑色のオーラがゾーラの身体で凝縮し、眩い光を放つ。


 ネスが目を瞬くと、ゾーラのいた辺りには同様の魔導服を纏った若い女性が立っている。


「……!? へえ……」


 楽しそうな笑みを浮かべ、ネスはその若い魔術師を見つめた。


「珍しい魔術を使うわね? 随分と美人さんに若返っちゃったじゃない!おばあちゃん!」


 しゃんとした立ち姿、漆黒の長髪は輝くように腰まで伸びる。

 ゾーラは『魔導大教授グランドプロフェッサー』と呼ばれた全盛期の姿へと若返った。

 結界内でだけ、数分限定で使える奥の手である。


 ゾーラは杖を掲げ、虚空に魔法陣を描く。


「人をあまり舐めるなよ、ネス。そのニヤけた顔を消してやる」


「……ふーん やってみなさい♡」


 余裕の笑みを浮かべるネスに、ゾーラは杖を振るい、呪文を唱えた。


「翠耀の天櫂、風の道を開けよ」


 すると、魔法陣から薄く翠に光る人型の何かが現れ、ネスが構える間もなく、まるですり抜けるようにその身体を通過する。


「……へえ やるじゃない」


 次の瞬間、ネスの胸に穴が開き、真っ赤な血が噴き上がった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今のところは優勢のようですが。
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