第七十六話 炎滅
ディーンとリュディガーの攻撃は次々とデミウルゴスの身体を切り裂いていく。
「デュブァァザァォァ!!!」
この国でも屈指の戦士である彼らの打撃は通常の魔物で有れば、とっくに倒れていてもおかしくないものであるが……
どれだけ刻んでも、ぶっ飛ばしてもデミウルゴスは咆哮をあげ、向かってくる。
ディーンが炎と水の刃でデミウルゴスの腕を切り飛ばし、リュディガーの大剣が胸の真ん中を貫く。
デミウルゴスは倒れて伏せるが、咆哮を上げ、また再生を始める。
「ドュブマミヤイザジィィィ!!!」
もう何度目かわからない攻撃を喰らわせ、ディーンはデミウルゴスの耐久に呆れた。
(くそっ! 全然仕留めた気がしない!)
リュディガーも大剣を怪物に叩きつけながら、苛立ち始める。
「オラァッ!!! 何回切ってやりゃあいいんだ!? このクソ珍獣がよぉ!!!」
ディーンは苛立つリュディガーに、ひとつの提案をする。
「リュディガー! こうなったらヤツを真っ二つにしてやろう。気持ち悪くてやなんだけどね……!」
舌打ちをしながら、リュディガーは大剣を構え直した。
「フン! 本当面倒な珍獣だぜ!」
そして、突進してくるデミウルゴスに対して、2人は散開し左右から迎え撃つ。
デミウルゴスは咆哮を上げ、背中から腕を生やして拳を繰り出してくる。
「腕が増えた! 気をつけろ! リュディガー!」
「わぁーーってる!!! うるせえよ!!」
2人は拳の激しい弾幕をかわし、ディーンが8本の腕を斬り飛ばした。
「オラァッ!!!」
リュディガーが胴を横に薙ぎ、ディーンが頭から胴まで縦にデミウルゴスを真っ二つにする。
音もなく、四つに割れたデミウルゴスは青い血を吹き出し沈黙した。
2人は息を吐き、千切れた四片を見つめる。
「……どうだ?」
「バラッバラッにしてやったぜ! これでまだ再生するなら、生物じゃねえ」
さすがに戦闘の終了を確信した瞬間、2人は信じられないものを見る。
「おい…… あれ……」
デミウルゴスの四片がうぞうぞと動き始めたのだ。
教祖ガギエルは、数えきれない多くの教徒の狂信を集め、邪悪な魔力を蓄え、デミウルゴスとなった今、身体を再生することが出来る。
膨大な魔力が尽きるか、核である埋め込まれた聖者の頚骨を消滅させない限り、デミウルゴスを倒すことは出来ないだろう。
咆哮を上げながら、デミウルゴスは身体を再生させ、怪光線を吐き出した。
「……テヘン、ガグスバルゥ!!!」
2人は光線をかわし、また武器を構える。
「もう……! 勘弁してよ……」
「上等だぜ……! どこまで解体したら戻らねえのか試してやる!」
リュディガーは凶悪な笑みを浮かべ、デミウルゴスに向かおうとするが、ディーンは空を見上げ、何かに気づく。
「……! リュディガー!」
呼び止めたディーンが指さす先を見て、リュディガーは明らかに不機嫌になる。
「……チッ!」
そして、向かってくるデミウルゴスには出現した大きな猪がぶつかっていった。
「隊長!」
アンナの召喚した猪の魔獣デビルボアである。
結界外のアンナに、ディーンは微笑みかけた。
「よしっ! ナイスゥゥーー! アンナちゃん!」
「……ちゃんづけは! もう! 今日の晩ご飯は貴方の苦手なもの出しますからね!」
怒るアンナを横目に、ディーンは猪と組み合うデミウルゴスに向かう。
「……テヘン、ガグスバルゥ!!!」
咆哮と共に吐き出された光線を、両刀で弾き、ディーンは伸ばした刃でデミウルゴスの胴を突き刺す。
「労ってよ。これで僕たちの勝ちなんだから…… さっ!」
ディーンは突き刺したデミウルゴスを両刀を振るい投げ飛ばす。
デミウルゴスが勢いよく吹き飛ぶ先には、大剣を構えるリュディガーがいる。
「オオォォォッラァァァァ!!!」
リュディガーが思い切り振りかぶった打撃は、デミウルゴスを空へと弾き飛ばす。
「ガグスバルゥゥゥゥ!!??」
結界を破った際に身体に熱傷を負いつつも、咆哮を上げ、吹っ飛んでいくデミウルゴスは光線を吐き出すが、その攻撃が最期となる……
その熱を遥かに上回る赤い熱線がデミウルゴスの巨大な身体を包み込んだ。
「……ゲフンッ!?!?」
断末魔と共にデミウルゴスは塵となり、スラム街の空はまるで赤い流星が走ったかのように、一瞬の間明るくなった。
青く晴れた空に巨大な鳥が旋回する。
その背に乗る人影にリュディガーは大声で怒号を放った。
「チッ! 見下ろしやがって! おい! 降りてこいや! アグレアイオス!」
ディーンは軽く手を上げ高く飛ぶ鳥に敬礼する。
「総長。出陣ご苦労様です」
巨鳥の背に乗るアグレアイオスは地上の部下たちに簡易な敬礼をした。
「第二部隊、第三部隊。ご苦労様だったな」




