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第三十一話 描かれた幻想の奇跡たち②

 濛々と立ち込める砂埃が晴れると駐車場周辺の建物は半壊し、地面は更地になっている。


 たった3人でクロフツと戦うラッセル、マサヒデ、ゾーラはその猛攻をかわしながらも、体力と魔力のほとんどを消耗し尽くしていた。


 肩で息をしながら、マサヒデはゆっくりと迫りくる銀色の騎士を睨みつける。


「……クソッ! あいつ、いつになったら体力が尽きるんじゃい! こちとらもう90をまわりかけとるんじゃぞ……!」


 ラッセルは頬から血を流しながら2人の前へと出る。


「もうお下がりください! マサヒデさま! もはや限界は近いかと!」


「えーーい! みくびるな小童! お前こそ肩で息をしておるでないか!」


「お前たち! 落ち着いて連携せい! 何を張り合っとるんじゃ!」


 3人が庇い合いながら、なんとかクロフツを向かい打とうとするがもはや力の差は歴然であった。

 聖女ネスはフェンスの一つに跨りながら余裕の笑みで嘲笑う。


「ふふふ。そろそろお疲れのようね。クロフツ、じわじわと絶望を与えてあげなさい?」


 その声と共にクロフツが突進してくる。

 ラッセルは翼を広げ魔力を集中させると攻撃魔法を放つ。


「……このっ! バケモノめ‼︎ 鷹翼嵐弦砲ホークストリーム!」


 淡い緑色の嵐の魔力がクロフツを巻き込むようにコンクリートや瓦礫を破壊し、砂埃が巻き上がった。

 ラッセルは息を乱しながらクロフツがいた辺りを見つめる。


「どうだ……⁈ 手応えはあったが…… グワッ‼︎」


 その時、砂埃から突進するように現れた銀色の騎士の剣閃がラッセルの肩口を深く切り裂いた。

 ラッセルは後方へ飛び退くように転がる。


「鷹の小僧ッ‼︎」


 右肩から激しく血を流しながら、ラッセルは立ち上がろうとする。


「お、お逃げくださいマサヒデ殿、ゾーラ殿…… 貴方方にこれ以上何かあれば貴国に申し訳がたちません……」


「バカ言うな! 若造が背負いこむでないわ!」


 マサヒデはラッセルの前に立ち、迫りくる銀色の騎士に対してボロボロになった剣を構える。


「マサヒデさま……」


 ゾーラも空を飛び、杖を構えラッセルの前へと立つ。


「まったく、お主も主君に似ておるのお」


「ゾーラさま……」


 聖女ネスはそんな様子を嘲笑いながら手を叩いた。


「ふふふ♪ さあ、やっちゃいなさい、クロフツ♪ 思い切り痛くね♫」


 一気に間合いを詰めてきたクロフツの斬撃がマサヒデの刃とかち合う。

 もはや受け止めるだけで精一杯である。

 マサヒデと切り結ぶクロフツに向けてゾーラが風の魔力を飛ばし、ラッセルが爪の斬撃を繰り出すが攻撃は余裕を持ってかわされる。


「グッ! ……ぐぐぐぐ‼︎ 踏ん張れ小僧! もっとサポートせい! ババア‼︎」


 ラッセルは力を振り絞りながら空を飛ぶ。


「3方向から挟み込むのです! マサヒデ様! ゾーラ様!」


 ラッセルの掛け声と共に3人はクロフツを三方向から囲むように位置どった。


「よしきた‼︎」


「くらえっ!」


 3人が一斉に別方向からクロフツへと攻撃するが、これも悉くかわされ、マサヒデの額に一筋の傷が入る。


「グッ‼︎」


「くそっ! なんて動きだい……!」


 人智を超えた素早さに加えてクロフツの甲冑は異常に硬い。

 攻撃をかわされると同時に蹴りを受けてラッセルは吹き飛び、地へと伏す。


「おい! しっかりしろ! ラッセル殿‼︎」


「……はい 私のことはお構いなく」


 ラッセルは懸命に立ち上がろうとするが、肋骨が折れてしまったようだ。

 ゾーラは歯噛みしながらラッセルの傷を見る。


「くっ! 深手じゃないか……」


 ネスはクスクスと笑いながらフェンスで足をぶらつかせる。


「なあに? もうおしまいかしら? まだクロフツは力の半分も出してないわよ? あーあ。そろそろ飽きたわね。やっちゃいなさい♡クロフツ」


 そろそろクロフツの最後の攻撃がくる……

 まるで猫がネズミを痛ぶるようなこの戦いは元々勝ち目は無かったのだ。

 銀色の甲冑から覗く冷たい視線を睨みながら、改めてマサヒデはそう感じる。


「……クソッ‼︎ くるぞババア! 小僧!」


 ラッセルは口から血を流しながら立ち上がる。

 己の命を捨ててでも2人を逃がそうと考えているのだ。


「マサヒデさま……! ゾーラさま……! お、お下がりください」


「バカ言うな! お前の傷は深いではないか‼︎ お前こそさがっとれい!」


 ネスはますます嬉しそうに笑う。


「あらあら、争わなくてもまとめて殺してあげるわよ♡ さあ、さっさとやりなさい! クロフツ!」


 クロフツが地を駆け、マサヒデたちへと迫る。

 彼らの目には銀色の騎士はもはや死神にしか見えなかった。


「くっ‼︎ ここまでか……」



 その瞬間、轟音と共に銀色の騎士が横へと薙ぐように吹き飛ぶ。

 砂埃が舞い、クロフツはビルの瓦礫へと埋もれた。

 驚いてネスが見つめた先には1人の男が立っていた。


「なにっ⁉︎ 何なのあれは⁈」


 青髪に青いボディースーツを纏い、赤いマントを靡かせた筋骨隆々とした男が笑みを浮かべながらそこに居た。

 男はマサヒデたちを振り返り微笑む。


「大丈夫ですか? ブラディエルのご友人方よ」


 驚愕しながらマサヒデは血を拭いながら答える。


「……な、なんじゃあ⁈ お前は?」


「こ、この方は……?」


 男の名はブルーマキシマム。

 デルタ27星雲からやってきた最強のヒーローであった。

 堂々とした笑みを浮かべながら、ブルーマキシマムはクロフツのめり込んだ辺りを見つめる。


「私が来たからにはもう大丈夫です。あの悪は排除しましょう」


 ネスは癇癪を起こしながらフェンスから飛び降りた。


「あなた、何者なのよ! もうっ! せっかくいいところだったのに‼︎ そいつはさっさと殺しちゃいなさい‼︎ クロフツ‼︎」


 瓦礫から閃光のように飛び出したクロフツの斬撃を素手で受け止めながらブルーマキシマムは笑う。

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[一言] 最強のヒーロー登場。
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