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第五十七話 ペッパーの過去⑭

 ブラックピッグは部下の射殺体とテロリストたちを見比べながら、そのリーダーの顔に思い当たり、怒りに顔を歪める。


「ベンパー……とかいったな⁈ おい! 覚えてるぞ‼︎ 俺様の頭を蹴飛ばしてくれた小僧だ!」


 ペッパー率いる盗賊団と、ブラックピッグの配下に忍び込ませた兵たちは銃口を傭兵団に向けて威嚇した。

 ペッパーは余裕の笑みを見せながら、まるで自分の庭のように死体の周りを歩き回る。


「ヒャハハハハハハ‼︎ おい! それ以外に覚えてることがあるだろう⁉︎」


 後ろの方で震えながら戸惑う役立たずの生き残りの部下たちをチラと見やりながら、ブラックピッグは舌打ちし、最近勢力を伸ばしているらしい盗賊団の存在を思い出した。


「フン‼︎ 最近貴族の屋敷を荒らしまわってる盗賊ってのはお前のことか! ……ははっ! そんな雑魚ども引き連れてこの俺に勝つつもりか? 仇打ちのつもりか知らんが、泣かせるねえ!」


 ペッパーはこの数年、鍛錬を積むと共に、スラム街や貧困層のならず者たちを集め盗賊団を結成していた。

 もちろん、復讐を遂げる為である。


「ヒャハハハハハハ‼︎ 相変わらずブサイクだな! 豚野郎‼︎ サブレに飼われてますます豚に磨きがかかってやがる‼︎」


「チッ‼︎ ……ぶっ殺してやるぜ‼︎」


 ポイントを巡回している衛兵たちから連絡が入ったり、戻ってきたりするのはまだまだ時間がある。

 盗賊団約80名に対し、部屋にいる生き残りの傭兵はブラックピッグ含めたったの4名。

 この場の数では盗賊団の方が圧倒している。

 ブラックピッグの女はその腕を掴みながら、焦ったように叫んだ。


「ねえ…… なんなのアイツ⁉︎ はやくやっちゃってよ!」


「うるせえなあ…… あっちで待ってろ」


 そんな馬鹿2人を興味なさげに見遣りながらペッパーは小銃を弄り誰ともなく、呟く。


「……ここ数年、異世界、とやらから導入した技術で銃器の精度が上がった。結局、数が多い方が勝つんだよな、銃撃戦は」


 そして、無造作に銃を放り出すと微笑みながらブラックピッグに大声で言い放つ。


「おい、豚野郎。この場の人数はこっちのが多い。このまま銃撃戦をやってもいいが、それじゃつまんねえ! 何しろ三年も待ったんだ…… 銃なしでオイラとお前でタイマンやらねえか? なあ! いいだろう⁉︎ 悪い条件じゃないはずだ!」


