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第五十三話 ペッパーの過去⑩

 ペッパーは道端のベンチに腰掛けながら時計を見上げる。

 約束の時間はもうとっくに過ぎていた。


「じいさん、遅えなあ……」


 そうして辺りを見回していると、弱々しく歩く人影が見えてきた。

 その人影に思い当たったペッパーは慌てて駆け寄る。


「な⁈ なんだ‼︎ どうした⁉︎ じいさん!」


 胸から血を流し、吐血しながらトッドは息も絶え絶えにその場に蹲った。

 ペッパーはトッドの肩を支えながら、その青ざめた顔に死相を見る。


「……ベンパーくん すまん…… ワシは刺されたようじゃ」


「しっかりしろ! じいさん! ……クソッ‼︎ アイツらぁぁぁ‼︎」


 こんなことをするのはサブレ一味しかいない。

 ペッパーは倒れかかるトッドの頭を抱きながら、怒りの咆哮を上げた。


 トッドは掠れた声でなおもペッパーを嗜める。


「怒るな…… ベンパーくん…… ウゼール様の遺言を…… わすれるなよ……」


 トッドはただその一言を伝える為だけに、瀕死の身体を引きずりながらペッパーの元へとやってきたのだった。

 最期の言葉を言い終えたトッドは静かに目を閉じ、穏やかな表情で息を引き取った。


 ペッパーはトッドの死を認めると、空に向けて怒りの雄叫びを上げた。


「ちくしょぉぉぉぉぉぉ‼︎ サブレェェェェェェ‼︎」


 ……皮肉にもトッドの献身はペッパーの怒りに更に油を注ぐ結果となってしまう


 その時、背後から被せるようにして女の悲鳴が響いた。


「キャアアアアアアアアアアア‼︎」


 ペッパーが振り返るとそこには悲鳴をあげる女が立っている。

 わざとらしく怯えた仕草をするそいつは、ブラックピッグの仕込みでトッドを嵌めた女だった。


「助けて! こいつが人を刺したの‼︎」


 女は怯えた表情を作りながら、ペッパーに向けて指を差した。

 人がザワザワと集まり、トッドの死体を見てペッパーに冷たい視線を投げかける。

 瞬時にペッパーは嵌められたことを理解した。


「……クソ野郎め」


 やがて街の自警団である武装した騎士たちがペッパーに槍を突きつける。


「おい、お前。ちょっと同行願おうか」




 ペッパーが自警団である騎士たちに連行されてから、3日が経っていた。

 魔都防衛騎士団シティフェンサーが結成される以前のこの時期は、地域ごとに地元の騎士団が街を自衛しており、統一された規則などはない。

 当然、地域ごとに騎士団の質に当たり外れが生じる。

 ……今回ペッパーを捕らえた騎士団は


 地下牢に繋がれたペッパーに騎士たちは檻越しに問いかける。


「ベンパー。そろそろ吐いたらどうだ⁉︎」


「……」


 顔を腫らしたペッパーは答えず、ギロリと冷たい目で騎士たちを睨みつけた。

 ここの騎士たちは、状況証拠といい加減な証言だけでペッパーを犯人と断じ、碌に捜査も行わずただ責め立てるばかりだった。


「ふん! スラム街の虫けらが。ウゼール様の屋敷に上がり込んで上手いこと絵を掠め取ったらしいな? まったく、太々しい野郎だよ」


 まったく何も応じないペッパーに、また別の騎士は鼻を鳴らす。


「だんまりか。けっ! ウゼール様のお弟子たちが、お前はとんでもない奴だと訴えてきたよ。お前が殺したトッド爺さんとは遺産のことで揉めていたらしいな? 浅ましい野郎だぜ」


 ピクリと肩を震わせるのみでペッパーは一向に顔色を変えない。

 騎士たちはただ貴族の証言である、ということだけでサブレ達の言葉を信じているようだ。


 面白くなさそうに騎士たちは去り際にペッパーに嘲笑うように捨て台詞を吐く。


「そうそう、お前のアトリエは昨日放火で燃やされたらしいぜ? 自業自得だな」


 騎士たちが去った後でペッパーは冷たい目で虚空を睨みつける。


「……ちくしょうめ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 敵方の嵌め方。 悔しいけど用意周到ですね。
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