第四十三話 取調べ室
その日の夜遅く、鎖で手足を拘束された爆弾魔ペッパーはさらに椅子に繋がれ、取調べ室で尋問を受けていた。
強面の男が先の戦いで傷を負ったペッパーを睨みつけ、太い声で威嚇する。
「おい、そろそろ何かしゃべったらどうなんだ⁉︎ ……クソ野郎!」
火傷に加えて、カリンにより顔に斜めの刃傷が入ったペッパーの容貌はさらに酷くなっており、ある意味では凄みを増していた。
ペッパーは太々しくも相変わらずの狂笑を上げ、尋問官を嘲笑う。
「……ヒャハハハハハハハ‼︎ 焦ってんのかあ? クソ騎士ども! オイラぁ、なんもしらねぇぜぇ‼︎ ……グベェ⁉︎」
尋問官の1人は拳でペッパーの頬を打ちつける。
机にうつ伏せるペッパーを怒りに燃える瞳で睨むと、ドン、と机を叩きつけた。
「調子に乗るなよ、ペッパー。いや、ベンパーと呼ぶべきか? ここに居る者は皆お前を殺したがっているんだ。忘れるな」
鼻から血を流しながらも、ペッパーは口角を上げその太々しい態度を崩さない。
「ヒャハハハハハハハハ‼︎ やれよ‼︎ どうせオイラ死刑囚なんだろ? やりたきゃやれ! クソ騎士ども‼︎」
「こいつ‼︎」
短気な尋問官はペッパーの襟を掴みさらに痛めつけようとするが、もう1人の男に制止される。
「待て、落ち着け。拷問は無しだろう。殺してしまうのもダメだ」
ペッパーはぺっと血反吐を床に吐き出しながら、そんな彼らをさらに嘲笑う。
「ヒャハハハ! 待てが出来てえらいなあ! クソ犬ども‼︎ そうそう、アグレアイオスの親父が死んだらしいなぁ! 俺も見たかったぜぇ! ヒャハハハハハハ‼︎」
冷静な方の尋問官もその言葉に眉根を寄せると、部屋の端で尋問の様子を記録していた男を振り返り声をかける。
「おい、記録を止めろ」
記録係はほとんど逡巡することなく、尋問官の言葉の通り記録を止める。
ガストリスの誇る大作家であり、騎士団の尊崇を集めるアグレアイオスの父親をテロリストたちのために喪ったことで、誰もが気が立っていた。
尋問官はペッパーの肩を抱え上げると、その腹へと膝蹴りを食らわせる。
「グハッ‼︎」
そして、椅子ごと床に倒れたペッパーを睨みながら足蹴にする。
「おい、クソ野郎。何がおかしいんだ? 俺たちがいつまでも紳士だと思うなよ? 不慮の事故で殺してやろうか?」
さらに痛めつけられながらも、ペッパーは一向に態度を改めようとしない。
「……ヒャハハハハハハ‼︎ いいねえ! 面白え! やってみろよ‼︎」
その態度はますます怒りをかき立て、尋問官はペッパーの腹を蹴り上げる。
「グハァッ‼︎」
「痩せ我慢するな。スカンク野郎。これは拷問ではない。当然の報いだ」
そして、椅子に繋がれて拘束されたままのペッパーに次々と蹴りを繰り出す。
「……ガッ! ぐあっ! ガハッ‼︎」
暗い拷問室に打撃音とそれに対するペッパーの反応のみが響く。
蹴りの十数発がペッパーに叩き込まれた頃、一方の尋問官が漸く怒れる男を制止する。
「そろそろその辺にしとかないか? 気持ちはわかるがこのままでは殺してしまう」
同僚の言葉にふう、とため息を吐きながら尋問官はペッパーへの攻撃を止める。
「ふん、仕方ない。おい、明日も来てやるぞ、クソ野郎」
そうして、尋問官の騎士たちはペッパーを取調べ室から出すと地下牢へと放り込む。
重い鉄の扉がガチャリと閉じられ、血の匂いが床に燻った。
痛めつけられたペッパーはしばらくうめいていると、クククと笑い始める。
「……ヒャハハハハハハ! 楽しみだぜぇ……! ヒャハハハハハ!」
地下牢には闇が広がり、ペッパーの狂った笑い声がうち響いた。




