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第三十話 描かれた幻想の奇跡たち

 黄金のオーラの渦から男たちの声が聞こえてくる。


「我が友、ブラディエルよ。貴方の最期の願いはしかと聞き届けた」


「この場は安心して我々に任せるといい」


 ブラディエルは穏やかな笑みを浮かべたまま頷き応える。


「……ああ、頼んだぞ 我が友たちよ」


 シェルドンを介抱するカリンを見舞いながらマリアは徐々に晴れゆくオーラの嵐を見つめ呟いた。


「……うそ まるで夢みたい……」


「マリア殿下…… 私、怒ってますからね」


 そう言って睨みつけてくるカリンにマリアは苦笑いする。


「わかってるわ、カリン。お話は後でしましょう。それよりあれは……何なの? ブラディエル様の描いたキャラクターじゃない……」


 マリアは驚きを禁じ得ない。

 黄金の光から現れたのは、まさにブラディエルの描いた漫画のキャラクター達であった。


 そしていつの間にか歩み寄ってきていた男がいた。


「失礼。そちらのワニの紳士の容体を見せて頂けるかな?」


「あ、貴方は……」


 白衣に身を包んだ中年の男は凄腕の医療ヒーロー、ドクターガイアであった。

 ガイアはシェルドンの喉元に手をやり、温かな光を発する魔力の手で魔導治療を始める。


「……よし、応急処置は終わりだ」


 僅か10秒ほどの治療でシェルドンに呼吸が戻った。


「シェルドンさんの顔色に生気が……」


 気を失ったままだが、危険域を脱したシェルドンにカリンは胸を撫で下ろす。

 治療を終えたドクターガイアは、テロリストたちと対峙しようとする仲間たちを振り返った。


「あとは私の仲間が悪魔どもを倒せばそちらのワニの方も元通りになるだろう」



 ペッパーは光の中から現れた男たちに驚愕する。

 どれもこれもが凄まじいまでの力を持つことが魔力の波動で感じられる。


「何だ⁈ なんなんだ、てめえら⁈ どこから湧きやがった⁈ おい! 悪魔ども! 早くその鎖を引きちぎりやがれ‼︎ 」


「ギ、ギギギ‼︎ ガァァァァァァァァァァァァァ‼︎」


 欲しがりの悪魔は、ペッパーの掛け声と共に身を震わせて縛っていた鎖を引きちぎった。

 ……しかし、次の瞬間欲しがりの悪魔の身体はまるで潰れたトマトのように弾け飛んだ


「ブェェェェェェェェェ‼︎」


「欲しがりの悪魔ァァァァァ‼︎ クソッ‼︎ 誰だテメェ‼︎」


 ペッパーは両手に纏う尋常ならざる魔力をみて、男の1人を悪魔を潰した術者とみなした。

 何気ない様子でその旅衣装風の無精髭の男は応える。


「ん? 俺か? 俺はドム・ブリークス。あれ、触っちゃいけねえモンスターなんだろ? ヤツの周りの空間をねじ曲げてやった。復活出来なくなるまで殺してやるぜ」


「なんだぁ⁉︎ そりゃあ⁉︎」


 超一級冒険者ドム・ブリークス。

 あらゆる地平を踏破した伝説の冒険者である。

 彼の術式は空間を捻じ曲げる。


 また出現したヒーローの1人、赤と金の鎧で身を纏った男がドムの肩を叩く。


「さっさとバケモノを殺しきれよ、ドム。この不健康そうなガキは俺が相手する」


「わかった、わかった。……はあ、めんどくせえぜ」


 そう言って両掌に再び魔力を込め始めるドムに呆れたように鎧の男は肩をすくめる。


「手でグシャッとしてるだけだろうが、お前」


「あ、言ったな! 魔力を結構消耗してんだぞコレ」


 そう言ってドムは再生しかける蛇の悪魔を再びグシャリと潰した。


 もう欲しがりの悪魔は駄目とみて、ペッパーは雑魚悪魔どもに指示を出す。

 どうやらこちらも漸く鎖から逃れたようだ。


「ああああ‼︎ クソッ‼︎ 雑魚悪魔ども‼︎ 動けねえ奴らか女をねらえ!」


「そうはいかんよ」


 雑魚悪魔たちが動き出そうとしたその時だった。

 男の低い声と共に雑魚悪魔たちは赤黒い血飛沫を散らしバラバラになる。


「ブッギャァァァァァァ‼︎」


「てめえもなんだぁ⁉︎」


 雑魚悪魔たちは斬られた先から発火し、焦げ炭になっていった。

 燕脂色の着流しを着た赤髪の男が剣を掲げペッパーに向けて突きつける。


「炎剣のアルフレド。私の剣が貴様の魔物を殺し尽くす。再生した先から何度でもな」


 魔法剣士アルフレドの剣撃は投げた100枚のコインを地に落ちる前に全て真っ二つにするほど凄まじく、その炎の魔力は鋼鉄さえ溶かす。


 ペッパーは歯軋りしながら身を捩らせると魔力を込め、魔獣を現出させようとする。


「クソッタレどもがぁぁぁぁぁ‼︎ 出てこい‼︎ 浮遊する爆弾魚ドルボム‼︎」


 空を浮遊する大きな魚が虚空から現れた。

 しかし、その瞬間に弾け飛ぶように壁へと叩きつけられる。


「ブギャン‼︎」


 ペッパーは地団駄を踏みながら激昂した。


「クッソ‼︎ 次から次へと何なんだぁ‼︎」


 見ると3メートルもあろうかという大男がドルボムの首根っこを掴み、殴りつけている。


 己の実験により筋肉が異常に発達したヒーロー、超人バルムであった。


 ブラディエルは落ち着いた声でペッパーを見つめながら諭すように話す。


王手チェックメイトだよ、ベンパーくん。私の生み出した英雄たちをこの世に一時的に顕現した。作品内のパワーそのままにな」


「なんっ! だぁーー‼︎ そのデタラメな術式はぁぁ⁉︎」


 ペッパーは悔しさのあまり、天井を見上げるように吠える。

 そんなペッパーに、赤と金の鎧のヒーロー、アイアンプレジデントが腕を鳴らし睨め据えているようだ。


「さあやろうか、クソガキ。私が相手だ」



 柔らかな黄金のオーラに包まれたままアグレアイオスは父を見上げる。


「父上……」


 息子を振り返り、ブラディエルは乱れる呼吸を整えるように浅く息を吐いた。


「レオ、そこで見ていろ。お前は責任を負いすぎる子だ。その背に常に誰かを庇ってきた。たまには誰かの背に庇われることも覚えろ……」


 そして、まだ残ったヒーローたちに向けて号令を掛けた。


「諸君! ご助力感謝する! 厄介な敵勢力はまだもう一つ、大事な客人の生命を狙っている。排除を願いたい」



「承知した」


 ヒーローたちはそれぞれ反応し、病院の窓から飛び出していく。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒーローたちが飛び出していく。 かっこいいです。
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