 ブラックピッグはその舐めたような提案に一瞬キレかけるが、窮地を脱する機会と判断し、笑みを堪えきれない。


「……はっ! 舐められたもんだな! いいだろう! お前の部下の前でボコボコにしてから無様にぶっ殺してやるぜ!」


 前に出るペッパーに、部下たちは怒りに満ちた顔でブラックピッグを睨みつけ、懇願する様に言った。


「ベンパーさん……! こいつのとどめは俺たちにやらせてくださいよ!」


 盗賊団のほとんどは、サブレに恨みがあり、ブラックピッグに税金滞納のカタに妻や娘を連れて行かれた者も少なくない。

 懐からナイフを取り出しながらペッパーは背中で返事する。


「分かった! 分かった! だが豚の解体のやり方はオイラが実践してやるぜぇ……」


 ブラックピッグは立てかけてあったハンマーを持ち前に出ると眼光を鋭くする。


「フン‼︎ コソ泥のクソガキがぁぁ! 調子のんなよ!」


 足元でうめく瀕死の部下たちを踏みつけなからブラックピッグは一瞥することもない。


「うう……! ブラックピッグさん……! たすけて……」


 そして、ブラックピッグはハンマーを振りかぶって突進を始めた。


「クソガキ、俺様の怖さと強さ、思い知らせてから殺してやる!」


「はっ! 養豚がなんか吠えてやがるぜ‼︎」


 軽く身を捻り、ペッパーはブラックピッグのハンマーによる攻撃をかわす。

 打撃が当たった石畳が軋み、砂埃が上がり、ブラックピッグはペッパーの動きを追う。


「舐めんなよ! クソガキ‼︎」


「おっと‼︎ 豚のくせに中々素早いじゃねえか! ヒャハハハハハハ‼︎」


 ブラックピッグのハンマーによる攻撃をペッパーはひょいひょいとかわしていった。


「チッ‼︎ クソ野郎がぁ!」


 そして、攻撃をかわし、交差した瞬間にペッパーはナイフをブラックピッグの肩口に突き刺す。


「ぐあっ⁉︎」


「ヒャハハハハハハ‼︎ 舐めてんのはてめえだ! クソブタ‼︎」


 ペッパーは両腕を広げて、肩口を押さえ床に伏せるブラックピッグを嘲笑った。


「チッ……!」


 ブラックピッグは怒りに任せて立ち上がり、肩口からナイフを引き抜いた。

 この男には魔力を何かに変換したり、具現化するといった応用の才能は無いが、一つだけ魔術を応用した基礎の能力を切り札として持っていた。


「……ハァァァァァァァ!」


 魔力を身体に纏わせると、ブラックピッグの身体が数割増しに膨れ上がり、皮膚が青紫色に変色する。


 ブラックピッグは勢いこんで吠えかかった。


肉大肥にくだいび‼︎ どうだあ! 逃げてもおせえぜ! ひねり殺してやるぜぇ! クソガキィィィィ‼︎」


 そして、再びペッパーに向かって突進を始める。

 しかし、あっさりとハンマーの一撃をかわされると同時に大腿部に鋭い痛みがはしる。


「……グアッ⁉︎」


 見るとペッパーのナイフが突き立っており、ブラックピッグは脂汗を流しながら膝をつく。

 ペッパーは豚を見下ろしながら嘲笑った。


「なっちゃいねえ……! 訓練不足じゃねえかあ⁉︎ クソブタァァ?」


 ブラックピッグの技はただ筋力を強化し、膨らませるだけという大したことはないものであり、今のペッパーにとってはもはや驚異ではなかった。


「……このっ! 一撃入れたぐれえで調子のんなぁぁぁぁ‼︎」


 怒りで痛みを堪え、ブラックピッグは一つ覚えのように突進するが、ペッパーの右ストレートをその頬に受け床へと倒れ込む。


「グァァァァ⁉︎」


「はあ、弱えな…… おいおい、こんなのに歯が立たなかったのかあ? 逆にムカつくぜ」


 ペッパーはゴミを見る目でブラックピッグを見つめながら、その頭を蹴り付けた。


「くっ! ……グアッ!」


「おい、豚ぁ⁉︎ 命乞いはしねえのかぁ?」


 這いつくばりながらもブラックピッグはペッパーを睨み返す。


「はっ‼︎ クソガキ! やるならさっさとやれ‼︎」


「ヒャハハハハハハ‼︎ ご立派なこった‼︎ 楽しくなってきやがったぜぇ‼︎」


 そしてペッパーは笑いながらブラックピッグの右目にナイフを突っ込んだ。


