第四十四話 ペッパーの過去①
邪悪なる教団グノルシアの戦闘員であるペッパーは元は爆弾魔ベンパーと呼ばれていた。
テロにより10,000名を超える死者と重症者を出したといわれる爆弾魔ベンパー。
爆弾魔となる前の彼についてはほとんど語られることはない。
……地下牢の冷たい床に気絶するように眠りながらペッパーは少年時代の夢を見る
貧民街の路地を駆け抜ける小さな影に続いて複数の大人たちが怒りの表情でその後を追いかける。
「待てぇ! クソガキィィィィ! 金とメシを返しやがれ!」
「ぶっ殺すぞ! クソガキィィ!」
ひょいひょい、と路地裏の障害物をかわし駆け抜けながら少年期のペッパーは後ろを振り返り、舌を出す。
「ヒャハハハハハハ! のろまなクソども! 欲しけりゃ追いついてみやがれ!」
「クソガキィィィィ!」
貧民街に生まれたペッパーは母親からの愛情を受けられず、ネグレクト気味に育った。
ペッパーの母親の生活態度は褒められたものではなく、本当の父親の顔は見たこともなかった。
数年ごとに入れ替わりたち変わる母親の男や義父はペッパーに冷たい態度をとり、時には些細なことで殴ってくることもあった。
スラム街の中でも最悪の環境にうんざりした彼は、13の頃当時の義父を半殺しにして家を飛び出した。
浮浪少年となったペッパーは、今日も生活の糧のために貧民街の食堂から売り上げと食料を盗み、逃走しているところであった。
ますます激昂する追っ手を振り返ると、ペッパーは懐から取り出した火薬を取り出し、火を付け投げつける。
「うわぁ⁈」
「あちぃ‼︎ こいつ!火薬を!」
火薬が勢いよく爆発し、追っ手たちは地面に転がり悲鳴をあげた。
ペッパーはゴミ箱から漁った材料から爆薬を作ることが得意だった。
それはどこかで拾った本から学んだ知識であった。
火傷で顔や手を押さえながら慌てふためく追っ手たちを嘲笑いながら、ペッパーは舌を出し、後方を振り返り悠々と逃げ果せる。
「ヒャハハハハハハ! あばよ! バカども!」
モグモグと盗んできた食料を食べながら、ペッパーは今日の戦利品を確認する。
「まったく! バカどもからモノを盗んでやるのは楽しいぜぇ!」
そうして腹がいっぱいになると、ペッパーは貧民街の路地裏をウロウロと歩き回る。
そして、何やら揉めているらしい男たちを発見する。
「ん? なんだあの偉そうなおっさんたちは?」
何やら貧民街に居るにしては身なりの良い男たちである。
そういえばごく最近、画家らしき男がこの辺に越してきたと聞いたことがあった。
興味を抱いたペッパーは男たちの視界に入らぬよう、物陰から揉めている様子を見つめる。
若い2、3名の男たちが、中年の男に何やら抗議をしているようだ。
「先生‼︎ こんなところ危ないですよ! もう自宅に戻りましょうよ!」
先生と呼ばれた男は、迷惑そうに若い男たちの肩を押し返し、自分の家の扉から外へと押し返そうとしているらしかった。
「うるさい。いちいち押しかけてくるな。私のことなど放っておけ」
「先生….…」
結局、若い男たちは「先生」の家から追い出され、呆れと怒りの入り混じった表情で帰途に着いたようだ。
ペッパーは窓の外から男の自宅を見つめ、にんまりと笑う。
窓から額縁に飾られている絵画が確認できた。
ペッパーは考える。
絵画の事はよくわからないが、これは盗んでうまく捌けば金になるのではないか?
ペッパーはニヤリと笑みを浮かべ己の紫色の髪を撫で上げた。
「ヒャハハハハハハ‼︎ 面白そうな奴がいるなあ!」