「ぐっ……! ギャァァァァァァァ‼︎」


 目から血を流しながら叫ぶ黒豚を見ながら、ペッパーは高笑いする。


「いい声で鳴くじゃねえか……! ヒャハハハハハハ‼︎ おい! 豚野郎‼︎ どうだ? 気分は?」


「……あ、アアッ!」


 床を這って逃げようとする黒豚の背中を踏みつけると、ペッパーはその髪を掴み引っ張る。


「あ? 聞こえねえなあ……! 次は鼻いっとくかあ? なあ⁉︎」


「……ま、まってくれえ! しゃ、しゃべる! サブレのことは…… なんでもしゃべるからあ!」


 自分の立場が悪くなれば情けなく命乞いする黒豚に苛立ちながら、ペッパーはブラックピッグの頭を床へと叩きつける。


「ぐはっ⁉︎」


「いるかよ、豚野郎。おい! 他に言うべきことがあんだろ? なあ!」


 恐怖に震えながら黒豚は這いつくばり、赦しを懇願する。


「……ず、すみませんでしたあっ! あ、あやまるっ! あやまるからあっ‼︎ ……ぐはあっ‼︎」


 再びペッパーは豚の髪を引っ掴んで床へと思い切り叩きつけた。


「おい、違うだろ? 謝るべき相手がわかんねえか? 豚野郎」


「な、なんだってぇ……? ギャァァァァァァ⁉︎」


 返事と共にペッパーはブラックピッグの指の骨を折った。


 惚けたように血塗れになったブラックピッグに呆れながら、ペッパーは後ろに控えていた部下たちに後を任せることにした。


「もういい…… おい、お前らそれを好きにしな」


 盗賊団の男たちは残った傭兵たちをさっさと射殺すると、各々の武器を手に床に這うブラックピッグを冷たく見据える。


「おい、ブラックピッグ! 覚えてるか? 俺はお前に父を殺された者だ……」


「俺はお前に妹を連れて行かれた! それともいちいち覚えちゃいねえか? なあ‼︎」


 その恨みのこもった冷たい目にブラックピッグは久々に恐怖を覚え、悲鳴を上げた。


「ヒィィィィィィィ⁉︎」



 ブラックピッグの女はペッパーを見ると震えながら後退りする。


「ひぃ⁉︎ ねえ! 助けてよ! な、なんでもするわよ⁉︎」


 すかさずペッパーの拳が女の頬を打ち、床へと吹っ飛ぶ。


「グアッ⁉︎」


 ペッパーはゴミを見る目で倒れた女を見つめる。


「黙れよ、クソビッチ。おい、トッド爺さんとイネ婆さんのことは覚えてるか?」


 戸惑いながら女は自分が殺害に関与した者たちの名をそれと知らず反芻する。


「と、トッド? イネ? ……あ、あのごめんなさい! ……ぐべぇぇぇ⁉︎」


 ペッパーの蹴りが女の顎を打ちつけ、床を転がった。

 ペッパーはますます冷えた目で女を睨みつける。


「とりあえず、謝っただけ、か? クソ女。お前のせいでトッド爺とイネ婆は死んだ。脳みそがクソだから覚えちゃいねえか?」


 そして、ナイフで女の指の爪を剥いでいく。


「……ギャアアアアアアア‼︎」


 女は10本分すべての指の爪を剥がされると、よろめきながら床を這い、尚も命乞いする。


「ま、まって! お、女を殺すの⁈ ひ、ひどくない? ねえ!」


 ペッパーは3年前の地獄のような光景を思い出しながら、冷ややかな目で女を睨みつけた。


「随分と都合のいいこと言いやがるなあ! ヒャハハハハハハ‼︎ お前は豚野郎に従って随分と人殺しに加担しただろう? 一度でも命乞いに耳を貸したことがあったか?」


「た、たすけて! ……ヒィィィィィィ‼︎」


 そして、ペッパーはナイフを取り出すと女の喉元を掻き切った。


 そして返り血を拭うと、部下たちによってミンチになりつつあるブラックピッグを見つめ、空虚な目をする。

 そして大声で部下たちに号令を飛ばした。


「フン……! おい、豚を始末したらポイントごとに散らばった警備兵を皆殺しにするぞ」


「「「はい!」」」

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― 新着の感想 ―
[一言] 才気ある者を正しく生かせず、闇落ちさせたらこうなったわけですね。
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